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結婚式前日①
しおりを挟む前日になり、大聖堂の奥の部屋にナターシャが着るウエディングドレスが運ばれた。
仮縫いをし終え再度確認をし運ばれ、大聖堂で準備に追われる侍女達。
そのウエディングドレスに目を奪われていた。
「綺麗ねぇ。」
「いつか私もこんなドレス着て結婚式挙げたいわ。」
「夢よねぇ。」
警護の衛兵達も大聖堂の警備に余念がない。
交代で任にあたり、何事も無いよう注意深く、とウィンストン公爵が直に衛兵達を指示した。
軍の最高責任者はリュカだが、そのリュカが結婚式の主役な為の代行になっている。
セシルもカイルも朝から忙しくしていた。
花嫁の身内として、ではなく、皇太子の臣下として。
「ドレスは運ばれたのね?」
「はい、ナターシャ様。」
「さぁナターシャ様、明日の結婚式の為に、お身体を磨かせて下さいませ。」
「………え?もう?まだ朝よ?」
身体を磨くというのはいわばエステだ。
全裸になり、妃用バスルームに入り身を清める。
オイルで全身マッサージをされ、髪も念入りにトリートメントをされるのだ。
リュカとの初めての一夜にもナターシャはされたが、すごく恥ずかしいもので、ナターシャは苦手なのだ。
「はい、前日ですから隅々と。」
「本日は殿下と閨はおやめ下さいね。体型が変わる訳ではありませんが、うっ血痕が残るのだけはナターシャ様のきめ細やかな肌を傷付けてしまいます!」
「キスマーク、て傷、なの?」
「内出血の様なものです。結婚後であればいくらでもどうぞ!」
「何なら今から付けて、綺麗に仕上げてやってくれてもいいが?」
「!!」
侍女達の色めき立つ会話を遮るように、低く色気たっぷりの声色で、リビングのドアに居るリュカ。
「殿下!」
「忘れ物を取りに来たら、キスマークの事を楽しそうに……明日の夜からたっぷりと付けるから、ナターシャを美しく仕上げておいてくれよ。」
「勿論です。」
「ナターシャ、キスマークは傷じゃない、愛の証だよ、ナターシャが誰でもない、俺だけが付けていい権利の象徴だから、明日の夜はドレスから見える所も見えない所もたっぷり付けてあげる。」
「キャー!」
リュカは囁く訳でもなく、侍女達に聞こえるように言った。
『俺はナターシャの物、ナターシャは俺の物』と宣言している。
未婚女性の侍女達は、ナターシャとリュカのラブラブ振りを見て、リアル恋愛小説を読んでいるような気を起こしていた。
「あ、あなた達………殿下の前ですよ?」
ナターシャも照れてはいたが、女主人として、〆ておかなければならない。
「構わんさ、侍女達がしっかり仕事してれば。ナターシャ、行ってくるよ。」
「行ってらっしゃいませ。」
軽く唇が触れるキスを侍女達の前で交わし、リュカは去って行く。
侍女達の前でイチャイチャするのも慣れてしまったナターシャ。
以前は人前では決して許さかなったのだが、婚約式以降努力して慣れてきたのだ。
目の前で繰り広げられるイチャイチャは、侍女達の恰好の餌だった。
顔を赤らめ、見て見ぬ振りもしてくれているから、良しとするナターシャ。
(侍女の前でのスキンシップも程々にしないと、仕事しにくいでしょうね、彼女達も……。
)
そして、エステの客状態と化しているナターシャに大事件が起きるのだった。
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