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結婚式迄あと1ヶ月
しおりを挟む結婚式迄1ヶ月になり、リハーサルなる物をさせられているナターシャとリュカ。
王宮内には教会はあるが、小さい教会な為、来賓が入れるように、王都の中央にある大聖堂で行なわれるのだ。
その為、王宮の教会とは規模が違うが、動きを覚えなければならなかった。
「緊張しますわ。」
「俺も……。」
「皇太子殿下、ナターシャ妃、大聖堂には当日朝に入りご準備をして頂きますが、結婚式後は王都をパレードで周り、王宮の大門の展望台で国民の賛辞をお受けして頂きますので。」
「1日掛かりだな。」
「おめでたい事ですからね。」
リハーサルが終わり、執務室に戻ろうと厩舎の近くを2人で歩いていると、馬の駆ける音が近付く。
「リュカ!ナターシャ!………どうどう。」
「ラメイラ様、馬に乗れるのですか?」
「うん、乗れるよ?ナターシャは乗れないの?」
騎乗したラメイラはとても凛々しい姿。
「以前、殿下の愛馬のフェデラーには乗った事はありますけど、最近は結婚式の準備で忙しく。」
「そうだよなぁ、リュカ……今からナターシャを馬に乗せていいか?」
「やめろ、ラメイラ。ナターシャが落ちたらどうする。ナターシャは元々、馬が苦手でやっと少し慣れた所なんだ。」
「じゃあ、リュカが教えればいいじゃん。」
リュカはまだ仕事が溜まっている。
「結婚式前に大怪我したらどうするんだ、来賓もこちらに向かってるんだぞ?」
「過保護だな、リュカ。」
「結婚式前で危ない事はさせられないだけだ。」
「走らせたりはしないぞ?」
「お前の事だから、やりかねん。コリンに乗馬を教えた頃、やっと指示を出せ動かせるようになったコリンに走り方や障害物回避の仕方を教えてコリンが落馬したのを忘れたか?」
「…………あ、そんな事あったっけ?」
「だから駄目だ。」
「あの頃より、私は大人になったぞ?」
「でも駄目だ。」
このやり取りが聞いていて面白く、くすくすと笑いが出るナターシャ。
「リュカ殿下はラメイラ様にだけ扱いが違いますのね。」
「は?」
「だって、レングストンの令嬢方には冷たいではないですか。」
「ナターシャ………俺は君に対しても扱い方が違うよね?」
リュカがナターシャを抱く腕に力を入れる。
2人で歩く時は、リュカがナターシャの腰に手を回すように歩くので、ナターシャも慣れてしまったのだが、力を入れると更に密着する。
「!!」
「俺がナターシャにしかこういう事をしない、て知ってるよね?」
「リュカ、進歩したなぁ………。」
「ナターシャだけ、な。」
そう言ったリュカは、ナターシャの額にキスをする。
それがナターシャもまんざら嫌そうにしていない、イチャイチャぶりだった。
「まぁ、いいや、結婚式終わる迄待ってるよ。」
ラメイラは呆れ気味にそういうと踵を返し、走り出して行ってしまった。
「本当かなぁ、ラメイラ……。トーマスじゃなく、タイタスが好きなんて。」
「本当ですよ、タイタス殿下を呼ぶ声が1トーン上がりますし。」
「上がるからそうだって?くすくす。」
「信じてませんね……。」
「あれだけ散々トーマスに抱き着くのに?会う度にだよ?」
「トーマス殿下に抱き着けば、タイタス殿下が引き剥がそうとするじゃないですか、コリン殿下の髪をくしゃくしゃした時も……でもタイタス殿下には身体に触れてませんでした。」
「俺にもしないぞ?ラメイラは。」
「リュカ殿下は女性には冷たいですから。」
「そこは、『リュカ殿下にはわたくしが居ますから』じゃないんだ。」
リュカは拗ねた。
「え?」
「…………。」
ナターシャは鈍いのを知っているから、ラメイラの事は信じていないリュカ。
「トーマスの皇子妃候補の筈だよ、ラメイラは。」
「そうだとしても、タイタス殿下ですよ、ラメイラ様の好きな方は。」
「いいや、トーマス!」
「タイタス殿下です!………殿下のバカ!!」
「なっ!」
信じてくれないナターシャは、腰に当たる手を引っペ返し、リュカから離れ歩き出した。
初めての喧嘩だった。
その後の執務室に戻っても、ナターシャは一切リュカを無視したのだった。
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