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喧嘩上等
しおりを挟む衛兵にはガードされているものの、令嬢達の圧が凄い。
「通して頂けます?皇太子邸に戻りますから。」
圧に負けず、ナターシャから声を掛ける。
「皇太子邸ですって?ウィンストン公爵家ではないの?結婚式も挙げていないのに!」
「はい、皇太子妃としての権利も頂きましたから。」
「いつよ!!」
この令嬢は皇帝の話を聞いてなかったのか?
「モナ様、皇帝陛下のお話は聞かれなかったのですか?」
「!!何故私の名前を!!」
「モナ様だけではありません、カトリーヌ様、カトリーナ様ご姉妹、フィオナ様、メディナ様、コルネリ様………ですよね?交流はありませんが、わたくしに何かご用でも?」
「どうやって、皇太子殿下に気に入られたのかしら、て思って、聞きに来たの。」
爵位が上の相手に失礼な物言いに、衛兵達はナターシャを守る様に立つ。
「特に何もありませんけど?わたくし、幼少の頃から許婚でもありましたから。」
本当の事なので、素直に言うと、令嬢達は笑いだす。
「まぁ、じゃあ政略結婚なのね!皆さんまだチャンスはあるわ!!皇太子殿下を振り向かせるわよ!」
「ご機嫌になる所、お言葉を返して申し訳ありませんが、政略結婚ではありません。」
「はぁ?あなたのお父様は宰相じゃないの!権力使って、皇太子殿下に迫ったんでしょ!」
「…………迫る……て……。お言葉が過ぎますわ、コルネリ様。男爵家令嬢でありながら、品位を問われますわよ?」
「何ですって!!」
「止めないか!!」
食って掛かってきそうな令嬢達を衛兵達が遮る。
「衛兵に守ってもらっていいわよね!」
「仕方ありません、あなた方の様な方が居るのですもの、彼らは職務を全うしている立派な兵士ですわ。皇太子妃の権利を持つわたくしに手を上げようとしたのですし、わたくしもこういう事が頻繁にあると困りますので、終わりにしたいですわ。皇太子殿下が愛しているのはわたくしです。一人たりとも付け入る隙は与えませんし、わたくしも誰にも譲る気もありませんので。」
「何ですって!!」
「あなた方は、たむろしなければ言えないのですか?まだお一人で皇太子殿下にお声掛けた令嬢が先日おみえでしたが、その方の方がご立派な度胸がありますわね。皇太子殿下がわたくし以外の女に、冷たい方なのは知っておりますが、あなた方はお声も掛けられないのではないですか?だから、わたくしに苦情でも話に来られた、という事でしょうか……『別れなさい』とか言いたかったのでは?」
「!!」
「図星のようですね。この行為もお言葉も無礼ですけど、性根も無礼な方達なのですね。後程、各家にあなた方のお父上様へご報告させて頂きますので……道を開けて頂ければ、やめてもいいですよ?」
令嬢達は道を開ける。
ナターシャの毅然とした態度に何も言い返せなくなったのだ。
父親が誰かを知られている以上、帰れば注意されるどころでは済まなくなるのと、婚約式後で、沢山の貴族や侍従達も彼女達を見ていた。
ナターシャと彼女達の品位と度胸の差を見せつけていた事を目の当たりにしたのだった。
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