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婚約式

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 リュカに聞いて、新居となる皇太子邸をナターシャとリュカが見に来た。

「皇子宮とは少し離れてるのですね。でも、王城には近くなってる………。」

 王城の正門の奥に、それぞれの宮が並んでいるのだ。

「結婚したら、皇太子としての仕事もより皇帝の仕事を引き継ぐ事になるから、王城に近い場所にあるんだよ。それで、子供が生まれたら世代交代になる可能性もある。代替わりしたら、また引っ越しするけどね。さぁ、中に入ろうか。」

 リュカのエスコートでナターシャは入ると、内装はまだ剥き出しだが、補強はされ、日当たりも良く、窓から見える森の木漏れ日も見え、皇子宮のナターシャの部屋から見える王宮の庭とは違う景色。

「皇太子殿下。内装のデザインを担当しております、キャロンと申します。」
「あぁ、宜しく頼む。内装に関しては、妃の好みも受付けてくれないか。」
「畏まりました。」
「ナターシャはどうしたい?」
「…………意見を述べさせて頂けるのは嬉しいのですが、わたくしは殿下が落ち着ける色の壁が良いと思います。わたくしが意見を述べるなら、その一択ですわ。」

 そうして、リュカが好むシンプルな使い勝手の良い調度品と、落ち着ける壁紙の皇太子邸が出来た。
 ナターシャは、それがいつもリュカが傍に居るような気がして安心が出来た。
 その中でナターシャは邪魔しないインテリアを置かせてもらっている。

「うん、いいじゃないか。」
「素敵になりました。」

 婚約式はもうあと数日後。
 その間はリュカもナターシャもあまり会えず、会っても1時間も会えずに居た。
 分刻みで仕事を増やすセシルに入れて引っ張られてしまって、未だにリュカはナターシャを抱いていなかった。
 そして、翌日から婚約式迄、ナターシャはウィンストン公爵家に帰る事になっている。

「ナターシャ……今夜、この邸で寝ようか……。」
「…………殿下……も、申し訳ないのですが、わたくし……。」
「何?」
「つ、月の穢れ……で………。」
「………あ………そ、そうなんだ………流石に嫌だよな……。」
「………はい。」

 格好を付けて、口説いたのに肩透かしだった。

✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧

 婚約式当日。
 ナターシャはリュカをイメージした以前の夜会のドレスをベースとした物を来て準備をしていた。
 レングストンの婚約式は、全貴族の前で新たな婚姻を結ぶ若い男女のお披露目をする。
 お互いの両親を前に、結婚する事を皇帝と皇妃の前で宣言し、許可を貰う。
 全貴族が婚約式をする訳ではないが、王族血族の結婚は、皇帝と皇妃の前で、宣言をするのだ。
 皇太子の婚約式となれば、国を上げての結婚になるので、ほぼ全貴族が参加する。
 王座の間の王座の前で、皇帝と皇妃、ウィンストン公爵、ウィンストン公爵夫人が4人が並ぶ。
 左右には、爵位の順に上座から並ぶ。
 その間をリュカとナターシャが歩くのだ。

「準備はいい?」
「はい。」

 王座の間の扉が観音開きで開けられ、ナターシャはリュカの腕に手を添え、エスコートされながら歩くいて行く。
 皇帝達の前で跪くリュカとナターシャ。

「レングストン皇国、リュカリオン・レングストンはこの度、ナターシャ・ウィンストン公爵令嬢と婚姻の約束を致しました。」
「わたくし、ナターシャ・ウィンストンは、リュカリオン・レングストン皇太子殿下より、婚姻のお話を受取りを致しました事をここに宣言致します。」
「世、ヨハネス・レングストンは、リュカリオン・レングストンとナターシャ・ウィンストンの婚姻を許可する。リュカリオンよ、皇太子として、更なる国の発展と存続の為に務めるように。ナターシャよ、本日より皇太子妃として、リュカリオンを支えるように。」
「若輩者ですが、心して掛かります。」
「心よりお支え致します。」

 ウィンストン公爵は端により、皇帝と皇妃は王座に上がると、結婚式の日取りが発表された。

「これより8ヶ月後、リュカリオン皇太子とナターシャの結婚式を行う物とする。穢れ無きよう頼むぞ。」

 大歓声が起こり、賛辞が飛び交う。
 リュカの結婚が決まり、ナターシャへの嫉妬の視線を浴びるものの、皇帝が認めた以上、覆せない。
 そうすると、必然的に狙われるのはトーマスやタイタス、コリンの3人の皇子達。
 
「トーマス殿下、皇太子殿下のご婚約おめでとうございます。」
「タイタス殿下、お寂しくないですか?」

 そんな猫なで声が聞こえてくる。

「もう、婚約式終わったし、皇太子邸に戻ろうか。」
「皇太子殿下、お仕事が溜まっておりますよ?」
「今日ぐらいはどうにか………。」
「なりません。」

 ウィンストン公爵に呼び止められ、リュカは連れ去られてしまった。
 婚約式後に行われる夜会迄、リュカか開放されないだろう。
 そんなリュカを気の毒に思うナターシャは見送るしかなかった。

「ナターシャ。」
「お母様。」
「良い挨拶でしたよ。」
「ありがとうございます、お母様。」

 エマはナターシャの頬に手を当てると、涙ぐむ。

「もう、なかなか会えなくなるわね………幸せになるのよ?」
「…………お母様………。」
「あらあら、皇太子妃になる人が簡単に泣いてはいけません。」
「頑張りますわ。」

 母と別れ、衛兵の付き添いで、皇太子邸に戻ろうと歩いていると、数多くの令嬢に囲まれた。
 
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