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義兄からの嫌味

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 不貞腐れたリュカが、セシルの居る廊下に出て来た。

「おや、上着が先程と違いますが、脱ぎ捨ててシワになりましたか?」
「…………邪魔しやがって……いいところだったのに……はぁ……。」

 髪を掻き上げ、前髪を後ろに流し、乱れ髪を直すリュカ。

「で?ヤれました?」
「……………シてねぇよ。」
「…………あぁ、まだ勃ってるから上着で隠してるんですね。」
「お前………俺の事分かりすぎて嫌いだ。」
「なら部下を変えますか?」
「出来る訳ないだろ、お前程俺の役に立つ部下は居ないんだから。」
「…………ありがとうございます。」

 付き合いが長い分、隠し事をしない2人。
 いつか、リュカがセシルを負かす事が来るのだろうか……。

✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧

「え?ナターシャの部屋替えですか?」
「いつまでも皇子宮はな……なので、王宮の敷地内に2階建ての邸をと、今完成を忙している。元々、私が皇太子時代、皇妃と過ごした邸だ。ナターシャ嬢も内装等の好みもあろう、外観や基礎はもう済んでおる、時間がある時に2人で見に行きなさい。」
「いつの間に……。」

 王城以外に、皇子宮、皇女宮、既婚王族用にいくつか建物はあるのだが、リュカには姉妹は居らず、皇女宮は使っていない。
 皇帝には弟と妹が居るが、公爵の爵位もあり、王宮の外に邸を構えていたし、妹は他国に嫁ぎ、既婚王族用の邸も使用していない。
 トーマス、タイタス、コリンが結婚すれば、既婚王族用の邸に住むか、王宮の外に出るかにはなる予定なのだ。
 レングストンの歴代の皇帝の中には、愛人も居たようで、子供も多かった時代もあった名残で、皇子宮と皇女宮等があるのだ。
 皇帝には愛人も居らず、皇妃との息子4人のみ。
 愛人が子供を産んだとしても、皇妃に子供が居れば、王位継承権は与えられない法律になっていた。
 
「ナターシャ嬢が、皇子宮に入って直ぐだ。」
「………知らなかった……。」
「婚約式が終わったら、ナターシャ嬢先に入ってもらえ。」
「………は??」

 聞きづてならない言葉を聞くリュカ。

「ナターシャとは?私も入っていいのでは?」
「婚約発表したからと言って、結婚式前に子供が出来たら体裁が悪かろう?」
「確かにそうですが、別に避妊具着ければ………!!」

 皇帝がリュカを睨む。
 後ろに控えるウィンストン公爵は顔がひきつっていた。

「よく、お前義理の父になる宰相の前で……。」
「仕方ないじゃありませんか、ナターシャが可愛すぎるんです。避妊具使う使わないは別にして、子供が出来るかどうか分からないですし。」

 もう、リュカは開き直る。
 先程、ヤれなかった事に対しての欲求不満がダダ漏れなのだ。
 呼び出しが無ければ、今頃幸せな時間を過ごしていただろう。

「陛下、皇太子殿下にお話して宜しいですか?」
「構わん。」
「ありがとうございます。……殿下、貴方様が、幼い歳の頃の女性不信になられた事を思えば、素晴らしい事かと思います。」
「それもこれもナターシャのおかげだ。」
「はい、そう私も拝察しております………が、義理父として申し上げるのなら、娘の意思を無視するような事にならないよう、お願い致します。」

 『嫌がったらヤるんじゃねぇぞ』と言葉を変えたらそういう意味。
 だが、リュカの手応えでは時間さえあればヤれる、と思っている。

「大丈夫だ、私は嫌がるような事はしない。約束しよう。………父上、婚約式後ナターシャの居る部屋に通うのは許して頂けますよね?」
(そして、毎日通って居座ってやる!)

 何を考えているのか、皇帝もウィンストン公爵も分かっている。

「……………分かっておらぬではないか………。」

 皇帝は深い溜息を漏らした。
 そして、そのリュカの魂胆を、皇帝と公爵で阻止しようと、仕事の量を増やされたのであった。
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