私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

閨のお勉強

　翌日、ナターシャは図書館に来ていた。
　以前、トーマスから聞いていた閨の指南書を探していた。

「何処にあるのかしら………。」
「何か探してるのかい？ナターシャ。」

　本棚の陰から声が掛かり、その声がトーマスだと気が付いたナターシャ。

「トーマス殿下。」

　トーマスに一礼する。

「何か探してるのかい？」
「はい………言いにくい事なのですが……。」
「？」

　じどろもどろ、と言いにくそうなナターシャ。

「あ、あの……以前トーマス殿下が仰った本を探しに………。」
「…………あぁ………兄上の為に？」
「……………はい。」
「なら、こっちの棚にあるよ。ナターシャの居る本棚の裏、俺が居る方。」

　以前も、そこに居たのではなかったか？と思ったが、それは突っ込まないでおこう、とナターシャは思った。

(コリン殿下と図書館に居た時もそこにいらっしゃったような……。)

　回って行くと、その一角全て、閨についての本。

「どんな物がいい？………兄上はノーマル的なタイプだからなぁ……道具は使わないと思うし………ナターシャは初めてだろうから、小説で覚えてもらおうかな、と思って軽めな物を以前用意したけど、無理そうだったし………。」
「……………ト、トーマス殿下………ど、道具なんて、使うのですか？閨で……。」
「あぁ……俺は使いたい方かな……で？何を見たい？」

　サラッと、トーマスの性癖を暴露され、ナターシャは何故か怯える。
　どう説明すればいいか分からないので、困ってはいるのだが。

「え………と、リュカ殿下が閨で必要になるモノを………治めるのが大変……だと、仰ったので………。」
「…………閨で必要……治める………あぁ！！兄上が忙しいから、夜を一緒に過ごせてないのか……なら、簡単な物があるよ。」
「本当ですか？」

　トーマスはナターシャの嬉しそうな顔を見て思いつく。

(初心なナターシャには勉強になるし、アレにするか………兄上もびっくりするだろうし、仕返ししたい………ふふふ……。)
「コレかな。」

　トーマスがページを捲ると、絵が書いてあり、男の足の間に、女が顔を埋めている物。
　そして、説明書きと、絵も詳しく書いてある………。

「きゃ！」
「刺激強かった？でも、男のモノを治めるのは閨で子作りだけど、時間を気にするなら、コレが手っ取り早いし、好きな女性がしてくれると、男は嬉しいよ？………兄上が咥えて欲しいかどうかは分からないけど、困ってるならいいんじゃない？あと、この本、いろんな体位も書いてあるから、見ておくといいよ。急な体勢になって、驚かないように……。」

　ナターシャはページを凝視しながら、トーマスに聞いた。

「リュカ殿下も………この本ご存知なのですか？」
「ん？勿論。兄上が見ていたのを見て声を掛けたら慌てて見るのを止めたけど…………。」
(あれ？…………何か忘れてるような……。)

　トーマスは忘れている。
　リュカが幼少期、性的被害にあった事を……。
　だが、この行為が性的被害に繋がるとは思っていないトーマス。
　リュカが閨の意味の知らなかった時期に、周りには、リュカの子種欲しさに、咥えて貪ろうとした女達ばかりだった事を……。

「分かりました、一通り見てみます。トーマス殿下、ありがとうございました。」
「あ、あぁ、上手くいくといいね。」

　そして、後日トーマスはリュカに怒られるのである。