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お色直し

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「汚れたドレスのお着替えをお持ちしましたわ。」
「え?」

 セリナとライアも側に控えていた。

「先程の騒ぎで、リュカ殿下から呼ばれ会場の隣の部屋に代わりのドレスをお持ちしたんです。」
「着替えておいで、ナターシャ。」
「ワイン掛けられちゃ、もう落ちないたろうな、コレ。」
「そうですね、着替えて参ります。」

 セリナとライアに案内され、隣の部屋に入ったナターシャ。
 揃えられたドレスは4着。
 オフホワイトのシャープなラインでゴールドの刺繍が美しいドレス。
 シックデザインだが、肩に大きなリボンが着いた赤いドレス。
 深緑の花柄の鮮やかなシフォンのドレス。
 リボンが可愛く散りばめてある黄色いドレス。
 それぞれ特徴はバラバラで統一感が無いのは、急遽用意したからなのか。
 ナターシャは迷っていると、とある共通点を見つけた。

「これ、殿下方のイメージ………。」
「よくお分かりで。」
「殿下方はナターシャ様に着てほしいドレスをそれぞれ作らせました。ナターシャ様が選ばれた殿下とのご婚約発表に着てもらおう、と準備なさっておいでだったのです。」
「これをリュカ殿下が?」
「はい。リュカ殿下はナターシャ様をよく見ておいでですから、ご令嬢がナターシャ様に近づこうとした時に直ぐにご用意を。」

 ナターシャは手で顔を覆う。

「リュカ殿下………。」
「ナターシャ様?」
「い、いえ、このドレスに着替えるわ。髪型もこのドレスに合った髪型にしてもらえる?」
「お任せ下さい!」

 ナターシャは着替えて、会場に戻る。
 両親か兄を探し、歩き出すと、視線はナターシャに集まってしまった。

(………へ、変じゃない筈……。だって素敵なドレスだもの。似合ってないのかしら………でも、セリナもライアも褒めてくれていたし。)

 セシルを見つけ、ナターシャはセシルに声を掛けた。

「お兄様。」
「…………。」
「セシルお兄様?」
「あ、あぁ、ナターシャ………。」
「化けたなぁ………更に。」
「カイルお兄様……。」

 2人の兄はナターシャを凝視する。

「似合いませんか?」
「……………逆過ぎて……寧ろ怖い。」
「そのドレス………誰の見立てだ?ナターシャ。」

 ナターシャは裾を少し持ち、微笑んだ。

「リュカ殿下ですわ。」
「!!」
「!!」

 2人の兄は、王座を見ると、リュカは真っ赤になって、ナターシャを見ていた。
 かなり嬉しそうで、思わず吹いた兄達。
 
「兄上、ナターシャが着ているドレス、て……。」
「公平にお前達がイメージしたドレスも用意したからな、セリナとライアにどれでもいいから、選ばせてやってくれ、と言っておいた。」
「なっ!!」

 王座で皇子達の会話を直ぐ側の王と皇妃は苦笑いをしている。

「リュカに決まるかしら?」
「どうだろうなぁ?ナターシャ嬢は鈍いらしいから……。」
「まぁ………ふふふ。でもナターシャ嬢ならどの皇子でもしっかり操縦なさるでしょうね。娘に早くなって欲しいわ。」
「…………そ、操縦……か……。」
「ふふふ。」

 夜会が終り、それぞれの貴族達は帰路につき、ウィンストン家も馬車に乗り込んだ。

「ナターシャはこのまま皇子宮じゃ?」
「まだ正式に婚約していないから、一旦王宮を出てから、皇子宮側の門から入り、入口に付ける事になっている。」
「そういう事か。」

 馬車が皇子宮に着くと、リュカが入口で待っていた。

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