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馬車の中で
しおりを挟む「で?ナターシャ………お前はどの殿下を選んだんだ?」
ナターシャは馬車の外の景色を見ていると、カイルが聞いてきた。
「え?まだ選んでおりませんが。」
「カイル、それは殿下方が口説いてもナターシャがまだ子供だから、分からんのだ。」
「貴方、口説いても、てそんな下世話な……。」
ナターシャは口説かれているとは思ってもいないようで……。
「わたくし、愛の言葉等囁かれておりませんが。時々、ご褒美と称して抱き締められるぐらいです。」
「だ、抱き締め……、て言葉より真正面に口説かれてるじゃないか……。」
カイルは呆気に取られている。
「ナターシャ、リュカ殿下はよく俺に、ナターシャを褒める時に如何すればいいか、とよく聞いてこられるんだが……まさか我々がよくするハグと間違えていないか?」
「違いますの?」
「兄上、コレだ……。」
「だな……。」
兄2人は、呆れている。
「だから、先日の話が繋がるのか……。」
父も呆れていた。
「ナターシャ、男性に抱き締められて胸はときめかないの?」
「ときめく……?」
「母上、まだナターシャには無理ですよ。」
「セシルお兄様迄!酷くないですか?」
馬車の中はナターシャの許婚話で盛り上がり過ぎて、ナターシャは話したい事もあまり話せないまま王宮に着いてしまった。
夜会が終わるとまたナターシャは皇子宮に戻らなければならないからだ。
父と兄にもなかなか会えないのに、母との時間も欲しくて、朝に帰って来たのに、話足りない、と思って寂しかった。
馬車から父、兄の順に降り、父のエスコートで母、ナターシャが降りる。
「ウィンストン公爵家、エドワルド様、セシル様、カイル様、エマ様、ナターシャ様お着き~。」
王城門には、同じように夜会を出席する貴族達が多く居る。
「ウィンストン公爵のナターシャ様、公の場では久々ではないか?」
「あぁ、14歳の誕生日以降お見かけしなかったが……。」
「美しく成長されておられる。」
「セシル様、カイル様よ!!美男のご兄弟で素敵。」
セシルは白銀の髪を緩く束ね、アクアブルーの瞳の青年。
カイルは金髪の短髪、兄のセシルより緑がかったブルーの瞳の青年だ。
2人共に美男子で、浮いた噂もなく貴族の独身女性から高嶺の華の存在だった。
「お兄様達と歩きたくありませんわ……。わたくし妹なのに、女性方からの視線が痛いのですもの。」
「諦めろ…………いや!寧ろ光栄に思え!」
「カイル………口を慎みなさい。」
「すいません、父上。」
力強く、鼻高々に言った言葉が癪に触ったのだろう、父の若い頃とうり二つと言われたカイルに重ねて見る者も居るので、声も父に似たカイルの言葉は父が言っているように聞こえたりするらしい。
ナターシャは会場に入ると、友人を探すつもりで、父達と離れようとする。
「ナターシャ、離れるな。」
父から止められた。
「え?何故ですか?」
「…………理由は無い。」
ナターシャが着替えてから、父は何故か機嫌が悪そうに見えていたのだが、会場に入ると悪化していた。
「ナターシャ、父上は着飾ったお前を側に置いておいて、悪い虫を近付かせないようにしたいんだよ。」
「カイル!」
「父上、大丈夫ですよ、俺達が居ますから。ご挨拶したい方も居られるでしょう?行ってきて下さい。」
セシルが、ナターシャをカイルと挟み、男達を牽制する。
「では頼む、セシル。行こうか、エマ。」
「くすくす………殿下方に見せたくないのでしょ?殿方がナターシャに近寄るのを。」
「当たり前だ!」
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