11 / 100
夕飯は5人で①
しおりを挟む初日の勉強の反省会と称し、皇子達と夕飯を共にと誘われたナターシャ。
リュカの隣に席を設けられ、リュカのエスコートで、部屋から食堂に案内された。
「どうだった?ナターシャ、初日の勉強は。」
「はい、楽しかったです。まだまだ下手で、申し訳ありませんでした。」
「足を踏まれたのは、一回だけだったし、上達は早いと思うよ。」
リュカはご機嫌でナターシャと話をしているが、この日初めてナターシャに会うタイタスとコリンは、距離を縮めたリュカとナターシャの空気が変わったのに感づく。
「1日で何か進展あったの?」
タイタスがリュカに聞く。
「進展?ダンスしただけだぞ?だろう?ナターシャ。」
「はい、リュカ殿下に丁寧に教えて頂きましたわ。」
「トーマス兄上、一緒だったんだろ?本当に?」
タイタスは今度は黙々と食べているトーマスに聞き出す。
「不愉快極まりなかった。丁寧には教えてはいたな。」
「な、何だよ、その意味深な言い方。」
「失敬な言い方だなトーマス。」
「ドレスの中に手を入れ、足の向きはこうだの、顎に触れて見つめ合うように、等いろいろね。」
「リュカ兄上~っ!!抜け駆けだ!」
「タイタスも失敬だな。俺は教えていただけだ。」
騒ぎ出したタイタスを宥めようと、コリンも口を出す。
「タイタス兄上順番なんだから、初日のリュカ兄上が抜け駆けなのは仕方ないじゃないか。ナターシャだって初日から皆と相手出来ないでしょう?」
末の皇子は意外と冷静な判断でしっかりした印象だった。
騒がしい皇子達の性格も、ナターシャは見るように、と公爵から聞かされている。
リュカは孔雀のような華やかさ。
トーマスは梟のような佇まい。
タイタスは鷲のような雄々しさ。
コリンは鴉のような賢さがある。
鳥に例えるのはどうかと思うが、2日の間のナターシャの印象はこうだった。
「ナターシャ?」
「は、はい………流石に1日にあれもこれも、ではわたくしも疲れてしまいます。慣れる迄は、リュカ殿下の時間割でお願いしたいです。」
「考え事していたようだが、疲れたかい?」
「いいえ、わたくしにも兄が2人居りますが、殿下方4人居られますと、賑やかなだな、と思いまして。」
「セシルは物静かな奴だし、カイルはうるさい奴だよな?」
リュカはナターシャの兄2人をよくご存知だ。
「俺も公務中にカイルが側に居るとうるさくてうるさくて……。」
「トーマス殿下、も、申し訳ありません!兄に注意しておきますわ。」
「いや、俺がのんびりしてるから、せっかちのカイルが居てくれて丁度いいのさ。」
「トーマスは追求し過ぎなんだよ。予算案起てるのに、1桁迄細かくうるさいから、カイルが急かすんだ。」
「国の経費の使い方は大事だろ?民の税金から成立つんだから、間違える訳にはいかない。」
「大切なお仕事をされてらっしゃるのですね、トーマス殿下。」
「ナターシャ、理解してくれて嬉しいよ。」
トーマスは席を立ち、ナターシャの横に来ると、手を握った。
その行為は、リュカやタイタスの目つきを変える。
チュッ。
手の甲にキスを落としたトーマス。
ニヤリ、と兄と弟達にほくそ笑んだ。
「兄上!抜け駆け!」
「トーマス!」
「兄上は仰った。触れたければ工夫しろ、と……ですよね?タイタスも、ナターシャに褒められるような事をすればいい。俺のこのキスは敬意と礼だ。ナターシャに今渡す物が無いから、キスで礼をしただけさ。」
(…………逆ハーレム状態………。)
(羨ましい……。)
セリナとライアはこの光景を羨ましがって見ていた。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる
しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは
ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、
王弟殿下と出会いました。
なんでわたしがこんな目に……
R18 性的描写あり。※マークつけてます。
38話完結
2/25日で終わる予定になっております。
たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。
この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。
バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
読んでいただきありがとうございます!
番外編5話 掲載開始 2/28
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる