96 / 102
教会へ
しおりを挟むアリシアはアドラード達とカイルの待つ教会へ到着した。
こじんまりとはしているが、綺麗な教会でウィンストン領内では大きな教会。
アマンダは先に参列席に入り、アドラードのエスコートで、教会の大扉の前に立つアリシア。
化粧も目が充血し過ぎて、軽くルルーシュや侍女達に目立たないようにしてもらい、緊張感が漂わせている。
「アリシア、もうお前はレングストンの人間だ。風習も環境も違うが頑張りなさい。領主夫人として、民の為に働くのだぞ。」
「……………はい。」
大扉が開けられ、アリシアは祭壇を直視する。
ステンドグラスに差し込む光が、後光の様にカイルを照らしていた。
金髪の長い髪はひとまとめで、後ろにきっちり結び、初めて見る軍服姿のカイル。
見目で好きになった訳ではないのに、初めて見目麗しいカイルにときめいた。
一歩ずつゆっくり祭壇に歩み進めると、参列者にやっと目が行く様になるアリシア。
レングストン皇国皇帝になったリュカリオン、皇妃ナターシャ、カイルの両親、第二皇子トーマス、トーマス妃ラメイラ、第三皇子タイタスとタイタス妃アニース、第四皇子コリンが参列している。
(…………皆………居る……。)
子供達の姿は無いが、ここまで集まれる事自体異例だろう。
特に皇帝であるリュカリオンは執務が溜まっている筈だ。
祭壇の前に、アドラードからカイルへ引き渡されたアリシア。
「綺麗だ、アリシア。」
「…………ズルい……こんな大事な事を内緒にするなんて………。」
「驚いたろ?」
「…………驚き過ぎて緊張しっぱなし……。」
「驚かせたかったんだ。」
「………ありがとう、カイル。」
式が進み、神父から言葉を賜る。
「………これにて、カイル・ウィンストン、アリシア・ヴィネ・アードラの婚姻を認める。」
夫婦と認められ結婚式を終わり、全員でウィンストン邸に戻ってくると、庭園でパーティーの準備がされていた。
「アリシア、おめでとう!」
「ラメイラお姉様、ありがとうございます!………子供達は連れて来てないのです?」
「居るよ、ウィンストン邸で預かって貰ってた………あ、ほら。」
アリシアが庭園の奥の方を見ると、侍女数人を遊び相手に、リュカリオンとナターシャの子、ヴィオレットとアスラン、トーマスとラメイラの子、イアンとアロン、タイタスとアニースの子供達で遊んでいる。
それぞれ2人ずつ連れて来てはいるが、妃達は3人目を妊娠中だった。
「お姉様達………というか、殿下方……頑張りますね……。」
「根負けだよな……。誰か子供出来ると、対抗心で励むんだから……諦めた。まぁ、アニースの所とは違って、ナターシャや私は久々の妊娠だけど。」
「私も子供欲しい!お姉様方の誰かの子と私の子を結婚させたい!」
「………それはカイルに頼め。」
「アリシア様、お綺麗ですわ。」
「ナターシャお姉様!」
義妹になるのに、歳は上なのでどうしてもナターシャをお姉様呼びをするアリシア。
「変な感じだな、ナターシャの義姉になるのに、お姉様呼びなんて。」
「アニースお姉様!」
姉と慕う人達に久しぶりに会えたのと、その子供達が元気で遊ぶ姿が見れて、楽しむアリシア。
カイルはワインを片手に、見惚れていた。
「カイル、おめでとうさん。」
「………あぁ、忙しいのに悪かったな、トーマス。」
「カイルの門出だ、祝いに来るさ。でもセシルは来なかったんだな。」
「……仕方ない、宰相の仕事してもらわなきゃ、陛下がナターシャ連れて来れないじゃないか。」
「兄上も、カイルの幸せ願ってたからな。」
「それもあるが、サボりたかったんだろ?陛下の性格上、兄貴に仕事丸投げして逃げて来たんじゃねぇ?」
「…………そこ迄やるかな……。」
「トーマス殿下、陛下はそうですよ。」
「え?」
「そうそう、適当に手抜きしておいて、兄貴に丸投げは、日常茶飯事。」
「……………そこ!暴露するな!」
地獄耳だったのか、揶揄われたリュカリオンは子供達の相手をしながら、カイル達に向かって怒鳴った。
「レングストンはいい国だ。」
「アドラード王?」
「ここ迄来た旅の中、何度も国民が王族を慕い敬う言葉を聞いたか………アリシアは幸せになる。カイル殿も頑張って君主を支えてくれ給え。」
「はい、勿論です。」
ガーデンパーティーが終わると、皆それぞれ帰路に着いた。
侍女達の片付けを手伝おうとしたアリシアの腕を引っ張るカイル。
「ウエディングドレスが汚れる。彼女達に任せろ。」
「カイル、だって大変そうだし………。」
「奥様、こちらは大丈夫ですから、旦那様とごゆっくり。」
「本日はおめでとうございます、奥様、旦那様。」
「あぁ、言いたかったぁ!」
「本当、言いたくて仕方なかったんです!」
「あ、ありがとう!!………ちょ、ちょっと!カイル!まだお礼途中!!」
「あぁ!うるさい!!早く抱かせろ!!」
「!!…………う、うん。」
カイルに引っ張られるアリシアを微笑ましく見守る侍女達だった。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢の立場を捨てたお姫様
羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ
舞踏会
お茶会
正妃になるための勉強
…何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる!
王子なんか知りませんわ!
田舎でのんびり暮らします!
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
【完結】「完璧な淑女と称される王太子妃は芋ジャージを着て農作業をする。 ギャップ萌え〜の効果で妖精王が釣れました」
まほりろ
恋愛
アデリンダ・エーレンベルクは完璧な淑女と称されていた。
しかし王太子と結婚して一年、夫は浮気相手の元に入り浸り、彼女の寝室を訪れることはなかった。
そのためアデリンダは、「自分は女としての魅力にかけているのでは?」と思い悩んでいた。
アデリンダを心配した侍女が、彼女の自信を取り戻すために「王太子妃に泥をつけ高貴さを損ね、モテモテにするぞ! 芋掘り大作戦」を決行することに。
当日芋掘り会場に集まったのは、自国の宰相の息子に、騎士団長と魔術師団長の息子、隣国の皇太子に、精霊王に、妖精王、竜人族の王子などそうそうたるメンバーで……。
【こんな人におすすめ】
・ハッピーエンドが好き
・くすっとした笑いが欲しい
・ほのぼのした作品が好き
・ざまぁは添える程度
※無断転載を禁止します。
※ペンネーム変更しました。
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
※「完璧な淑女と称される王太子妃は芋ジャージを着て農作業をする。 ギャップ萌え〜の効果で妖精王が釣れました。妻を放置していた王太子は失ってから初めて彼女の価値に気づき地団駄を踏む」のタイトルで、小説家になろうにも投稿しています。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる