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 アリシアはアドラード達とカイルの待つ教会へ到着した。
 こじんまりとはしているが、綺麗な教会でウィンストン領内では大きな教会。
 アマンダは先に参列席に入り、アドラードのエスコートで、教会の大扉の前に立つアリシア。
 化粧も目が充血し過ぎて、軽くルルーシュや侍女達に目立たないようにしてもらい、緊張感が漂わせている。

「アリシア、もうお前はレングストンの人間だ。風習も環境も違うが頑張りなさい。領主夫人として、民の為に働くのだぞ。」
「……………はい。」

 大扉が開けられ、アリシアは祭壇を直視する。
 ステンドグラスに差し込む光が、後光の様にカイルを照らしていた。
 金髪の長い髪はひとまとめで、後ろにきっちり結び、初めて見る軍服姿のカイル。
 見目で好きになった訳ではないのに、初めて見目麗しいカイルにときめいた。
 一歩ずつゆっくり祭壇に歩み進めると、参列者にやっと目が行く様になるアリシア。
 レングストン皇国皇帝になったリュカリオン、皇妃ナターシャ、カイルの両親、第二皇子トーマス、トーマス妃ラメイラ、第三皇子タイタスとタイタス妃アニース、第四皇子コリンが参列している。

(…………皆………居る……。)

 子供達の姿は無いが、ここまで集まれる事自体異例だろう。
 特に皇帝であるリュカリオンは執務が溜まっている筈だ。
 祭壇の前に、アドラードからカイルへ引き渡されたアリシア。

「綺麗だ、アリシア。」
「…………ズルい……こんな大事な事を内緒にするなんて………。」
「驚いたろ?」
「…………驚き過ぎて緊張しっぱなし……。」
「驚かせたかったんだ。」
「………ありがとう、カイル。」

 式が進み、神父から言葉を賜る。

「………これにて、カイル・ウィンストン、アリシア・ヴィネ・アードラの婚姻を認める。」

 夫婦と認められ結婚式を終わり、全員でウィンストン邸に戻ってくると、庭園でパーティーの準備がされていた。

「アリシア、おめでとう!」
「ラメイラお姉様、ありがとうございます!………子供達は連れて来てないのです?」
「居るよ、ウィンストン邸で預かって貰ってた………あ、ほら。」

 アリシアが庭園の奥の方を見ると、侍女数人を遊び相手に、リュカリオンとナターシャの子、ヴィオレットとアスラン、トーマスとラメイラの子、イアンとアロン、タイタスとアニースの子供達で遊んでいる。
 それぞれ2人ずつ連れて来てはいるが、妃達は3人目を妊娠中だった。

「お姉様達………というか、殿下方……頑張りますね……。」
「根負けだよな……。誰か子供出来ると、対抗心で励むんだから……諦めた。まぁ、アニースの所とは違って、ナターシャや私は久々の妊娠だけど。」
「私も子供欲しい!お姉様方の誰かの子と私の子を結婚させたい!」
「………それはカイルに頼め。」
「アリシア様、お綺麗ですわ。」
「ナターシャお姉様!」

 義妹になるのに、歳は上なのでどうしてもナターシャを呼びをするアリシア。
 
「変な感じだな、ナターシャの義姉になるのに、お姉様呼びなんて。」
「アニースお姉様!」

 姉と慕う人達に久しぶりに会えたのと、その子供達が元気で遊ぶ姿が見れて、楽しむアリシア。
 カイルはワインを片手に、見惚れていた。

「カイル、おめでとうさん。」
「………あぁ、忙しいのに悪かったな、トーマス。」
「カイルの門出だ、祝いに来るさ。でもセシルは来なかったんだな。」
「……仕方ない、宰相の仕事してもらわなきゃ、陛下がナターシャ連れて来れないじゃないか。」
「兄上も、カイルの幸せ願ってたからな。」
「それもあるが、サボりたかったんだろ?陛下の性格上、兄貴に仕事丸投げして逃げて来たんじゃねぇ?」
「…………そこ迄やるかな……。」
「トーマス殿下、陛下はですよ。」
「え?」
「そうそう、適当に手抜きしておいて、兄貴に丸投げは、日常茶飯事。」
「……………そこ!暴露するな!」

 地獄耳だったのか、揶揄われたリュカリオンは子供達の相手をしながら、カイル達に向かって怒鳴った。
 
「レングストンはいい国だ。」
「アドラード王?」
「ここ迄来た旅の中、何度も国民が王族を慕い敬う言葉を聞いたか………アリシアは幸せになる。カイル殿も頑張って君主を支えてくれ給え。」
「はい、勿論です。」

 ガーデンパーティーが終わると、皆それぞれ帰路に着いた。
 侍女達の片付けを手伝おうとしたアリシアの腕を引っ張るカイル。

「ウエディングドレスが汚れる。彼女達に任せろ。」
「カイル、だって大変そうだし………。」
「奥様、こちらは大丈夫ですから、旦那様とごゆっくり。」
「本日はおめでとうございます、奥様、旦那様。」
「あぁ、言いたかったぁ!」
「本当、言いたくて仕方なかったんです!」
「あ、ありがとう!!………ちょ、ちょっと!カイル!まだお礼途中!!」
「あぁ!うるさい!!早く抱かせろ!!」
「!!…………う、うん。」

 カイルに引っ張られるアリシアを微笑ましく見守る侍女達だった。
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