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怒り沸騰
しおりを挟むアリシアは意気込んでいた。
カイルが帰国したというのにまだ会えていないアリシア。
アードラの件は、帰国後にウィンストン公爵がアリシアに報告は入っていた為、アリシアの中で唯一の悩みと言えば、カイルの事だけなのだ。
「何で会いに来ないのよ!!」
いつも会える森に来れば居るかと思っていたのだが、カイルも暇ではない。
毎日森には来るアリシアだが、1週間以上経っても会えないでいた。
「執務室に行こうかな………邪魔だ、て言われたくない……。」
そう結論を出しては、躊躇する事3日。
そして、諦めて皇太子邸かトーマス邸に行くのである。
「昨日はラメイラお姉様の所に行ったから、今日はナターシャお姉様に会いに行こ!」
皇太子邸に着いたアリシアは衛兵に声を掛けた直後、邸から大声で泣くヴィオレットが癇癪を起こしたようだった。
「は、入って大丈夫かな………。」
「許可は出ましたから大丈夫かと……最近、ヴィオ様はよく泣かれてまして。」
「じゃあ、ヴィオちゃんの遊び相手になろうかな。」
ガシャーン!
「ヴィオ様~、私達と遊びましょうね~。」
「やっ!」
「ヴィオちゃ~ん。」
「!?…………アリ……ア……たま~」
おそらく『アリシアお姉様』と言ったのだろう。
ヴィオレットはアリシアがプレゼントした床に落ちていた編みぐるみを拾い、持って来る。
ナターシャがリビングに居らず、アリシアは探す。
「ナターシャお姉様は?」
「今、悪阻で嘔吐されておられて、姿が見えなくなったお母様を探してヴィオ様が癇癪を。」
「ナターシャお姉様、辛そう………。」
「そうですね、ヴィオ様の時より重いらしく………。」
「アリシア様………申し訳ありませんわ。」
ナターシャがリビングに戻ってくる。
久しぶりにアリシアはナターシャに会うのだが、窶れた感じになっていた。
「ナターシャお姉様大丈夫なのですか?」
「吐き気が凄くて………でもそれ以外は大丈夫ですわ。ヴィオの相手をしている時に悪阻が来ると、ヴィオは泣いてしまって………。」
「おかーたま。」
ヴィオレットは、ナターシャにベッタリ付き添う。
ナターシャを心配そうに見つめるヴィオレットは、母親を心配して泣くのだろう。
「大丈夫よ、ヴィオレット。」
ヴィオレットに笑顔を向けたナターシャの顔を見て、ヴィオレットは安心したのか笑顔を返し玩具で遊び始めた。
「アリシア様………なかなか刺繍も見れず申し訳ありませんわ。」
「大丈夫です、今はナターシャお姉様の体調が大事ですし。」
「…………でも、アリシア様は近々ロバートが迎えに来る予定ですし、帰国する予定でしょう?」
「…………え?」
「……………え?聞いてらっしゃらない?………おかしいわ、わたくしカイルお兄様から聞いたのよ?」
「………聞いてません、そんな事!」
アリシアはソファから立ち上がる。
「アードラの事が解決したのは聞きました?」
「………はい、それはウィンストン公爵から……。」
アリシアは、カイルとトーマスの帰国したその夜、ウィンストン公爵が皇女宮に来て、経緯を話てくれたのだ。
だから、アリシアはカイルを待っていた。
「アードラ国内はまだ体制を整えている最中。落ちていてきたら、ロバートが迎えに来ると聞きましたわ。カイルお兄様はロバートからの連絡が来た、と昨日わたくし聞きましたから………リュカ殿下づてですけど。」
「………何で私に言わないのよ!カイルの馬鹿!!」
「アリシア様?」
「………………ナターシャお姉様………わたくし……カイルに会いに行ってきます!」
「………はい………。」
「おかーたま?」
「………は~い、アリシアお姉様はご用を思い出したのですって。またお母様と遊びましょう。」
「は~い。」
ナターシャはリュカリオンから、アリシアとカイルの関係を聞いているのか、アリシアを引き留める事もしなかった。
ただ、アリシアがカイルに怒っていたのは、ナターシャも気が付くのだが、恋路を邪魔するつもりもなく、静かに見守るのだった。
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