59 / 102
剥奪
しおりを挟むアドラードがアマレスを投獄した頃、牢獄に入っていたナバーロを入れ違いに出したロバート。
「ナバーロ!!お主帰っておったのか!」
「…………宰相、お助けを………!!」
鉄格子を挟み、兵士に拘束されて歩くアマレスに助けを求めた所で、ナバーロも察する。
アドラードが病に伏せっているのに、何故宰相が拘束されたのかが疑問に残るものの、第二責任者である宰相が兵士に自由を奪われている光景を目の当たりにしては、ナバーロもタダでは済まないのだ、と。
「ここに入っててもらう。」
アマレスを牢獄に閉じ込め、兵士達はナバーロに声を掛けた。
「ナバーロ、出ろ!今よりアドラード王から詰問がある!」
「アドラード王だと!寝たきりだった筈だ!」
「いいから出るんだ!」
何が何だか分からず、兵士の言う通りに出るしかなかったナバーロは、手を縛られ兵士に連れて行かれた。
先程、アマレスが捕まった会議室に連れて来られたナバーロの前には健康そうなアドラードと、ナバーロが見慣れないトーマス、カイル、アルフレッド、ロバートが待ち構えている。
そして、遅れてマルシアがアーサーを連れてやって来た。
「…………マルシア……。」
「あら、お父様………マリージョからいつお戻りに?」
「…………。」
マルシアの言葉には答えず、肩を落としたナバーロ。
「アドラード様…………な、何故起きて……。」
「只今より外務大臣ナバーロ、その娘マルシアに処分を言い渡す。」
アドラードもまた、マルシアの言葉を聞き入れる事は無い。
「外務大臣ナバーロ、犯罪者アマレスと共に王である私を病に見せかけて毒で殺害しようとした殺人未遂、アードラ資産横領及び近隣諸国への侵略行為、マリージョへの資産横流し、娘マルシアの不貞を知りながら証拠隠滅の疑いにより、お前を外務大臣の任を外し、爵位剥奪を言い渡し、娘マルシアには父、ナバーロ同様、殺人未遂、アマレスとの不貞により側妃の身分を剥奪。アマレスとの間に生まれた息子アーサーの王位継承権を破棄するものとする。お前達は、裁判に掛け、処罰を後に知らせる。それ迄牢獄の中で謹慎せよ!アーサーは王族の地位から落とし、一人の臣下として、アードラに使えよ。」
「…………なっ!アドラード様!アーサーはあなた様の子ですわ!何を馬鹿な事を!」
マルシアは慌てて否定する。
ナバーロは観念したのか肩を落としたままだった。
「証拠ならありますよ、マルシア側妃がアマレス宰相との不貞によりアーサー王子を産んだ事の証明が。」
「誰なのです!あなた達は!」
「名乗った所であなた方との付き合いはしませんし、忘れて頂いて結構です。ただ私達は、アードラと国交のある国の者。我が国は医療が発達してまして、血液から親子関係が分かるんですよ。最近採血させて頂いたのはお忘れか?」
トーマスは名乗る事もせず、以前会った他国の皇子の顔さえ覚えていないマルシアには敬意を払う事も嫌がった。
「………そんな事で分かるものか!」
「それが分かるんですよ。親子の顔付き、髪色は遺伝子から来る物。我が国は血液の中にその遺伝子がある事に気が付きまして、アーサー王子の父親が、アドラード王の遺伝子よりアマレスの遺伝子の方がより親に近いと出ましてね。何でもその頃しきりにアマレスはあなたに会いに行っていたという証言も入手しまして、血液検査をさせてもらったしだいです。」
「………………あぁぁ………………揉み消したと思っていたのに……。」
今度はカイルが医学的観念から説明をすると、マルシアはその場に座り込んだ。
「ナバーロ、マルシアを投獄せよ、アーサーは私室で処罰を下す迄謹慎せよ。」
「父上…………ではなかったのですか?」
「アーサー………残念だが、もう王子として認める訳にはいかん、すまぬな。」
黙って事の成り行きを見るしかなかったアーサーは悲しい顔をする。
その顔を見ていたアルフレッドだが、声を掛ける気にもなれない。
アドラードを裏切った証拠でもあるアーサーに優しい声等掛けてはこれから先の甘えになってしまうからだった。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
【完結】「完璧な淑女と称される王太子妃は芋ジャージを着て農作業をする。 ギャップ萌え〜の効果で妖精王が釣れました」
まほりろ
恋愛
アデリンダ・エーレンベルクは完璧な淑女と称されていた。
しかし王太子と結婚して一年、夫は浮気相手の元に入り浸り、彼女の寝室を訪れることはなかった。
そのためアデリンダは、「自分は女としての魅力にかけているのでは?」と思い悩んでいた。
アデリンダを心配した侍女が、彼女の自信を取り戻すために「王太子妃に泥をつけ高貴さを損ね、モテモテにするぞ! 芋掘り大作戦」を決行することに。
当日芋掘り会場に集まったのは、自国の宰相の息子に、騎士団長と魔術師団長の息子、隣国の皇太子に、精霊王に、妖精王、竜人族の王子などそうそうたるメンバーで……。
【こんな人におすすめ】
・ハッピーエンドが好き
・くすっとした笑いが欲しい
・ほのぼのした作品が好き
・ざまぁは添える程度
※無断転載を禁止します。
※ペンネーム変更しました。
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
※「完璧な淑女と称される王太子妃は芋ジャージを着て農作業をする。 ギャップ萌え〜の効果で妖精王が釣れました。妻を放置していた王太子は失ってから初めて彼女の価値に気づき地団駄を踏む」のタイトルで、小説家になろうにも投稿しています。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる