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検査結果

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 検査結果が医師達の報告でトーマスとカイルの元に入る。
 結果、アーサーとアマレスは親子の可能性が高い、と出た。

「こんな事が分かるんだな、血液検査で。」
「すげぇよな、血液検査って。ナターシャの出産時にヴァン子爵から聞いた事がこんな時に役立つとはな。」

 2人で報告書を見ながら感心している。
 
「でも、何でこんな血液検査なんてやる事になったんだ?」
「マルシア側妃の弱み調べさせていたら、アーサー王子が産まれた経緯について、噂があったんだと。アーサー王子の父親はアマレスではないか、とね。」
「へぇ………という事は、アマレスはアーサー王子に王位に付かせたいと言うのはあながち間違いではない、て事か。」
「多分、アマレスはそんな優しいヤツじゃないぜ。」
「違うのか?」

 カイルは確信をしている。
 アマレスに会った事のあるカイルには、アマレスが自分の子供だろうが、アマレスの欲の対象でない限り興味があるとは思えないのだ。

「アマレスは知らないと思うぜ。アーサー王子が自分の子供だとな。マルシア側妃が不貞を起こした事は重大だが、噂を父親のナバーロと揉み消したのは、父親がであるかどうか、だと思うぜ。正妃は侯爵家の父親の持つマルシア側妃と違い身分が低い子爵家ときた。かなりマルシア側妃は図に乗った態度らしいからな。」
「それで、アマレスと協力したというだけか。」
「あの2人に愛情なんてあるかどうかは全く興味はないが、アマレスの性癖見りゃマルシア側妃なんて三行半な筈だ。」
「あぁ…………お前にもクドいたからな。」
「気持ち悪かったぜ……。」
「それが今回見れるのは、楽しみの一つだな。」

 トーマスがニタニタと含み笑いをする一方で、カイルはウンザリした顔で返す。

「よしてくれ、素で行くぞ今回は!」
「………残念。」

 数日、念入りにトーマスとカイルは打ち合わせをし、王宮に入る手筈を整える。

「よし、コレで行くぞ。」
「了解………じゃあ、王宮に連絡入れといてくれ。」

 カイルは部下に指示を出し、王宮からの連絡を待った。

✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧

 レングストン王宮、トーマス邸。

「暇だなぁ………今日はもう勉強無いし、乗馬でも行くかな…………マーニャ、厩舎に馬が乗れるか確認してくれないか。」
「ラメイラ様、もう夕刻ですよ、今日はやめておいた方が良いかと。」

 暇を持て余し、勉強も刺繍もしたくなくて、身体を動かしたかったラメイラはマーニャに断わられる。

「………直ぐに戻るから、お願い。」
「分かりました、確認して参りますが、許可出てもそんなに時間は取れませんからね。」
「ありがとう!………あ、私も一緒に行く。」

 ラメイラはマーニャと共に、厩舎へ軽快に歩く。

「久々だから、嬉しいな。」
「そうですね、ご結婚後なかなかお時間無かったですし。」
「あのヘルン姫も居なくなったし、王宮も平静になったし、なんか暇になったんだよねぇ。」
「あの方はもうご遠慮したいですね。」
「全くだ。」

 厩舎に着き、ラメイラは久々に馬のニオイを嗅ぐ。
 しかし、懐かしさとは裏腹に気持ち悪くなっていた。

「…………うっ………な、何だ……どうしたんだろ………。」
「ラメイラ様?」
「ちょっと…………外に出たい………。」

 マーニャに支えられながら、ラメイラは厩舎の外に出ると、厩舎を管理する調教師達がラメイラに気が付いて声を掛けてくる。

「如何されました?ラメイラ様。」
「なんか、厩舎の嗅ぎなれたニオイが受付ないんだ………クラクラする。」
「今迄と何も変わっておりませんよ?」
「ラメイラ様、体調がすぐれないのでは?今日はおやめになった方が良いかと。」
「…………乗りたかったけどな………落馬したらトーマスが心配するな…………ごめんせっかく調教師達が時間を割いてくれたのに……。」
「ラメイラ様、お気になさらずに。体調がすぐれないなら、馬に乗るのは危険ですから。」

 厩舎からなるべく早く離れたくなったラメイラはトーマス邸に戻ると、気怠さが襲うようになっていた。
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