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修羅場!!

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 朝食を食べた後、ラメイラはトーマスの妃殿下として、アリシアやアニースとは違う勉強があるとかで、王城の図書館に行ってしまった。
 アニースはウィンストン公爵と会う事になっていて、アリシアは暇を持て余していた。

「皇太子邸に行こうかしら……。」

 邪魔にならないなら、少し刺繍の手ほどきをして欲しかったので、念の為に刺繍道具を持参する。

「妃殿下はおみえかしら?お約束はしていないのだけど、お会い出来れば、と思って。」

 アリシアは見知った衛兵に声を掛ける。

「妃殿下はいらっしゃいますよ。ですが父上様のウィンストン公爵が今からこちらに来られると伺っておりまして。」
「ウィンストン公爵はアニースお姉様と会っているんじゃ?」
「アリシア王女?」

 アリシアの後方から声がすると、ウィンストン公爵がアニースを連れ、皇太子邸の前に着いた所だった。
 アニースはまだナターシャと顔を合わせていないらしい。

「ウィンストン公爵とご予定があるなら、わたくしは失礼しますわね。」
「アリシア様、申し訳ありません。」

 ウィンストン公爵は頭を下げた。
 ウィンストン公爵が悪い訳では決してない。
 アニースから、先日の皇子達との対面時に、ナターシャも会う予定だったのだが、ヴィオレットが熱を出した為、看病で会えなかったらしい。

「ウィンストン公爵が謝る必要はありませんわ、わたくしはナターシャお姉様とお約束してませんでしたし。気になさらないで。」
「アリシア、また後でな。」
「えぇ、アニースお姉様、また後程。」

 アリシアはアニースとウィンストン公爵と別れ、そのまま皇女宮に戻りたい気分でもなく、王族居住地の森に行く事にした。

(………創作意欲、湧くかしら……。)

 王族居住地は幾つもの2階建ての邸が点在する。
 最も王城に近い皇太子邸、その奥にトーマス邸があるが、他の邸はまだ使われていない。
 2つの邸は工事中らしく、職人が邸の土台や外壁を修復していた。
 皇子達が婚姻が近くなる事を予測させる。
 職人達の傍には行くわけにはいかないので、アリシアはいつもその奥へと森を進むのだ。

「こんなに邸がある、て事は何代か前の皇帝は子沢山だったんでしょうね……。」

 10邸は有に越す古びた邸も多い。
 リュカリオンは妃のナターシャ以外の女を愛人に迎えるつもりもないのが、臣下を含め、令嬢達も諦めているらしい。
 アリシアは話で聞いただけだが、令嬢達の嫉妬心からリュカリオンの怒りを買い、ナターシャに対し命迄狙った令嬢も居るらしい。
 侮辱的な事をした令嬢やその父親にも、爵位や資産さえ没収され、平民に落とされた者も居るという。

「本当に広いわ、レングストンの王宮、て。」
「……………!!」
「………………。」
「ん?話し声?」

 アニースが歩いていると、もっと奥の森から男女の声が聞こえる。
 男の方はカイルの声だった。

(………また、嫌な時に来たわ……戻ろ。)
「他に女が出来たんですか!?」
「………そうじゃない。それに身体目的で君に近付いた訳じゃない事は、以前から話していただろう。俺はアードラの情報網が欲しいだけだ。身体を求めて来たのは君からだったろ、金は要らないから抱いて、と言ったのを忘れたなんて言わせないぞ。」
「……………だって、私はカイル様をお慕いしてるんです!身分が違うから、妻にとは申しません!!愛人の1人でいいんです!」
「…………そういう話になるなら、もうお前からの情報は要らん、他をあたる。充分な対価は与えている筈だ、アードラの両親はそれで助かるだろう。」
「カイル様!!………待って下さい!………う……………う………。」

 アリシアは聞いてしまった。
 男女の修羅場を。
 カイルが王城の方に戻るのかアリシアの方に来る。

(…………うわっ!こっちに来るっ!!……隠れられ………あ…………。)
「…………何してんだ?」

 案の定見付かってしまったアリシアは、苦笑いで返すものの、カイルに睨まれ誤魔化しも出来なかった。
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