25 / 102
カイルinアードラ
しおりを挟むカイルはアードラの王都に送った密偵と宿で、情報を確認していた。
「これか、アドラード王の薬は……。」
「はい。」
「…………砕いて成分を今すぐ調べろ。何が入ってるか早急に見つけ、回復薬を作らなきゃならん。それからじゃないとな………アルフレッド王子には接触出来たか?」
「はい、レングストンからの救援、助かります、と。」
「そうか……密偵の中に医師数人紛れ混ませる手筈は?」
カイルは確認と指示を的確に話す。
部下達は、代わる代わるその指示に従い動いていく。
「はい、既に準備をし、本日中に入れます。」
「よし。俺は薬の成分から、回復薬を配分を算出するから、ここから離れられん。お前達の動きに掛かってるからな、頼むぞ。」
「御意。」
「解散。」
部下達は、散り散りに指示に動く様を、同行した、ロバートや医師達は呆気に取られた。
「素晴らしい采配ですな、カイル様は。」
「私はただの文官ですよ?トーマス殿下の侍従なだけです。」
今回は、王宮医師の任にあるヴァン子爵も同行させているカイル。
彼も薬学の知識もある為に協力を仰いでいる。
「宰相殿の、仕事を手伝いをされながら、薬学の知識をお持ちはのは下級貴族の私でも知ってますが、カイル様の様なご子息なら、さぞ宰相殿は鼻が高いでしょう。」
「ははは………父は私達子供達を褒めた事等ありませんよ。自慢もしませんしね。妹のナターシャ以外は。」
「父というのは娘には甘いものです。」
会話はするものの、テキパキと腕を動かし、成分分析をするカイルとヴァン子爵や、残された医師達。
ロバートは何をしていいか分からないでいた。
「カイル様、私は何をすれば……。」
「…………お前は、俺が王城に入る迄ゆっくりしてるといい。街には出るなよ?今はお前はアードラ内でお尋ね者なんだから。」
「分かってます!ですが何もしないのも……。」
「じゃあ、食事準備を頼む。宿出るなら変装してくれよ。」
「分かりました。」
部屋には、カイルの部下達が準備しておいた食料品がたっぷり置いてあり、街に買いに行く程でも無く、小さなスペースに軽食程度なら作れるような台所があったのだ。
「………料理………作った事………無い………。果物とパン…………あ、肉あるから焼いてパンに挟むか………。片手で食べれるし……。」
ロバートはそれぐらいしか出来なかったが、アードラの為に動いてくれたレングストンに感謝したかったのもあり、四苦八苦しながら料理を作ったのだった。
「………まっず!」
「や、やっぱり………料理した事ないんですよ。」
「兵士だろ?野営訓練した事無いのか?味付けしてない肉なんて、旨くないんだぞ?」
「俺は部下達が作ったのしか食べた事なくて………隊長だったし。」
「レングストンの兵士は全員で作るからな、階級なんて関係なく……。」
「でも、レングストンはここ何十年と戦ないじゃないですか。カイル様は料理出来ると?」
「俺?出来るぜ?王都出身だが、ウィンストン領に帰る時はほぼ薬草研究だからな、如何すれば効能を上げれるか、どれとどれが毒になるか、料理して味見するし……あぁ!塩!胡椒掛けりゃ良かった!食べちまった!」
「…………顔立ちが良いだけじゃないんですね……。」
水をがぶ飲みしているカイルを見つめるロバート。
「はぁ?んなもん、若い内だけじゃねぇか、モテるのなんて………見た目麗しいカイル様、て女が寄って来た所で、歳取りゃ顔に皺も出るし、体力も無くなる。そんな男、女が興味持つ訳ないだろ。俺は結婚相手居ないからな、今の内に出来る事はやっとくんだよ。金と知識の蓄積は!」
「………私にも出来るんでしょうか……。」
「…………今のお前の視野じゃ無理だな。レングストンに来た時、衛兵とモメたり、アリシア王女にクドい説教してたろ……アルフレッド王子が大事過ぎて、他の事見ないようじゃ無理無理。先ずは『自分』とは何か、を知る事じゃねぇか?」
「カイル様!!発見しました!」
「!!」
カイルが医師の元に行く。
医師が書いた成分表を確認し、微妙な数量の毒が発見されたのだ。
「この毒か……………この毒なら……今から言う薬草を用意してくれ!」
カイルはまた真剣な目で医師達に持って来た薬草を用意させ、カイルはその薬草を煎じたり、粉にしたり、と慌ただしく薬を作り始めるのだった。
10
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる