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アードラの現状

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 徐々に、レングストンの勉強や環境に慣れた頃、コリンから呼び出されたアリシア。
 その日は元々コリンと勉強があるのだが、コリンに呼び出されたアリシア。
 ラメイラ抜きでロバートを連れて来てとの事らしい。
 待ち合わせで王庭のテラスに来たアリシアとロバート。

「アリシア~!」
「お兄様!」

 用意されたお茶の香りは、アリシアの飲み慣れた茶葉。
 思い出すので、毎日飲みたいのを我慢していたが、コリンの心遣いで用意したのだと分かると、我慢していた涙腺が溢れ出した。

「だ、大丈夫?アリシア。」
「……………はい……この前のお茶会以降、飲まない様にしていたので……。」

 しっかりしていても、まだ10歳の少女。
 両親や兄に甘えたい筈。

「アードラの事だけど、アルから手紙が届いたんだよ。アリシア宛もあるよ。あっちではまだアリシアが行方不明で捜し回ってる。レングストンに匿われてる事はまだバレてない。」

 コリンから手紙を渡されたアリシアは、直ぐに手紙を読んだ。

「ロバートにもあるよ。」
「私にもですか?アル様から?」
「そう。」

 アルフレッドがコリン宛に手紙を書かなければならないのは仕方なかった。
 アードラ国内でアリシアがレングストンに居るのを知るのは国王とアルフレッドだけなのだ。

「それでね、アリシア……。」

 コリンは手紙を読んでいるアリシアに構わず話をする。

「アルからの手紙を父上に見てもらったんだ。アリシアの手紙にはどう書いてあるかは分からないけど、ロバートへの手紙は多分僕に来た手紙と同様だと思う。だから、その手紙2人が見られたくないなら父上には見せないけど、僕の意見では見せて欲しいと思ってる。」
「…………コリン殿下………どうぞ。私は構いません…………どうか………アル様を……。」

 ロバートがコリンに頭を下げ、手紙をコリンに渡すと、コリンは確認もせず、服のポケットに入れた。
 アリシアは途中迄しか読み進めてない手紙を急いで読んだ。

『アリシア、元気にしてるかい?コリンと仲良くしてる?こっちは父上はまだまだ回復せず、危ない状況だけど、なんとか宰相の目論見を阻止しながらアリシアが早く戻れるように頑張ってるよ。レングストンでの花嫁修業に専念して元気で。』

「コリン兄様、わたくしの手紙は差し障り無いように書いてありますが……。」
「見ていい?」
「はい。」
「………………。」

 コリンに渡されたアリシアの手紙は重要性の無い文面だった。
 コリンはそのまま、手紙を折り畳み、封筒に戻した。

「アリシア、念の為に借りていい?僕には分からない意味が隠されているかもしれないし。」
「勿論です。…………あの、コリンお兄様やロバートの手紙の内容、わたくしは見れませんか?」
「…………見ない方がいいと思う。」
「私も同意見です。アリシア様のお心を汚しかねません。」

 アリシアはコリンに頭を下げた。

「お願いします、お兄様………わたくしもアードラの王族、知る権利がありますわ。」

 この日、アリシアは勉強どころでは無かった。
 この後、皇帝に謁見を申し出たコリンはそのままアリシアを部屋に待たせたまま会いに来なかった。
 そして、この日のコリンとの勉強は中止と連絡が入る。

(…………お父様………お兄様………お母様……どうかご無事で………。)

 アリシアはいても立っても居られず、無地の布を取り出し、刺繍を始める。
 気を紛らわせるしか出来ない現状を、鬱憤を晴らす方法も分からず、刺繍に込めたのだった。
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