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モルディア公爵の悩み
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しおりを挟む「義母は、俺達が汚点なんでしょうね」
「それで、アリエスに縁談……か……懲りねぇな」
マークも溜まった仕事を処理する。屋敷に居るより気が紛れるのだろう。
「侯爵から下の爵位で探してますよ……公爵では相手が居ないから、と」
「俺でも嫌な話だな………嫌がってるんだろ?アリエスは………自分の髪と瞳の色」
「俺はお気に入りです」
「お前はな………俺も可愛いと思うがなぁ」
「当たり前じゃないですか、アリエスは可愛いんです」
「でも、如何する?」
ルカスはペンを置き、マークの顔を見た。
「何がです?」
「ロティシュが、アリエスを娶りたい、て言ったら」
「…………いいんじゃないですか?アリエスもロティ様が好きだし」
「……………それなぁ……お互いに遠慮して進展しないんじゃないか?」
「………あぁ、アリエスはコンプレックスですし」
「ロティは、告白する勇気すらないしな………ここはちょっと仕掛けてみるか?」
「…………はぁ?分かってます?ロティ様は兎も角、アリエスが皇太子妃になったら、反論出ますよ?」
流石に、マークも手を止める。
「いいじゃないか、ロティは放っとくと俺と一緒になりそうだ………好きでも無い女と婚約して後悔したからな」
「……………後悔してないでしょ……居たからさっさと婚約解消し、マシュリー様と婚約を早めれたんですから」
「それに関してはな………だが、婚約してなきゃ、防げた事もある……」
ルカスの元婚約者に、マシュリーとルカスの副官だったレナードが拉致され監禁された事件は、ルカスにとっては回避しようと思えば出来た筈だったのだ。それには後悔している。
「だから、ロティシュには好きな女を見つけ、皇位継承して欲しい………まぁ、皇妃になれる器の令嬢なら、俺は許すぞ?………アリエスなら充分素質ありそうだがな」
「…………だから、無理ですって……アリエスがロティ様に遠慮してますから」
「まぁ、まだ14だ………来月のロティの誕生祭の夜会では、アリエスも参加するだろ?見てみようぜ」
「……………あんまり面白がらないで下さいね、ルカス様」
♢♢♢♢♢
アリエスは、皇族居住地のイリーサの相手をしている。
「イリーサ様、ロティ様のお誕生日会のドレスは決まりました?」
「…………まだよ……3着作ったけど、まだ悩んでるの………アリエスは決めた?」
「わ、私は侍女として給餌にあたるつもりです」
イリーサはティーカップをテーブルに置く。
「はぁ?何を言っているの?貴女は公爵令嬢よ?………確かにお母様は侍女長だけど、宰相であるモルディア公爵が参加しない訳はないんだから、エリスも出るでしょう?」
「人手足りませんし」
「駄目!出て!」
「イリーサ様…………」
「自分の魅力知らない?アリエス………貴女は綺麗なんだから!」
「…………綺麗では決して……」
「…………じゃあ、鬘!鬘被ったら?黒髪か白銀の鬘!!」
「……………え!?い、今から用意なんて出来ません!」
「……………ふふふ……実はね……わたくしアリエスの為に用意しちゃってるのよね~」
企む顔するイリーサに、他の侍女に合図する。
「衣装部屋に、『アリエス用』とある箱、あれ持って来て」
「畏まりました」
知らなかったのはアリエスだけの様で、持って来る侍女を止めようとするが、イリーサに再び話掛けられるアリエス。
「見たかったのよ!わたくしが!」
「イリーサ様!」
「萎縮する事なんてないんだから!堂々たる態度で誕生祭に参加すればいいの!」
「お持ちしました、イリーサ様、アリエス様」
侍女達からは、アリエスも様呼びされている、アリエス。
「ありがとう………ほら、被ってみて!わたくしからアリエスにプレゼントよ………貴女も誕生日過ぎたばかりなんだから」
「で、ですが………」
ドレッサーの前で座らされ、白銀の鬘を被せられたアリエス。
「イリーサ様!」
「…………うわぁ………やっぱり似合うわぁ……女神の様よ………ね、そう思わない?」
「お綺麗です、アリエス様」
コンコン。
『イリーサ居るだろ?』
「ロティお兄様!?………居るわ、入って来て下さいな」
「イリーサ様!」
ロティシュの声が、イリーサの部屋前から聞こえ、アリエスは鬘を取ろうとするが、イリーサに頭を押さえ着けられる。
「駄目よ!アリエス」
「………何騒いでるんだよ…………ここにアリエスが………………え!?」
「じゃじゃ~ん!!……どう?お兄様……アリエスにわたくし白銀の鬘をプレゼントしたの……黒髪の鬘もあるのよ?見たい?」
「……………」
ロティシュは侍女服に白銀の髪が靡くアリエスを見て固まっている。
「お兄様?……………ロティお兄様~?」
「………ちょっとお前達、部屋から出てってくれ」
「は?わたくしの部屋なんですけど!」
「出てけ!!」
イリーサは不服そうだが、アリエスと2人になりたそうなロティシュだったので、侍女を引き連れて出ようとする。だが、アリエスもイリーサの後を追う。
「…………アリエスは出るな」
「………え!………あ、あの………」
ロティシュにより腕を捕まれ、引き込まれロティシュの胸の中に収まらせられたアリエス。
「!!…………ロティ……様?」
「何なんだよ!!綺麗にされてるんじゃないよ!!」
「え!?………あ、あの……鬘被っただけ……」
「何で俺じゃないんだ!!鬘が欲しいなら俺だって用意出来た筈だ!」
「わ、私………鬘が欲しいなんて、イリーサ様には一言も………」
「……………くそっ!!」
抱き締められているアリエスに、ロティシュの顔は分からない。
「ロティ様………苦しい………です……」
「…………アリエス……」
「…………え!?…………んっ!!」
顎を上げられ、唇を塞がれる。ぎこちないのか、無理矢理押し入ろうとするロティシュの舌が、アリエスを正気に戻した。
ドンッ!!
「も、申し訳………ありません………失礼します………」
アリエスはロティシュを突き飛ばし、一礼すると、呆然とするロティシュを無視し、鬘を取り、テーブルの上に置き、イリーサの部屋を出て行った。
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