6 / 58
天然?公爵令嬢のアピール?
5
しおりを挟む翌日、ロティシュとザナンザはまた勉強をサボっていた。城の皇族専用庭園に隠れては、直ぐに探される為、城内で貴族が出入り出来る庭の片隅で、2人は不貞腐れていた。
「ちぇっ……結局見られないままか……」
「父上が、あんな神力があるなんて知らなかったよ!」
「悔し過ぎる!…………俺もアレやりたい!」
「俺もだよ!兄上!」
ルカスの実体と精神を分けた神力は、ロティシュやザナンザだけでなく、15年前の戦でルカスの力を見た者は、憧れ出来なかった者が後を絶たない。だが、ロティシュとザナンザは知らなかった。どれだけ神力を消費し、疲れを伴うのかを。ルカスでさえ、長時間長距離は無理で、何度疲れ果てたかを知っているのは、ルカスの副官だったマークだけだ。
父親に憧れるのはいい傾向ではあるが、動機は不純過ぎるロティシュとザナンザ。その不純さは全て性に繫がっている。
「やってみよう!」
「うん!!」
暫く2人は瞑想するが、全く変化無い。
「…………兄上……」
「………何だ?」
「………如何やるの?」
「………………知ら~~~ん!!分から~~~~ん!!」
勉強をサボっているからなのか、まだ若いからなのか、ロティシュもザナンザも出来ない。
「ロティ様~、ザナンザ様~」
「…………げっ!あの声……」
「アリエスだ!」
隠れている茂みを掻き分け、探しに来るアリエスが、ロティシュとザナンザを見つけると、駆け出して来るが…………
「!!………あっ!」
「「えっ!!」」
「きゃぁぁぁっ!!」
躓く物が何も無い場所で、アリエスが転びロティシュの胸に飛び込んだ。
「!!」
「………………あっ!ロティ様っ!し、失礼を!!」
「…………ほ、本当っ!失礼だな!お前!」
しかし、倒れ込むアリエスを支え様と、腕を出したら、アリエスの胸を押さえてしまったロティシュ。お互いに真っ赤になって離れたが、ザナンザには面白くなかった。
「アリエス、大丈夫?」
「あ………は、はい……ロティ様は大丈夫ですか?」
「………………う………あ、あぁ……」
ロティシュからすればご褒美以外何物でも無い。アリエスは、父マークの遺伝なのか、黒髪に1束だけ白銀の髪の少女。瞳は母エリスに似たグリーンと白銀の瞳のオッドアイだ。ロティシュから見たら、神秘的に見えるアリエス。
「ロティ様、ザナンザ様、今日は必ず勉強は出なさい、と陛下からお達しですよ………私も参加しろ、と言われていますので、お迎えに来ました」
「………勉強なんかクソ食らえだ……」
しかし、アリエスはロティシュの僅かな気持ちも感じる事は無く、要件だけ伝える。それが、ロティシュは苛々した態度に変えさせた。
「そうはいきません、ロティ様………今日は神力の勉強です…………急遽、変更になり上皇陛下がお越しになりますから」
「…………上皇が?」
「はい……陛下がモルディア皇国一の神力の持ち主ですが、お忙しいので上皇陛下に頼まれまして、ロティシュ様、ザナンザ様、イリーサ様、そして私も学ばさせて頂く事になりました」
ロティシュはもう一度、アリエスを見ると侍女服を着ていない。公爵令嬢らしく着飾っていた。
「神力!!兄上!!お祖父様から教えて頂けるなら行かなきゃ!!父上の神力の使い方も詳しく教えてくれるかも!!」
「!!…………あ、あぁ、そうだな行こう!」
「…………」
ロティシュの意識が変わり、アリエスも緊張感が取れる。ロティシュに見つめられると、ドキドキが止まらないのだ。
「アリエス、何処だ?」
「あ!はい!訓練場です!」
アリエスが先導する様に歩くと、背後で歩くロティシュが情けない様に見え、アリエスの前に出る。ザナンザはアリエスの横に並び歩こうとするが、ロティシュは気に入らない。
「ザナンザ!」
「………はいはい」
ロティシュに並び歩く様に促され、ザナンザは小声でロティシュに言った。
「……………大きかった?弾力は?」
「………なっ!」
「その手………さっきアリエスの胸触ってたじゃないか」
先程、アリエスが転んだ時、支えた右手を見つめていたロティシュ。恨めしそうに見るザナンザは、冷たい声だ。
「い、言うかよ」
耳迄赤くなる、純情な面を見せるロティシュ。その耳が、表情が後ろを歩くアリエスに見えていたのなら、どんなにいいかとさえ、思っている。皇太子として告白して、身分下の令嬢がそれを命令と取る場合さえもある。特に父は宰相であり、皇帝ルカスの従弟のマーク、母はロティシュの乳母エリスで現在は侍女長。身分に関しては口煩く、気を付けさせられたロティシュとアリエスの為、命令と捉えるに違いない、と思っているのだ。
アリエスもまた、自分からは告白出来ないでいる。それは出生の事と関係する。マークの母は妾だった。それにより継母であった公爵夫人からの愛情も与えられず、城で幼少期から過ごし、ルカスの副官に抜擢される迄、上皇の義理の弟の息子という事もあり、皇位継承者でありながら、後ろ盾も無い子として扱われた過去がある。宰相になった今では、表立って言われはしないが、皇太子妃マシュリーの侍女のエリスと結婚して、アリエスが産まれると、アリエス自身が冷遇される様になった。そんな彼女が、ロティシュに恋をしても、反対される事は分かっているし、見目麗しいロティシュと、黒髪、オッドアイのアリエスは不釣り合いだと思っていた。『中途半端な公爵令嬢』そんな陰口が後を絶たない。
「あ、やっと来たわ!お祖父様、お兄様方来られました!」
訓練場の入り口で、ロティシュ、ザナンザの妹、イリーサ皇女が手を振る。10歳の皇女だが、既にマシュリー似のふわふわした愛くるしさがとても眩しい。しかし、性格はやや、問題ありだった。
「遅っ!アリエスを困らせないで!お兄様方!!わたくしの時間でもあるのだから、無駄に待たせないで頂ける?」
可愛いなりで、発する言葉はキツイ皇女だった。
2
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる