お見合い、そちらから断ってください!【完結】

Lynx🐈‍⬛

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妹注意報

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 裕司と紗耶香は、軽めに食べて帰宅した。

「悪いね、亜里沙ちゃん……息子もグズって先に帰らせて貰うわ………帰り送ってあげたいが航が居るからいいよな?」
「いえ、一緒に来て頂いただけでも有難かったので………予定変えさせてしまってすいません……もっとお話したかったです」
「あ、それなら連絡先交換しましょ?亜里沙さん」
「紗耶香さん………はい、是非」
「あ、私も~!」
「羽美さん、スマホスマホ!」

 亜里沙から見る辺り、羽美と紗耶香は仲が良い。
 航と裕司と付き合いが長いからかもしれないが、家族ぐるみで付き合いのある関係は、羨ましい限りだ。

「んじゃ、俺も~」
「裕司は許さん」
「は?何でだよ!航!」
「亜里沙には女友達だけで良し」
「…………え?いいじゃないですか……わた………あ………ごめんなさい、裕司さん……男性の番号は今ちょっと……」

 亜里沙は裕司の連絡先も交換しようと思ったが、万里紗の事が脳裏に過ぎる。

「いや、別に問題ねぇよ、紗耶香伝で出来るしな」
「いえ………そうじゃないんです……妹との事でちょっと………裕司さんに、妹が航さんの番号聞き出した、て聞いて……あの子にバレると迷惑掛けてしまいますから………」
「万里紗ちゃんの方から番号聞き出した?裕司が進んで教えたんじゃないのか?亜里沙」

 航は裕司が羽美の許可で航の連絡先を教えたと思っていた。亜里沙も父、太輔が聞き出したと思っていたのに、万里紗が暴露した事で警戒心を強めている。

「万里紗が、裕司さんや速水さん、あとホテルの支配人の人の連絡先も聞こうとしてた、て………」
「…………あぁ……そう……俺達既婚者だしな……俺も仕事以外の女の連絡先なんて、羽美と茉穂ちゃんぐらいしか入れてねぇ………他の女の連絡先なんてもう消した」

 裕司は、紗耶香が不安になる要因になる物は全て処分していた。

「俺も仕事以外の女の連絡先は羽美しか入れてないよ………だから、もし亜里沙さんの妹が連絡先を聞いて来ても教えないし教えられてもそんな番号は登録もしないね………何回来ても同じ様に言ってるから安心していいよ、亜里沙さん」

 律也も裕司と同じ意見だ。

「私が裕司さんにお兄ちゃんの連絡先を教えていい、て許可出したのは、亜里沙さんがお兄ちゃんに合ってると思ったからなんで……現にお兄ちゃん今日嬉しそうだし」
「う、羽美……」
「あ、あの………妹には気を付けて下さい……あの子……多分病気なんです………精神的の……」
「気を付けなきゃいけないのは航だけじゃね?」
「俺が女にヘマすると思うか?裕司じゃあるまいし」
「あ?過去ほじくり出してくんじゃねぇよ、航」
「亜里沙さん、何か困った事あったら連絡して下さいね、裕司はその辺り場数踏んでますから」
「紗耶香さん………ありがとうございます」
「そういう事………頭脳派の律也居るし、1人で溜め込まないようにな………ほんじゃ、紗耶香帰るか」
「うん………お邪魔しました」

 裕司家族は帰っていき、羽美夫婦も店が落ち着いたのもあり、帰宅しようとしていた。

「亜里沙さん、送ってこうか?」
「あ、そうね、足無いでしょう?」
「そんな申し訳ないので、タクシーでも呼んで帰ります」
「航、お前が送っていけ………今日飲んでないだろ」

 店の客から時々薦められる事もあるカウンターの中に常に居る、航や航の父。
 航はこの日、酒を断っていた。

「見てたか………」
「当たり前だ………もう後はやっておく……お前も上がれ」
「ラッキー………亜里沙、着替えて来るから待ってろ………ちょっと話もある」
「私もありますので待ってます」

 航が奥に引いたのを見計らい、羽美が亜里沙に話掛けた。

「亜里沙さん、お兄ちゃんをお願いしますね……お兄ちゃん照れ屋だからなかなか本音言わないけど、脈ありますから」
「っ!」
「亜里沙さんも満更ではないんだな………良かった良かった………これで航のシスコンは緩和出来る」
「律也さんたら……」

 羽美家族も帰宅した頃、航が着替えて店に出て来る。
 本当なら少しだけ食べて帰る予定だった亜里沙だが、料理を食べ終わるとまた出て来て食べるの繰り返し経験したのだ。コース料理と言うだけあり、全ての皿の一品一品に華があり、美味しくてお腹いっぱいでも残せなかった。

「お待たせ………送る」
「あ、はい………えっと会計は……」
「要らね」
「駄目ですよ、て言っても持ち合わせ足りるか怖いけど………」
「俺が出してるから要らないって言ってんの」
「亜里沙さん、またお待ちしてますね」
「航、家に送り届けるんだぞ」
「………親父……そんなんじゃねぇ!」

 何を父子で言い合っているのか、亜里沙も分かるが、敢えて聞き流す。

「甘えていいんですか?航さん」
「俺がその分禁煙すりゃいい………行くぞ亜里沙」
「………ごちそうさまでした。美味しかったです!」
「「ありがとうございました」」

 店の前にワンボックスカーが停めてある。

「ワンボックスだけど」
「バイクじゃなくて良かった………今日ズボンじゃないから」
「だから、車にしたんだろ?………ま、店の車で俺が乗る車これしかないからな……食材乗せる車だからちと匂うけど」
「充分ですよ………ありがとうございます、航さん」

 車に乗ると、カーナビを航が触る。

「家の住所教えてくれ」
「最寄り駅でいいですよ」
「この時間に、1人で夜道歩かせられるかよ……ほら、言え」
「…………近くでいいですからね?万里紗に見られない様にしたいんですから」
「……………了解……で?妹と仲悪いのか?」

 住所を伝え、家の直ぐ近くで下ろしてもらう様に頼む亜里沙。万里紗には航の店に行った事も、会っている事も知られたくないのだ。

 
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