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白河 裕司&紗耶香
しおりを挟む日曜。亜里沙は家に居たくないので、朝から家を出ていた。
お気に入りのカフェは、相変わらず混み合っている。
―――そういえば、店長さんが航さんの友達の弟さんだっけ……忙しそう……
本を持ち込み、スマートフォンを傍らに置いてカフェラテを飲む亜里沙に、優馬が気付き声を掛けた。
「今日は1人なんですね」
「お邪魔してます……飲み終わったら出ますので」
「ゆっくりしていっていいですよ?」
「忙しいじゃないですか、席待ちしてる人も居るし」
「此処に来る客は大抵、兄さんか航さん目当てなんで」
「…………裕司さんでしたっけ……既婚者なのに?」
「既婚者でも、兄はモテるんで………腹立つぐらいに」
「そんなにイケメンなんですか?」
「…………航さんと雰囲気似てますよ。硬派の航さん、軟派の兄………そして、俺は兄に似てるんで、3人揃うと三つ子みたいです」
「…………そんなに似てるんですか!」
そう、優馬と話ていると、カウンターから黄色い声が挙がる。
「あ、ほら噂をすれば………奥さん連れててコレですから………」
亜里沙がカウンターに目線を向けると、1組のカップルの男の方が子供を抱いている。
「ちょっと失礼しますね」
「あ、はい………」
優馬が裕司達の方へ歩いて行くと、亜里沙の方を向いて何やら話ている。
すると、女の方が子供を裕司から受け取り、亜里沙の方へ歩いて来た。
「こんにちは」
「こ、こんにちは……」
「航さんとお見合いされた方だとか」
「…………あ、はい……間野 亜里沙と言います」
「白河 紗耶香です……はじめまして。航さんの友人の裕司の妻です」
「お見合いでは、裕司さんにお世話になりました」
「…………本当に……裕司ときたら航さんの恋路に面白がって、亜里沙さんに迷惑掛けなかったですか?」
「…………う~ん……如何だったかし………あ!」
亜里沙は思い出す。裕司が万里紗に航の連絡を教えた事を。事の経緯を知りたかったのだ。
「?」
「裕司さんに聞きたかった事があったんです」
「裕司に?…………あ、来た……」
「お待ち」
「裕司、亜里沙さんが裕司に聞きたかった事あるんだって」
「亜里沙ちゃん、久しぶり~」
「こんにちは、裕司さん」
航や優馬から、イケメンだと言われている裕司に亜里沙はイケメンだから、と驚きもしない。
「で?何?」
「万里紗に航さんの連絡先を教えた経緯教えて下さい!」
「…………何だったかな……あぁ……確か、万里紗ちゃんが頻りに聞いてきたんだよな……俺の連絡先」
「「は?」」
これには、亜里沙だけでなく紗耶香も聞き直す。
「裕司、何で航さんのお見合い相手の妹さんが、裕司の連絡先聞いて来る訳?」
「俺のだけじゃねぇぞ?律也だろ?彬良の連絡先も聞いてきた」
「教えたの!?」
「教えるかよ……教えたのは航だけ」
「何で航さんのだけ教えたのよ!」
「亜里沙ちゃんの親父さんも居たし、親父さんが亜里沙ちゃんにも教える事を妹に条件出したから、それなら、とな………航には妹より亜里沙ちゃんの方が合ってると思ったし、羽美にも了解得た上だ」
「羽美さんも知ってるの?」
「当たり前だろ?羽美が一番、航を理解してんだから」
「…………確かに」
「シスコンなんでしたよね、航さん」
「シスコンですね」
紗耶香が亜里沙に答えると、裕司は付け加える。
「羽美はブラコン」
「裕司………今それ要る?」
「知っといた方が、傷抉らねぇじゃん」
「そうだけど……航さんが亜里沙さんと付き合うか如何かまだ分からないじゃない」
「知っといた方がいいんだって………それを後から知って、『こんな人だと思わなかった』で航がフラれんの何回見てきたか」
「…………流石、親友……よく分かってるわね」
「律也でさえ、未だに航に嫉妬するんだぞ?航の嫁さんになる娘は、芯が強くなきゃ絶対に無理だって知ったわ」
「それは大いに同感」
亜里沙は裕司と紗耶香の話を聞く事しか出来ない。沙也加は亜里沙より航の事を知っている。
―――そっか……航さんを理解するのには、この人達も知らないと、嫉妬する事になるのね……裕司さんの奥さんにもムカっと来るもの……
紗耶香が航を理解出来ている様に見えて、亜里沙は若干ムカムカしていた。
ゲーム攻略をしているかの如く、分析する亜里沙。
「あ、あの………私、まだ付き合うとか、付き合ってるとかじゃなくて……『好き』とも言われてないし、言ってもいないので……そのシスコン、ブラコンなのは、航さんからの言葉では知ってますが、この目で見てないので………すいません……話だけではイマイチ……でも、裕司さんが言う『芯の強さ』は、私あるかも……」
「うん、あるんじゃね?………航が興味持ってたし………亜里沙ちゃんに」
「っ!」
「お?………紗耶香!いい反応じゃね?」
「私に聞かない!………私は裕司しか知らないんだから……」
「あ、そっか………航と此処に来た事あるんだろ?」
裕司の反応を見る限り嬉しそうにしている。
それ程、航を心配しているのだと見て取れた。
「店長から聞いたんですか?」
「んにゃ、航が此処でお茶した、て俺に言った………で、航は亜里沙ちゃんが夢中になってるゲームの推しキャラに勝つ!て言ってたな」
「…………は?」
「で、何だったかな……その推しは俺と律也を足して2で割った様なキャラで……ドSで傲慢の俺様?」
「…………私……ドSな性格好きじゃないです」
「は?」
裕司は、不思議そうな顔をし、亜里沙を見て沙也加に向き、もう一度。
「は?」
「私に疑問符向けないでくれる?裕司」
と、亜里沙にも流石にも分からない行動を取った。
「…………私……俺様は辛うじてオーケーですが、傲慢も嫌いです……チャラけたタイプも………」
「はい、裕司は却下~」
「…………茉穂ちゃんに騙された~~!……いいけどよ……ならどんなタイプが好み?」
「思いやりがあって気遣いが出来て、家族を大切に出来る人……」
「「…………」」
裕司と紗耶香は押し黙っていた。
「あ、あの………何か?」
「…………亜里沙ちゃん!」
「は、はい!」
「頑張って下さい!亜里沙さん!」
「絶対に諦めんなよ!」
「…………は、はい……」
亜里沙を応援しているかの様に、裕司は満面の笑顔を亜里沙に見せていた。
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