お見合い、そちらから断ってください!【完結】

Lynx🐈‍⬛

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万里紗の嫉妬

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 亜里沙が家に帰ると、万里紗が離れに居た。

「万里紗?何してんの?」
「…………お姉ちゃん、何処に行ってたの?」
「………何処だっていいじゃん……会社の同僚と遊びに行っただけよ」

 亜里沙が部屋を見渡すと、物が散乱している室内が更に荒らされている。
 万里紗の仕業だと、亜里沙は分かったが、それを注意すればもっとヒステリックになるだろう。

「嘘」
「…………嘘吐いてる、て思う根拠は?」
「お姉ちゃんにしては珍しくズボン履いてる………デニムなんて持ってなかったじゃん」
「………あぁ、この前買ったんだよ……たまにはズボン履こうかな、て思って」
「似合わない!」
「アンタに似合う、似合わない、て言われたところで関係無いよね」
「…………電話したのに、何で出ないの?」
「電話?私に?………ごめん、気付かなかったよ……何だったの?それで怒って?」

 散らかる亜里沙の部屋で仁王立ちする亜里沙と万里紗。
 亜里沙は両手を広げてグルっと回った。

「お姉ちゃん………航さんに何て言ったの?」
「は?航さん?……何で航さんが出て来るのよ」
「………航さん、私が電話しても出ない」
「ふ~ん………そうなんだ………知らないわよ、そんな事聞いた事ないし、アンタが頻繁に航さんに電話してたのも知らないしね」
「お姉ちゃん、スマホ貸してよ」
「やだよ、また壊されたら困るし………アンタ払ってくれる訳?買い替え代………私が日々金欠だって知ってるよね」
「じゃあ、何でスマホ買い替えられたの?」
「お父さんが立替えてくれた………アンタが投げて壊したんだから、お父さんも私の故意じゃないって知ってるからでしょ………来月の給料で返さなきゃならないんだよ……分かったら、離から出てってくれる?片付けしたいし」

 亜里沙は万里紗に片付けろとは言わない。癇癪して亜里沙の物を散らかしたのだ。自分の物じゃないから分からない、で逃げるだけだ。頼んだ所で万里紗が亜里沙の私物も持って行かれても困る。
 仲が悪い訳でもないのに、万里紗のご機嫌を取らなければならないのも、亜里沙は嫌だから母屋ではなく離れに住んでいるのも理由の1つだった。

「貸してってば!」
「くっ!万里紗!止めなさい!」
「何で貸さないのよ!航さんに連絡ぐらいさせなさいよ!」
「アンタね………今日土曜なんだよ?飲食店を経営してんの、航さんは!料理人なんだよ!今から開店する、夜の飲食店でアンタ如きが電話して、航さんに迷惑掛けるんじゃない!」
「そんな事関係無い!私が電話すると出てくれてたもん!」
「…………で?………アンタのスマホから掛けても出てくれないんでしょ?その理由考えた?」
「お姉ちゃんが邪魔したからじゃない!」
「してないっての………」

 見合い前は、亜里沙も見合いも結婚も嫌だ、と言っていた。万里紗に丸投げ出来るなら、それでもいいと思っていた。だが、それは数日で覆されてはいるが、亜里沙はあの時に言った言葉は本心だった。
 万里紗が航に迷惑掛けていなければ、亜里沙だって万里紗を応援したかもしれない。応援したい気持ちもあったのだ。
 しかし、蓋を開けたら、万里紗は航に嫌悪されたと知らされ、亜里沙は何度となく航に謝ったか、万里紗は知ろうともしない。

「万里紗………悪いけど……航さんが万里紗の連絡を拒否してる理由をアンタが知らない限り、行動を改めない限りお姉ちゃんはアンタを応援しない」
「私は悪くないもん!お姉ちゃんが航さんに私を悪く言ったんでしょ!あれ程私に航さんを薦めたのに!」
「確かに薦めたよ………アンタが航さんに迷惑掛けててもね………でも、今は薦める気持ちはこれっぽっちも持ってない!後悔してるとしたら、アンタに譲ると思ってた私の気持ちよ!」

 離れに居るから、怒鳴り合っていても誰も駆け付けて来ない。
 そろそろ、誰か亜里沙と万里紗の間に割って入らないと、スマートフォンが壊れるだけでは済まないだろう。

 ―――幸枝さんでも来てくれたら……

 こういう時に限って来ない邪魔者達。しかし、邪魔者は違う所からやって来た。
 亜里沙のスマートフォンが鳴ったのだ。マナーモードになっていたが、航と別れた際にマナーモードを解除していたのだ。

 ♫•*¨*•.¸¸♪✧

「………出たらいいじゃん」
「アンタが部屋から出たら折電するよ」
「何で?」
「誰からの電話でも、邪魔しそうだから」
「…………分かってるじゃない」
「………ほら、切れちゃったじゃないの………確認するから、母屋に戻ってよ」
「お姉ちゃんがスマホ貸してくれたら戻る」
「…………アンタ、お父さんから航さんの連絡先聞いたんでしょ?メモ如何したのよ……家電から掛けたらいいじゃん」
「そんなの無いよ……家電からも航さんに繋がらないし……」

 万里紗は、家の電話かもしつこく掛けたと言うのか。だから繋がらない番号からは掛けれないから、亜里沙のスマートフォンを貸せと言う。

「…………は?」
「だって、私が航さんの連絡先を航さんの友達に聞いたんだから」
「…………お父さんが聞いたんじゃないの!」
「お父さんと一緒に居た時だから、お父さんが聞いたのと同じじゃん」

 裕司に連絡先を聞いたのが万里紗だったとは知らなかった。それなのに、太輔から聞いた亜里沙は何故、教えられたのか。

「じゃ、何でアンタ独り占めしなかった訳?」
「お父さんが、お姉ちゃんにも教えないと不公平だって言ったから、一緒に聞いたのよ………私は教える気無いの分かってたからじゃない?」
「…………お父さん………アンタねぇ!お父さん迄利用すんの止めなさいよ!アンタさえ、連絡先聞かなきゃ、私はこんなに生活一変する事なかったんだからね!」
「…………一変?………何?もっと干物女になるの?それとも干物女から脱却する気?………お姉ちゃんは干物女がお似合いなんだから、そのままで居なよ………お兄ちゃんが結婚しても、に縋って、お兄ちゃんのお嫁さんに煙たがられて、一生引き篭もってたら?」
「くっ!万里紗!」
「きゃっ!」

 神経を逆撫でする万里紗。それはいつも亜里沙に対してだけの行為。
 妹を大事にしてきたのに、万里紗は1ミリたり共、亜里沙には気持ちが返っては来ない。
 万里紗の頬をビンタし、万里紗を離れから追い出した亜里沙。その事が、また波乱を呼ぶのは分かってはいたが、万里紗の本心が見えて、もう亜里沙は万里紗を庇う事を止める事に決めた。
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