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波乱の幕開け
しおりを挟む夕方になり、父は那由多が着くという産婦人科のある最寄り駅迄迎えに行った。
「父さん、京は?」
「迎えに行く時間はまだ少し先だ。」
「…………そう……京は、俺には全く説明しなかったけど、康太と同意じゃなかった、て事なのか?」
「…………騙された、て言ってた……お前と会った時、手渡されたコンドームに細工されてたらしい。康太君がその後、京を拘束し無理矢理、コンドームも着けずに………。」
「こ、拘束………?」
吐き気がする……と、口を押さえて俯く那由多。
那由多は京にそんな事はしなかった。
京が求めて来ない時はシなかったし、大事に抱いた。
3人でSEXした事もあるが、それも康太に奪われない為だけにした行為。
「今迄も何度かあったそうだ……大学1年の時から………動画や写真も撮られて脅されての関係だったらしい。那由多にバラす、と言われたら、関係に後ろめたいと思う京なら、従うしか無かったろう………今日の手術だって、警察に被害届を、と病院にも言われたが、同意だった時期もあったんだ………被害届なんて出して京の精神状態も持つかどうか………。」
「精神状態悪いのか?今。」
「………2、3日前だったか、友達から連絡があって返信したら、康太君がその友達ので電話してきたらしい。その直後、過呼吸のような症状が出てな………。だから携帯電話の番号も返させた。」
「…………あ、だから俺が連絡しても出なかったのか。」
病院の駐車場に入り、父は停車させる。
「ナーバスになっている時期に、今余計な事は流石にな………お前も聞かなかった事にしておいてやれ。父さんにも言いにくい事を話してくれたんだ……お前には知られたくはないだろう。」
「康太をフルボッコしてぇ……。」
「………気持ちは分かる。父さんも同じだ。だが、暴力はいかん。」
「………分かってるよ。」
受付で一声掛けた父と、その後ろに控える様に佇む那由多。
(…………京だって歪な関係でなく子供出来たら、嬉しそうにしてたんだろうな……。)
「………那由多、お前はここで待ってろ。」
「何?俺は入れないの?」
「今、京が居る病室は狭いんだそうだ。」
「分かった、待ってるよ。」
「…………あの方もご家族ですか?」
「えぇ、あの子の兄です。」
「そうですか。」
病室に案内された父は、横になっている京に声を掛けた。
「京………。」
「………お父さん。」
泣き腫らした目をした京。
良心の呵責に苛まれていたのだろう。
望まない妊娠だが、精神的には負担が掛かる。
「お前の責任じゃない……気に病むな。」
「………うん……。」
会計を済ますと、待合室に居る那由多を見つけた京。
「……………な……お兄ちゃん……。」
「……京、お疲れ。」
お兄ちゃんと呼ばなければならない場所だと気付き、京は那由多と呼べなかった。
兄妹感でも名前呼びをする家族は居るが、京と那由多は兄妹とは思えない為、細心の注意を払ってきたのだ。
「那由多、お前運転しろ。免許取ったろ?」
「…………あぁ、父さん鍵くれ。」
勘ぐられたくない、京と那由多の雰囲気を察知した父は、家族を見せる。
那由多もそれが分かっていた。
今迄、そうして京と那由多は隠してきたのかと思うと、父もまた心苦しく思ったのだった。
「今日は家に帰ろう。マンションじゃなくな。多分母さんも帰って来る筈だ。京はこっちに来てる、と連絡しておいたから。」
「…………えっ!」
「京も那由多も母さんから逃げるな………その為に父さんも腹を括ってる。」
「腹を括って、て………父さん?」
「母さんが帰って来たら話す。」
病院から車で20分程で、実家に着いた京達。
既に家の電気が付いているのに気が付いた。
「…………お母さん……居るの……かな。」
「居るな、帰って来てる。」
玄関のドアを開けた父。
すると奥からバタバタと足音が聞こえる中、京は玄関にある靴を見つける。
「こ、康太も居る!」
京は、那由多の後ろに隠れ、那由多は京を庇う様に京を隠した。
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