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母の変化
しおりを挟む京は、那由多との関係、康太が京にしてきた事、全て父に打ち明ける。
勿論、妊娠した事も告げた。
父は聞いた言葉を重く受け止めている。
「…………京、その子が那由多の子か康太君の子か分からない状態じゃ、お父さんは中絶を薦める。那由多はお前の兄なんだから…………何故……早く康太君から逃げ出さなかった!那由多に助けを求めなかった!」
「…………お母さんと康太が不定期で連絡取り合ってて、私が康太の携帯に出ないとまた何を言うか分かってたから………。」
「………何て?」
「『那由多と会うな』『康太との子供を作れ』…………お母さんは、な……お兄ちゃんと私の関係を引き裂く為なら何だってしそうだったから、就職する迄は言う事を聞いておこうと思ってた………卒業したら康太のマンション出て、独り暮らししようとお金貯めてたし………お兄ちゃんのマンションに行ったら、またお母さん干渉してくるでしょ?多分。」
「…………卒業迄の強硬手段に出られたみたいだな………京、卒業迄の単位は?取れたのか?」
「…………うん、それはもう終わってる。」
「中絶費用はお父さんが出してやる、卒業迄こっちに居なさい。その間に中絶するんだ。お父さんは康太君の子供だとしても、許さん。」
「……………お父さん………。」
母に言えば、冷静な判断は返って来ないと思っていた京は、父に言って正解だったと安堵した。
「那由多にもコレは言うぞ?京。」
「な、何で!!」
「……………当事者だろう、那由多も……兄妹じゃなきゃ…………お父さんもどれだけ願ったか………那由多も康太君との付き合いを止めさせる時期に丁度いい。京が居るから、こうなったとしか思えん。大丈夫だ、那由多にはお父さんから話してやる。そろそろ家に行くぞ。那由多ももう家に着いた頃だろう。」
父の言葉に、京も思っていた通りの事に納得するし、言われてスッキリする。
原因は京自身の存在なのだ。
2人の前から居なくなるのが一番良いのが分かっている。
だが、京の心は常に那由多を求めているのだ。
いつまでもその気持ちに縋ってしまう番いだと、京は地元に帰ると強く思う。
家の近くには妻神社がある。
還ってきたと思うのだ。
車に再度乗り込み、懐かしい実家の外観を見つめる。
ガーデニングが好きだった母が手入れをしていた庭は荒れていた。
「庭が荒れてる………。」
「…………お父さんが帰って来なかったからな。見せたかったんだよ、お母さんは良き妻良き母を。」
「………如何して、お父さん出てったの?」
「それは後から話す。先ずは京の事を那由多に話してからだ。」
家の中も掃除が行き届いておらず、入ると那由多が掃除機を掛けていた。
「父さん、何だよこれ!母さん何もしてないみたいだ。」
「…………那由多、悪いな帰宅早々、掃除させて………リビングだけ取り敢えず綺麗になったらそれでいい。京は暫く自分の部屋に居てくれ。京の部屋は綺麗にしてある筈だ。」
「…………ほ、ホントかなぁ……。」
京は自分が使っていた部屋のドアを開ける。
「え!?…………ここだけ綺麗………。」
不思議に思い、隣の那由多の部屋を開けると、仰天する。
那由多が使っていた机やベッドは使い物にならない程壊れ、壁紙は切り刻まれている。
昔の面影等まるで無い。
「お、お母さん……………。」
父はこの事を知っているのだろうか………。
だが、父は那由多に京の事を話している。
行くに行けなくて、京は那由多の部屋を片付ける事にしたのだった。
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