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妊娠………そして……
しおりを挟むあれから約1ヶ月後、京の生理は止まる。
那由多、康太のどちらかの子を妊娠したのだ、と……。
アフターピルは持っていなかった京ではあったが、持っていても飲用可能時間が過ぎる迄、執拗に康太に注がれた後、ベッドに拘束された京。
「お願い…………康太………アフターピルなんて持って無い………シャワー浴びるぐらいさせて………ネトネトで気持ち悪いの……。」
下半身は拭き取られてはいたが、時折膣から溢れる白濁で気持ち悪く感じた京は、監視する康太に何度も懇願する。
「飲用可能時間過ぎたらな。」
と言われ、自由がその日はなかった。
そして、生理は翌月来なかったのだ。
(…………やだ………妊娠したかも………。)
薬局に行き、直ぐに確認した京は、目の前が真っ黒になった。
陽性反応………妊娠………。
病院で確かめる必要はあるが、行くのが怖かった。
那由多や康太に知られたくないのだ。
しかし、それは無駄に終わる。
悪阻が始まり、康太に知られた京。
「…………もしもし、お母さんですか?康太です。すいません、電話でお話する事ではないんですが、お話したい事がありまして………。」
康太は、京が側に居ない時に、京の母に妊娠した可能性を話してしまった。
母は相手が那由多でないのなら、と複雑さを滲ませながら喜んだ、と京は康太から聞かされ、産婦人科に連れて行かれた。
「おめでとうございます。妊娠していますね。」
「……………。」
医者からの言葉に康太が喜び、京は表情が暗くなる。
京は、付き添いに着いてきた康太の前で、医者に聞く。
「………私、中絶したいんです!」
「…………え?何言ってるんだよ、京。」
「………その辺りはナイーブな話になりますから、お二人でよく話あって下さい。未婚だから、とかを心配されてるなら、そういうカップルは珍しい事じゃありませんし、ね。では、中待合でお待ち下さい、看護師から今後の説明がありますから後程お呼びします。」
「………はい、行こう、京。」
「…………。」
康太は京の肩を抱き、診察室から中待合室に連れて行く。
「…………私、産まないから。」
「産んでもらうから。」
これでは埒が開かない押し問答が中待合室に響く。
中待合室には那由多と京だけではない。
数人の妊婦やカップルも居るが、京の言葉に彼等は振り向いた。
ヒソヒソ声の静かな中待合室の話題が京の話になるのは仕方なかった。
(若そうだしなぁ……。)
(…………男の方が、産むな、は分かるけど……。)
そんな声が京の耳に届くと、京は耳を手で塞いだ。
(子供………私だって産んであげたいよ!那由多の子だったら?………康太の子だったら、もっと嫌!!)
「お待たせしました。」
看護師が、京に声を掛ける。
「入室は女性だけなので、男性はここでお待ち下さいね。」
京が看護師に連れられ、室内に再び入っていった。
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