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親公認
しおりを挟む京が康太のマンションに住むようになって一週間後の週末、那由多と京の両親が、康太のマンションにやってきた。
「すいません、那由多んとこと違って狭いですけど、大学へは徒歩で行けるんで、楽なんですよ、ココ。」
「電車通学よりいいじゃない、ねぇお父さん。」
「確かにな…………だが、同棲はなぁ……。京、学生寮に入ったらどうだ?」
明らかに不機嫌そうな京は、康太や両親の聞く耳を持たないようで、無視を続ける。
「あの、俺は京さんと出来れば付き合っていきたいので、俺はここに居てもらいたいと思ってます!那由多には一切近づかせませんから!お父さん、お母さん、京さんと交際させて下さい!」
康太は両親に頭を下げる。
(私の気持ちは一切無視して、やめてよね。)
「私は賛成よ、那由多と別れさせれて、京が幸せになるなら。」
「………まぁ、それが第一条件だしな。…………最悪の事態になる前に別れてくれるなら一安心だしな。」
「あ、あの………最悪の事態、て……。」
両親は向かい合い、父が口を開く。
「地元にね、縁結びの神社があるんだが、その神社に祀られているのが兄妹なんだ。その兄妹は惹かれ合い心中した、と言い伝えがあってね、ウチは代々その神社の宮司をやってきたんだよ。俺は宮司ではないけどね。」
「だから、那由多が京を見る目が心配だったの。どうか勘違いであって欲しい、と思ってたら………。京も那由多に、て………。」
母は涙ぐむ。
康太は京を見るが、聞き飽きた内容なのだろうか、苛々し始めた様子だった。
「放っといてくれてもいいじゃない、実家には戻らないし、お父さんとお母さんに迷惑掛けないわ。那由多と一緒に居たって、別に結婚したいとも子供が欲しいとも言ってないんだし。」
「京!!それは絶対に許しません!駄目よ!」
「何でよ!迷惑掛けてないじゃない!!」
「………京、確かに迷惑は掛けない。だが、心配は掛けてるとは思わないのか?…………お母さんから聞いたぞ?那由多との事を知っているのに、康太君から付き合って欲しい、て言われているんだろ?お前達の恋愛は、シスコン、ブラコンの延長線だ。他の男へ目を向けなさい。」
「……………ならないよ。康太にも縋りたい、て思ってた時期もあったけど、心は那由多だもん。」
「……………。」
暫く沈黙が流れる。
両親の説得も応じるつもりもない京。
「…………康太君。」
沈黙を破ったのは父だった。
「はい。」
「こんな事をお願いするにはおこがましいんだが、君が京を好きでいるなら、諦めないで欲しい。那由多から京を守ってくれ。」
父は康太に頭を下げるのを見た母も頭を下げた。
母のそれは、父と同意見と見ていい。
「勿論です。任せて下さい。」
康太も両親に頭を下げたのだった。
両親はこの後、那由多に会いに行くといい、泊まってから帰るつもりらしい。
両親は京も心配だが、那由多への心配もしているのは親として当然だった。
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