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康太の意図
しおりを挟む康太がやって来た。
出迎えたのは那由多だった。
「よぉ、久しぶり、那由多。」
「康太………頼む、京と俺の事は触れないでくれ、今日は。」
「いいぜ、でも京居るだろ?今。」
(京?呼び捨て?…………なんで………?)
「あ、そうだ、ビール差し入れ、飲むだろ?」
「…………あ、あぁ、ありがとう。」
「お邪魔しま~す。」
康太が部屋の奥に入ろうとすると、京が廊下に出て来た。
すると、京は康太を睨む。
「よ、京。」
「……………こんばんわ。」
「…………。」
「!?」
リビングに入っていく康太は京の頭を撫でて行く。
その後ろ姿を那由多は嫉妬心に狩り立たせた。
「………京、何だ?何故康太と………何かあるのか?」
「……何もないよ。気にする事は何もない。」
京は慌てた様子でキッチンに戻って行った。
(…………何かある。)
那由多はそう思わずにいられなかった。
暫く考えていると、直ぐにリビングは賑やかになる。
「あら、そんな事ないわよ、若く見えるだなんて、やだわ康太君。」
「那由多と並んでも親子には見えません、て。」
「やだ、口上手いわね。」
「社交辞令でしょ………。」
母が、康太の言葉を真に受けそうだったので、京が突っ込んだ。
「京だって、一緒に並んだら姉妹だぞ?」
「………ねぇ、京と康太君、て付き合ってるの?」
「え?………ま、まさか。」
京は焦る。
康太には那由多と京が付き合っている、という図式を植え付けている体で、来ていると思っていたのに、康太は那由多と京は兄妹といつ体で話をしている。
那由多にバレてもいいと思っているのか……。
「俺は付き合いたい、てアプローチしてるんですけどねぇ。」
ガチャ。
「康太、ちょっといいか?話がしたい。」
「何だよ、那由多。ここで話してもいいぞ?」
那由多が不味い会話になりそうな雰囲気だった為に邪魔をした。
「いや、2人で話したい。………ごめん母さん、やっぱりちょっと外に行くよ。」
「那由多?話は後にしなさい。作っちゃったし、康太君ももう食べてくれてるから。」
「…………分かった。」
暗い顔した那由多は、そういうと黙々と食事をする。
話するのは、母と康太ばかりで、京も話を避け黙々と食事をするのだった。
那由多はビールを取りに冷蔵庫へ。
「那由多、康太君の分も持ってきて。」
母は康太を気に入ったようで、ずっと話をしていた。
大学の事が中心だったが、那由多との出会い等も聞いてきていた。
「はいよ、康太。」
「サンキュ、那由多。」
「那由多も少し話したら?久々なんでしょ?康太君と。」
「母さんが康太と喋ってるから、俺が入る隙が無いんじゃないか。」
「お母さんが喋りすぎ、て言うの?」
「そうだろ?」
「………………ごちそうさま。」
京はこの雰囲気がいたたまれないのか、自分が食べた食器を片付け始めた。
しかし、康太が何を母や那由多に吹き込むか、分からない為リビングから離れられない。
(早く帰ってほしい……。)
京はずっと思っていた。
食器を片付けた後、お茶を母に淹れる京。
「………飲み過ぎじゃない?明日同窓会でも飲むんでしょ?」
「ありがとう、京。」
「京は家庭的だな。」
母にお茶を淹れる所作を見ただけではなく、料理の出来や、手際よく片付けるのを康太は見ていた。
「康太君、何なら貰ってくれる?京を。」
「母さん!!」
「良いんですか?やった!!」
「……………何を言い出すの?」
「…………。」
母は那由多と京を見比べ、お茶を一口飲んだ。
「………そろそろ別々に住んだら?あんた達。」
「母さん!!」
「…………。」
「知らないと思ってるの?那由多、京。」
「!!!」
「今日、来て確信を持ったわ。………康太君、知ってた?この子達の関係の事。」
「知ってましたよ、那由多は京を彼女、て紹介してきましたし。兄妹なのも知ってますし。」
「…………やっぱり康太、知ってたのか。」
那由多と京は青ざめている。
康太はその青ざめた京を見て言い放つ。
「俺、本気なんだよね、京の事。京を見てたら、那由多と兄妹なんじゃないか、て直ぐに分かった。………那由多、京がかわいそうと思わないのか?」
「…………分かってるさ。結婚も子供も諦めさせるのも………覚悟を決めたんだ、俺達。」
「………覚悟?何だよ、その覚悟、て………京は覚悟なんて無いぞ?覚悟を決めた人間が、その事で泣くのかよ。……泣いてる京を俺は見てるぞ?お前は見てきてるのかよ!」
「……………てよ………。」
那由多と康太が喧嘩を始めそうだったので、京が間に入る。
「止めてよ!!…………そもそも、康太が来る、て言わなかったらこんな事にならなかったんじゃない!那由多がもっと早く教えてくれたら良かったんじゃない!…………お母さん!!私、那由多と別れないから!!結婚もしないし、子供も要らない!!もう家には帰らない!!」
「……………京………那由多………あなた達、妻神社の二の舞いになるつもりなの?」
「………さいのかみじゃ?」
康太には分からない、妻神社の事は……。
「……………母さん、俺子供の頃、妻神社に祀られてる2人の夢を見た………。前世がこの世にあるのかはわからないけど、あるんだったら俺は祀られてる1人なんじゃないか、て思ってる。………俺だって、京以外の女と関係持った事あるよ………でも駄目なんだ、京じゃなきゃ………。」
パシンッ!!
母が、那由多を平手打ちする。
「…………二の舞いなんて、絶対にさせてなるものですか!!現代とその時代とは違うのよ!!いいわね!直ぐにこのマンションを引き払って別々に住みなさい!!那由多!!もう帰って来なくてよろしい!!京!!大学は中退して帰るのよ!!」
「…………大学は辞めないよ、私。………別々に住めば良いんなら、東京に居てもいいじゃない。地元には帰らないわ。」
「………許しません。……今日明日と言うのは無理だろうから、一週間の内に京は休校届けを出しなさい。来週また迎えにくるから、連れて帰ります。」
「待って下さい、なら俺ん家に京を泊める、てのはどうですか?俺の家は大学に近いですし、俺の監視下で那由多見張ればいいですよね?そして、あわよくば京が俺を好きになってくれたら、必然的に別れるじゃないですか。何なら、俺の家に同居するのも期限付けて貰って良いです。落ち着いたら京の住む所決めてもいいですから。」
母は暫く考える。
「分かったわ…………京、康太君の所にご厄介になりなさい。なるべく早くお母さんも新しいマンション探しておくから、ここの荷物まとめておくように。」
「お、お母さん!!」
「那由多…………。」
母の目には涙が溢れている。
「…………どうして………。」
母が2人を疑っていたのは知っていた。
時々、東京に来てはチェックされているのも見ては帰っていく母に、贖罪の念はあった那由多と京。
母の泣いている顔は、後悔と自責の顔だった。
それ以上、もう言えず肩を落とす。
「………お母さん、お風呂入らせて貰って直ぐ寝るわね…………。康太君、申し訳無かったわね。京、片付けしたら貴女も寝なさい。自分の部屋で寝なさいよ。」
母はそのままリビングを後にした。
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