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団らん
しおりを挟む「ただいま~。」
その夜、那由多はいつもの時間に帰宅する。
キッチンで食事を作っていた京は手が離せないのか、キッチンから那由多に声を掛けた。
「おかえり~。」
「いいニオイだな。今日はカレー?」
「うん、焼き野菜カレー。」
「肉くれよ、肉。」
「野菜食べろよ、野菜。」
「え~~…………。」
「冗談よ、ロースカツあるから乗せるつもり。」
「お、いいねぇ。」
昼に、康太がカツカレーを食べてて、京も食べたくなった事は那由多には言えない。
「今日、何で飲み会無くなったの?」
「先輩のミスで、その修正に追われるから残業するメンバーが多いんで、無しになった。俺は関わってない案件だったから帰らされた、て話。手伝う、とは言ったんだけどな。」
「新入社員なら、勉強がてら残れ、じゃないんだ。」
「まぁ、残業はなるべくするな、て会社だしな。だけど、仕事はちょっと持って帰ってきたけど………コンペに参加してみるか、て言われてやる事にしたし。」
忙しくなりそうな感じの那由多を、邪魔をする訳にはいかないと思った京。
「じゃあ、明日も家でコンペの事するの?」
「………そのつもりだけど、何かある?明日。」
「ううん、邪魔しちゃ駄目だよなぁ、て思ったから、図書館でレポートしようかな、て思っただけ。」
京は図書館ではなく、康太に会うつもりだ。
「邪魔にはならんぞ?邪魔にする訳ないじゃないか、俺が。」
「だね。…………でも、買い物もあるし、少し外出しようかな………。」
「買い物あるなら付き合うぞ?」
「え?時間惜しいでしょ?そんな量無いし、図書館行った帰りに寄るから付き合わなくて大丈夫よ。」
コンペ準備の邪魔には思わないだろうと京も知っている。
那由多は決して京を邪魔扱いはしない。
家でレポートをしていても、大した問題も無いだろう。
「お昼ご飯食べてから、私出掛けるよ。夕方迄には帰れば大丈夫でしょ?」
「そうだな。京もレポート頑張れよ。」
食事も終わり、那由多はバスルームに入って行った。
キッチンで片付けしつつ、康太にラ○ンを入れた京。
「明日昼から夕方迄なら時間取れる。」
短的なメッセージしか、康太には入れない。
思わせぶりなメッセージは不要だと思っている。
♫♫♫
「マンションで待ってる。」
康太から即時の返信。
身体の付き合いが始まり、明らかに康太との相性がいい、と感じている京は、康太を突き放せなかった。
那由多との身体の相性も悪い訳ではない。
「京、お前も風呂入れよ~。」
タオルを頭から被り、バスルームから出て来た那由多。
「うん、入る。」
那由多はそのまま冷蔵庫を開けてビールを出した。
キッチンに京のスマホが置いたままだったのに、那由多は気付く。
「濡れるだろ、こんな所に置いといて。」
「あ、スマホ忘れた。」
せめて、別の場所に置いておいてやろうと、那由多が持ち上げた所に、京がキッチンに戻ってきた。
「濡れるぞ、ここに置いとくなよ。」
「うん、ごめん。ありがとう。」
(見なかった、よね?)
疑ってしまう京だが、直ぐに打消す。
「ねぇ、那由多。」
「何だ?」
「私達…………。」
「ん?」
「…………やっぱり、後で話す。」
「………あぁ。」
京はバスルームに勇み足で入っていった。
それを見送る那由多は何となく予感はする。
このままでいいのか?と。
那由多の覚悟は凄まじい。
既に妹だと思っていない京とは、将来が無いのも覚悟の上だ。
そうでなければ、手に入れてない。
京が産まれて20年、那由多が京に恋心を募らせ実らす迄、那由多はどれだけ悩んできたか京は知らない。
離した方がいいに決まってるのに、那由多は駄目だった。
那由多は、京と離れて暮らした2年間、他の女とも関係を持った事もある。
付き合っても長く続く事はなかった。
京と2年間会わなかった訳ではないが、京に知られないようにしていたのだ。
勿論、智香との件も京はまだ知らない。
那由多は、京を誰にも渡さないつもりでいる。
これから、京が何を言おうとしても那由多は動じないと決めたのだった。
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