番い【つがい】さがし※完結※

騙された京

　S駅の西口は人でごった返していた。
　その中で人を探すのは、田舎暮らしの長い京は慣れなかった。
　キョロキョロしていると、康太や理以外の男からもナンパされる事もある京は、康太に連絡を入れる。
　電話をしていれば、ナンパの牽制も多少出来るからだ。

「京ですけど、どの辺りに居ますか？」

　キョロキョロ見回すと、手を大きく降る康太の姿。

「京ちゃ～ん！」
「あっ！居た。」

　待ち合わせ相手が男だと知るやいなや、京の周りのナンパ男達は散り散りになった。

「相変わらずモテるねぇ、京ちゃん。」
「好きでナンパされてる訳じゃないです。」
「那由多も大変じゃない？心配し過ぎて。」

　康太と理は、京の心配をするが、社交辞令なものだと、京は思っていた。

「基本的に外出する時は、時間が合えば那由多と2人で出るので。」
「一緒に住んでるの？」
「はい、一緒に住んでますよ。」
「よく、両親も許可したね。」
「…………付き合い長いから。」
(兄妹なんて言えないし。)
「立ち話もなんだし、店入ろうぜ。」
「そうだな。行こうか、京ちゃん。」

　S駅の近くの居酒屋に入り、注文をしていく康太と理。
　4人がけの席に座り、飲み物も素早く出された。
　京はまだ未成熟の為、ウーロン茶にしたが、康太と理はビールを飲んでいる。

「那由多、家ではビール飲まないんだけど、康太さん達と食事する時は、お酒飲んでますよね？」
「那由多？飲むね～、あいつ割りと強いなぁ。あんま飲まないけど、俺んちで飲んだ時は流石に潰れた事もあったよ。」
「カテキョ、何時に終わるんだ、て？」
「19時には終わるんじゃないか？智香もその時間辺りに来る、て言ってたな。」
「智香さんも来るんですか？席足りないですよ？」

　5人になるなら、4人掛けの席では座れない。

「大丈夫大丈夫、何とかなるから。入れないなら店変えれば良いんだし。」
「そっか。………あ、このお通し美味しい。家でも作ってみよ、と。」
「京ちゃん、料理するの？」
「しますよ、那由多全く出来ないから。その分料理以外の家事はやってくれたりしてますけど。」

　何気なく、他愛のない会話を続けていた3人。
　男2人は酔が回っているように見える。
　しかし、京も何故か店内の酒の匂いに酔ったのか、頭がぼ～っとしていた。
　その頃には19時になっていたのだが、那由多は来ない。

　♫♫♫

「…………あ、智香だ…………別の店に行く、てよ。那由多と2人きりにさせてくれ、と。」
「何だよ、結局こうなるんじゃないか。」
「どうする？まだ飲むか？京ちゃん、どうする？那由多来ない、て。…………京ちゃ～ん。」
「酔っ払ったのか？飲んでないだろ？」

　康太が、京に那由多が来ない事を言うが、京の耳には届いてない様子。
　酒は飲んでないようだったが………、と理は思っていた。
　しかし、理が化粧室へ行くのに席を立った時を見計らい、康太が隙を見て、京の飲み物に、睡眠効果のある粉を入れたのだ。

「仕方ない、京ちゃんを送り届けるか。那由多の家に以前行った事あるし、一緒に住んでるならそこだろ。」
「そうだな、那由多に連絡入れるか。」
「連絡するまでもないだろ、相手は智香だ、早々に帰ってくるんじゃないか？」
「………智香と2人っきりにはなりたがらないからな、那由多は。」
「理、タクシー呼んでくれよ。流石に歩かせるのもな、俺会計しとくから。」
「分かった。」

　理が、騒がしい店内を出て、タクシーを呼び出しに行ったのを確認した康太は、

「手に入れれる、やっと。………智香も上手くやれよ？」