番い【つがい】さがし※完結※

大学へ

　那由多は理工学部、京は薬学部の同じ大学に通う。
　学部が違う為、学内で会える事も少ない。
　
「朝比奈さん、サークルとか入らない？」

　講義と講義の間の教室移動でさえも、男女問わず、京は話掛けられる。

「中学高校と、テニス部だったから運動系なら、とは思うけどまだこっちの生活に慣れてないから今の所考えてないの、ごめんなさい。」
「朝比奈さんが入ってくれると嬉しいなぁ……。」
「………彼氏が理工学部に居るから、聞いてから決めたいな。彼氏が入ってるサークルに入って、て言われるかもだし。」
「朝比奈さん、やっぱり彼氏居るのかぁ……。」
「次の教室行かなきゃ、また今度ね。」

　毎日のようにこんな会話をしている京。
　スマホを取り出し、講義が3限からだという那由多に連絡をする。
　起こしてくれ、と言われたのだ。

「那由多？起きた？」
『………う～ん、起きた…………眠い……。』
「起きてよ？間に合わなくなっちゃうよ？」
『………あぁ……京………抱きてぇ………。』
「……………早よ起きろ！」

　通話を切り、次の教室の席に座る京。
　ざわざわと京が姿を現すと、座った席を中心に囲うように座る男達。
　どの講義を受講しても、そうなる京。

「おはよ、朝比奈さん。今日も可愛いね。」
「………おはよう………ありがとう。」
「今日、飲みに行かない？あ、朝比奈さんまだ未成年か。飯食いに行かない？」
「抜け駆けすんなよ！俺とどう？ランチなんか。奢るし！」
「何だよ！お前も邪魔すんなよ！」
「…………うるさいから、他の席に行かせて貰うわ。」

　席を立ち、始業開始迄席を決めない京。
　毎日、毎回こうなのだ。

「そんな所に立ってないで、座ったら？」
「………小堺さん！………良かった、一緒だったんだ。」
「もしかしてまた男達の誘いで？」
「しつこくて嫌になっちゃう。」
「モテる子、て辛いわね。」

　彼女は、よく講義が一緒になる小堺 桜。
　しつこい男達に困っていた京を桜が助け舟を出してくれた事があり、それからちょくちょく話す相手だった。

「断っても毎回だから疲れちゃうよ、これだけで。」

　2人で居ても、話掛けられたりもするのだが、たいていは桜があしらってくれた。

「次はどの講義？」
「次は無いよ、私。」
「私も無いから、お茶でもしない？」
「あ、したいしたい！」

　会話も弾むから、桜が虫除けになってくれてもいたのだ。

「朝比奈さん、高校でもモテたでしょ？」
「………そうでもないよ？彼氏居るし。学校は違ってたけど、よく近くに迎えに来てくれてたから、男子達は諦めてくれてた。」
「でも今は違うでしょ？」
「う～ん、学部違うのが難点かなぁ……。理工学部の3年なの。」
「え？この大学なの？」
「うん、高校だけ別。」
「じゃあ、見せびらかしちゃえば、諦めてくれるんじゃない？」
「結構、一緒に居るんだけどねぇ……今日は3限から来るから大学で会えるか分かんないけど。」
「どんな人？」
「優しいかなぁ……勉強出来て、運動も得意だったけど、料理は下手くそ。」

　わちゃわちゃ話に夢中で、男達は会話に入れないように、桜は気を使ってくれるので、京は桜と仲良くなれそうな気がした。