5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

母1人、父7人、祖父1人、祖母5人

　大広間だろうか、アルメリア夫人とフェルドマン執事に連れて来られた部屋の奥に、沢山の人が居る。玉座には初老の男性と、40代手前だろうか、メリッサに似た女性、その2人を囲うように30代から50代ぐらいの男性5人が玉座の女性に寄り、60代ぐらいの女性が2人寄って立っている。

「メリベル女王陛下、アドルフ殿下………メリッサ王女殿下をお連れ致しました。」
「……………メリッサ………あぁ、メリッサ……我が娘！！」
「………！」

　玉座から立ち上がり、女王は駆け寄って来る。その姿は夜着？と思えそうな風貌で、メリッサに無いナイスバディな美女が、メリッサに抱き着いた。胸に押しつぶされそうになり、呻き声が出る。

「陛下！……陛下！！メリッサ様が苦しそうです！！それに、旦那様方もメリベル陛下を羨ましそうに見てますよ！」
「あとアドルフ殿下方も……」
「あ、ああ………すまなかったね、メリッサ………長い間、母と離れ離れにしてすまなかった……」
「…………い、いえ……」

　羨ましい胸だな、とメリッサの目はメリベルを見たのは一瞬で、何故メリベルの旦那様があんなに居るのかが分からない。メリッサが知る夫婦とは、一夫一妻制ではないだろうか？

「ご紹介致します、メリッサ様。母君のメリベル女王陛下と女王陛下の旦那様であり、メリッサ様のお父様7名の内の5名が、こちらにお越しです。そして、玉座にお座りなのが、前国王アドルフ殿下でメリベル女王陛下のお父上とお母上方で、メリッサ様のお祖父様とお祖母様方でお祖母様方も5名居られます」
「………………」
「メリッサ様！！」
「………仕方ないなぁ……メリベルもこうだったか？」
「そうですね、父上」

　何？何？何？クラクラしますけど！と発狂したくても、理解不能で倒れそうなメリッサ。この家族構成は何なのだろう、理解出来る時は来るのだろうか、と意識を失った。5日の馬車旅の疲れもある。だが、それ以上の疲れがのしかかったメリッサ。次に目を覚したのは翌日の朝だった。

　　　　　　　　　　　♤♢♧♡　

「メリッサ様、本日よりメリッサ様の教育を致します」
「……………やだ……街に帰る」
「なりません」
「こんな所に居たら、私幸せにならない気がする」
「なりません！」
「帰して！！」
「メリッサ様！！」

　朝からアルメリア夫人と揉めているメリッサ。アルメリア夫人もメリッサが話を聞こうとしないので、指揮棒をペシペシと手の平に叩いている。

「ほぉ………メリベルそっくりだね」
「だろう？可愛いだろう？」
「誰が父親か分からないが可愛いね、メリベル……俺達が結婚した時ぐらいの面影があの子にあるよ」
「………………何ですか！陛下！グレイ様！！」
　
　部屋の片隅で、メリッサを眺めている声の方を見たら、メリベルが男と抱き合いながら話している。昨日の中には居なかった男だ。

「グレイが、まだメリッサに会ってないからな………面影見たらグレイとの子だろうな、と会わせようとな……」
「あぁ………本当だ、鼻筋は俺だねぇ」
「だろう？」
「ああ、嬉しいね……第一王女の父親なんて………メリベルの夫になれた喜びが、益々膨れ上がったよ」
「……………」
「陛下、グレイ様……お願いですから、今からメリッサ様の出生の説明致しますから、出て行って下さい！！」
「…………分かった………行こう………グレイ……」

　しゅん、とアルメリア夫人に怒られたメリベル。まるで子供の様だ。夫の1人グレイもしゅん、と落ち込む。

「そうだな…………また時間が出来た時でも会おう、我が娘メリッサよ」

　パタン、と扉が閉まったのを確認すると、メリッサは立ち上がる。

「絶対に帰る！！………親に見えない！！」

　パシッ！

「！！」

　アルメリア夫人が机に向かって、指揮棒を叩く。そしてメリッサを睨んだ。何故主君より臣下が偉そうなんだ、と思いたくなるこの括に、メリッサの背筋はピンッと張った。

「今からその件でご理解をして頂きますのでご説明致します！！メリッサ様にはその理由を理解して頂かなければなりません！！そして、メリッサ様にもそのご覚悟をして頂きます！！」
「！！」

　アルメリア夫人の説明は、建国迄に遡る。ゲーデル国の城が何故湖上に建っているのか、という話から始まった。ゲーデル国は水神の恩恵を受けており、この地に城を建てる際、水神から条件が出た。湖上に城を建て、常に水を浄化をせよ。その浄化の力と共に水神の力を与える。その代わり王の血脈の生命力エナジーを捧げよ、というものらしい。その生命力を捧げる為、子供が出来にくい、という難点があった。水神の力は王の子の中の1人にしか与えられず、子供が出来にくい難点がある為、王は子供が沢山産まれる家系から配偶者を貰う事で子供を儲けたらしい。そして、成人し結婚の儀を行い、水神に認められた者に水神の力が宿るとされ、その者が王となるのだが、水神の力を欲する王の血脈の分家が、本家筋の血脈の子供を奪ったり、殺したりとする事があり、産まれた子供は、護衛に守られながら、平民として12歳迄育てられ、その後王教育をされる様になった。元々子供が出来にくい家系である為、分家筋は少ないのだが、子供を守る為に仕方なく隠すのだという。そして、王になる者の伴侶は多ければ多い程、子に恵まれる可能性がある為、祖父は妻を5人、母は7人の夫を持った、とアルメリア夫人は話す。

「……………聞いていい？」
「はい、何なりと」
「お母様？………現王は7人の夫が居て、何人子が居るの？」
「メリッサ様、ただお1人です」
「………………は？」
「メリベル様は16歳の時に先ずお2人とご結婚、その後3ヶ月後に、お2人増え、その半年後に3人迎え、毎日皆様で子作りを励み、メリッサ様ただお1人ですね………先程の夫グレイ様は確か4人目の夫だったかと……夫の皆様の家系は子沢山の家系でありまして、尚且つ優秀な人材な方々………先程のグレイ様に至ってはお医者様のお仕事をされております」
「わ、私にそんなに夫持てって言うの！？」
「はい、今の所、厳選に厳選を重ね、先ず2人決まっておりますよ、婚約者が」
「………………やっぱり帰る！！」
「駄目だって…………言ってるでしょおぉぉぉ！！」
「………んぐっ！！」

　逃げようとしたメリッサのドレスの襟首を、アルメリア夫人が捕まえる。冗談じゃない、いきなり婚約者も居るとは何事か！しかも2人！平然と吐かすアルメリア夫人もどうかしてる！私は常識人だ！と思いたいメリッサだった。