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首都ゲーデルベルグ
しおりを挟むメリッサが住む街から5日程、お風呂も入れず、馬車は走りっぱなしだった。馬車は変えながらだが。
「着替えたいんだけどっ!」
「お待ち下さい、メリッサ様。昼には首都ゲーデルベルグに到着しますから」
「何で急ピッチな訳?街で宿泊出来ないぐらい貧乏だったけ?ウチ」
「……………貧乏暮らしで申し訳ありませんな……メリッサ様」
父でなくエンゲルベルトは騎士服だろうか、商人の親父らしさは全くなく、馬車に乗るメリッサの向かいに座り、剣を鞘に納め中心に立て構えている。
「変わりすぎ…………この親父……」
「…………ゲーデルベルグに着きましたら、王女教育ひいては女王教育が待っております……今の内にその暴言言えるのは今日で最後………思う存分吐いて頂いて結構です」
「何、怖いんだけど………」
これから起こる事は変えられないのか?とメリッサは恐怖だった。
♤♢♧♡
首都ゲーデルベルグ。湖上に浮かぶ神秘的な白い城を中心に囲うように街が栄えている。
「…………ど、ドデカイ……」
「この城がメリッサ様のお住いになる城、ゲーデル城です」
馬車をそのまま城に向かわせ、エンゲルベルトの案内で城のエントランスに、いかにも教育しますよ、的なおばさんと、メイド服のお姉さんが5人並んでいる。
「メリッサ様を宜しく頼む」
「勿論です」
「……………父さん!!」
「……エンゲルベルトです、メリッサ様……お育て出来て楽しかったですよ………頑張って下さい」
エンゲルベルトともう話が出来ないだろうと直感した。
「…………ありがとう!!私も楽しかった!!」
涙を堪え、必死に駆け寄りそうになるのを堪えるメリッサ。扱われ方が、全く変わってしまった育ての親、エンゲルベルトへそれ以外言えなかった。
「さぁ、メリッサ様こちらに」
「………………」
何が起こるか分からないまま、おばさんに連れて行かれた部屋に入る。
「ここが、メリッサ様にお使い頂くお部屋です…………足りない物がありましたら、仰って下さい………では、皆さんメリッサ様のご準備を」
パンパン!
おばさんが手を叩くと、メリッサの腕をメイドのお姉さん達が雁字搦めにし、バスルームに追いやった。服を引っペ返し、髪から足の指まで隈無く洗われ、爪の手入れ、マニュキュアやペディキュア、乳液、化粧水、様々な施しを受ける。そんな事は全くもってした覚えが無いメリッサはギャーギャーとバスルームで騒いでいた。
「………教育しがいがありそうです事」
騒ぎ声で、これからの事を想像したのだろう。その言葉を発した後、メリッサの部屋の扉が開かれる。若い20代半ばの侍従がおばさんの横に並ぶ。
「アルメリア夫人……」
「フェルドマン執事……何用でしょう?」
「メリッサ様の準備は順調でしょうか?陛下が早くお会いになりたい、とわくわ……いえ……期待大にお待ちになっておられるので、様子を見に来た次第です」
「……………お分かりでしょう?あのお声……地獄絵図の様な………まぁ陛下のお子様ですから、見目は申し分ないかと」
「………あの様子では、アルメリア夫人の時間が優先されますね…………」
「鍛え甲斐ありますわ」
「そうですね………」
おばさん、もといアルメリア夫人はメリッサの教育係の様な仕事をするのだろう。その横に並ぶフェルドマンは若い執事の様だ。バスルームからよたよたと出て来たメリッサが2人の姿を確認する。バスローブは着させられてはいたが、男が居るとは思わず、しかも知らない男。まだ自己紹介もされていないおばさんやメイド達。メリッサは逃げ出したかった。
「な、な、な!!」
「さぁ、メリッサ様、今から着飾りますよ、お母様、メリベル女王陛下がお待ちですからね!」
「きゃぁ!!男が居る前で脱がさないで!!」
「…………あぁ失礼しました、メリッサ様……私はモートン・フェルドマンと申します。メリッサ様の専属執事をこの度任命されましたので、ご挨拶に………そして、彼女はラトビア・アルメリア侯爵夫人、貴女の教育係です」
男の前だろうが、お構いなしに裸のまま採寸されてしまい、身体を隠せる事も出来ない。やっと終わった、と思えば、アルメリア夫人がメイド達に指示を出し、ドレスや下着を持って来させる。その間も裸だ。
「わ、分かったから、貴方は出てってよ!」
「………お気になさらずに、私は空気と思って頂ければ」
「空気じゃないじゃない!!」
「私は空気です」
「せめて、あっち向け!!」
「……………ふっ……育ってない胸……まだまだくびれのない寸胴の身体で……」
「何だと!!」
「メリッサ様!!時間が無いのです!!帰郷早々、お母様に怒られますよ!!」
「…………お母様、て言っても、覚えてないし、死んだと思ってたし……」
「「……………」」
アルメリア夫人とフェルドマン執事は顔を見合わせた。
「仕方がありません………それもこれも定められた国の王となる為の決まり事ですから」
「何なのよ………」
「それは、陛下よりお話がございます」
一抹の不安が拭えないメリッサ。これから会うという母はどんな人なのか楽しみ半分、不安半分で、メイド達の手により着飾られた。
「…………まぁ………陛下のお若い時にそっくり……」
「喜ばれますね」
「………そんなに似てるんだ……」
「はい、あちらに肖像画がありますでしょう?こちらの部屋は元々陛下がご結婚する迄使われていたお部屋……その証明でその時の肖像画が飾られております……」
「……………」
メリッサは肖像画を近くで見る。鏡とは言わないが髪色に瞳、唇の形はそっくりだった。
「……………お母さん………?」
「そうですよ、お母様と父君方がお待ちです。さぁ、行きましょう」
「…………?父君達?」
「「……………」」
何か隠してる、まだ何か隠してないか?とメリッサは思い、アルメリア夫人とフェルドマン執事を交互に見た。目線を合わせようとはしなかった。
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