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「う、ううううう~~~~~~~~~」
「あ、ああっ、泣かないで、ごめんなさい。征佑さんとは、以前学校に気になってる子がいるって話をしたことがあります。だからてっきり、学校に征佑さんの好きな子がいるのかと思ってました。まさか学友の婚約者だったなんて。まったく運命の番だなんて、本人以外には傍迷惑なものですよ。ね? 陽太郎さん」
泣かないでと、斗貴哉様は一生懸命俺を宥めようと、抱きしめて頭を撫でた。
確かに恋愛感情の有無は置いといて、斗貴哉様も宮前に捨てられたんだし、俺が宮前を恨むのと同じように、もしかするとヒカルを恨んでるかもしれない。
「……俺が、宮前を奪ったオメガの婚約者だったから、代わりにいたぶるために結婚したの?」
「え? え? なんでそっちの方向に話がいっちゃうかな。オメガにするって話がやっぱりだめだったか。騙しちゃったわけですし……。うーん、本当に私は陽太郎さんと結婚するのを楽しみにしていたんですが……。そんなにオメガになるのは嫌? それとも私がオメガじゃなかったのが問題?」
そんなこと決まってる。全部だ。
騙されたことも、斗貴哉様がオメガじゃないことも、俺がオメガになることも全部。全部が嫌だ。
「……せっかくアルファで生まれたのに、なんでオメガになんかならないといけねーんだよ」
「オメガになっても陽太郎さんの生活は変わりませんよ。後天的な場合、多少筋力は落ちますが、知能や知識などこれまで培ってきたものに変化はありません。……あー、でもヒートがくると生活に支障がでちゃいますが、番のいるアルファは妻のヒートに合わせて休暇をとることも珍しくありません。世間的には、妻の私がオメガで夫の陽太郎さんがアルファの夫婦として通すことが可能です」
「え、そうなの? ——じゃなくて!」
「じゃあ何が問題なんですか?」
なんでって、なんでわかってもらえないのか、俺のほうが不思議だっての!
バース性が変わるなんて、男がいきなり女になるようなもんだし、そんなのいいですかって言われて、はいどうぞって言えるわけがない。
俺がこれまで生きてきた人生はなんだったんだ?
アルファとして教育を受けて生きてきた、俺の人生全てが否定されたように感じる。
なんで俺がオメガなんかに……。
「——陽太郎さんは、自分がオメガだと恥ずかしいですか」
「……え」
「私もね、自分がアルファなのに擬態オメガだってことが恥ずかしくて、ずっと社交の場には出なかったんですよ。要は引きこもりです。それに家族は私を花咲の家を構成する駒の1つとして見ているので、外ではオメガとして扱います。だから世の中の人が、オメガをどのような目で見ているかも知っています」
世の中の人がどんな目でオメガを見るか。
嘲弄、蔑み、憐憫……男を漁る汚らしい性。
もちろんそんな目で見ない人もいる。でも、上流社会での差別はひどい。
アルファとオメガに社会的格差がある場合、まるで奴隷のように扱うこともある。
——考えてみれば俺はずっと、ヒカルを下に見てた。
弱っちいヒカルにイラついて、時には意地悪もした。
結婚して守ってやらなきゃなんてうわべでは考えてたけど、世間からどんな目で見られて、どんな扱いで苦しんでるなんて、理解しているようで全然理解してやってなかったんだ。
——でも、宮前ならきっと守ってくれるんだろう。
あんなに大事そうにヒカルを抱えていったんだから。
(あいつがホントにヒカルを、斗貴哉様から逃げるためだけに利用したんじゃないといいな)
「陽太郎さん、もしオメガになってもあなたはあなたのままですし、この私が、そんな目で陽太郎さんが見られないように守ります。花咲の家も、志久の家も、もちろん外の世界でも。陽太郎さんに辛く当たる人がいれば、私が全力であなたの盾になります。だから、私の番になってくれませんか。そしてできれば、首を噛むことも許してほしい。それで本当にオメガになるかどうかは、運次第です。正直、ならなくてもいいと私は思ってます。私は私で、花咲の義務を果たしたことに、代わりはないのですから」
そっと顔から手を離し、背けていた顔を戻すと、そこには真剣な目をした斗貴哉様の顔があった。
近くで見てもやっぱりすげー肌も白くてまつ毛も長いし、それこそ異次元のきれいさで。でも俺を見る瞳の奥には、アルファ特有の獣のような鋭さもあって、やっぱり斗貴哉様はアルファなんだなってしみじみ思った。
「——俺、子供産むとかよくわかんねーし、正直オメガになるの怖い。俺を騙して結婚したのも許せねーし、首を噛むとか、回りくどい言い方もやだ」
「ではなんといえば許してもらえますか」
斗貴哉様が少し困っている。
まだ言ってもらってない言葉があるんだよ。俺からは言ってやんないけど。
「あ、ああっ、泣かないで、ごめんなさい。征佑さんとは、以前学校に気になってる子がいるって話をしたことがあります。だからてっきり、学校に征佑さんの好きな子がいるのかと思ってました。まさか学友の婚約者だったなんて。まったく運命の番だなんて、本人以外には傍迷惑なものですよ。ね? 陽太郎さん」
泣かないでと、斗貴哉様は一生懸命俺を宥めようと、抱きしめて頭を撫でた。
確かに恋愛感情の有無は置いといて、斗貴哉様も宮前に捨てられたんだし、俺が宮前を恨むのと同じように、もしかするとヒカルを恨んでるかもしれない。
「……俺が、宮前を奪ったオメガの婚約者だったから、代わりにいたぶるために結婚したの?」
「え? え? なんでそっちの方向に話がいっちゃうかな。オメガにするって話がやっぱりだめだったか。騙しちゃったわけですし……。うーん、本当に私は陽太郎さんと結婚するのを楽しみにしていたんですが……。そんなにオメガになるのは嫌? それとも私がオメガじゃなかったのが問題?」
そんなこと決まってる。全部だ。
騙されたことも、斗貴哉様がオメガじゃないことも、俺がオメガになることも全部。全部が嫌だ。
「……せっかくアルファで生まれたのに、なんでオメガになんかならないといけねーんだよ」
「オメガになっても陽太郎さんの生活は変わりませんよ。後天的な場合、多少筋力は落ちますが、知能や知識などこれまで培ってきたものに変化はありません。……あー、でもヒートがくると生活に支障がでちゃいますが、番のいるアルファは妻のヒートに合わせて休暇をとることも珍しくありません。世間的には、妻の私がオメガで夫の陽太郎さんがアルファの夫婦として通すことが可能です」
「え、そうなの? ——じゃなくて!」
「じゃあ何が問題なんですか?」
なんでって、なんでわかってもらえないのか、俺のほうが不思議だっての!
バース性が変わるなんて、男がいきなり女になるようなもんだし、そんなのいいですかって言われて、はいどうぞって言えるわけがない。
俺がこれまで生きてきた人生はなんだったんだ?
アルファとして教育を受けて生きてきた、俺の人生全てが否定されたように感じる。
なんで俺がオメガなんかに……。
「——陽太郎さんは、自分がオメガだと恥ずかしいですか」
「……え」
「私もね、自分がアルファなのに擬態オメガだってことが恥ずかしくて、ずっと社交の場には出なかったんですよ。要は引きこもりです。それに家族は私を花咲の家を構成する駒の1つとして見ているので、外ではオメガとして扱います。だから世の中の人が、オメガをどのような目で見ているかも知っています」
世の中の人がどんな目でオメガを見るか。
嘲弄、蔑み、憐憫……男を漁る汚らしい性。
もちろんそんな目で見ない人もいる。でも、上流社会での差別はひどい。
アルファとオメガに社会的格差がある場合、まるで奴隷のように扱うこともある。
——考えてみれば俺はずっと、ヒカルを下に見てた。
弱っちいヒカルにイラついて、時には意地悪もした。
結婚して守ってやらなきゃなんてうわべでは考えてたけど、世間からどんな目で見られて、どんな扱いで苦しんでるなんて、理解しているようで全然理解してやってなかったんだ。
——でも、宮前ならきっと守ってくれるんだろう。
あんなに大事そうにヒカルを抱えていったんだから。
(あいつがホントにヒカルを、斗貴哉様から逃げるためだけに利用したんじゃないといいな)
「陽太郎さん、もしオメガになってもあなたはあなたのままですし、この私が、そんな目で陽太郎さんが見られないように守ります。花咲の家も、志久の家も、もちろん外の世界でも。陽太郎さんに辛く当たる人がいれば、私が全力であなたの盾になります。だから、私の番になってくれませんか。そしてできれば、首を噛むことも許してほしい。それで本当にオメガになるかどうかは、運次第です。正直、ならなくてもいいと私は思ってます。私は私で、花咲の義務を果たしたことに、代わりはないのですから」
そっと顔から手を離し、背けていた顔を戻すと、そこには真剣な目をした斗貴哉様の顔があった。
近くで見てもやっぱりすげー肌も白くてまつ毛も長いし、それこそ異次元のきれいさで。でも俺を見る瞳の奥には、アルファ特有の獣のような鋭さもあって、やっぱり斗貴哉様はアルファなんだなってしみじみ思った。
「——俺、子供産むとかよくわかんねーし、正直オメガになるの怖い。俺を騙して結婚したのも許せねーし、首を噛むとか、回りくどい言い方もやだ」
「ではなんといえば許してもらえますか」
斗貴哉様が少し困っている。
まだ言ってもらってない言葉があるんだよ。俺からは言ってやんないけど。
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