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ダイチの本心
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「まあ考えられることとしてはだな。お前を性的な目でみていない、とかな」
「は? 付き合ってるのに? ……俺がおっさんだから? そういう目じゃ見れないってことか?」
だとしたら、ものすごく傷つくんだけど。キスすらしたいくないって……。ダイチの言ってるお付き合いって、そういう意味のじゃないってことか?
「まあ、ユウジ落ち着け。相手がおっさんだとかいう以前に、憧れと好きを混同している可能性もある。相手に夢中になって告白するところまでは良かったけど、実際のところそれ以上のことは望んでいなかったり」
「え」
そうだとしたらめっちゃキツイんですけど。
「ほかにも、そうだな。好きになって、付き合うまでの期間が一番楽しいってやつもいるよな。OKもらったら、目標達成しちゃって冷めちゃうやつね」
うわ、それもキツイ!
でもダイチの場合、冷めたっていうのとはまた違うような……。俺に対する態度はずっと変わらないし。ただ進展がないだけでさ。よそよそしいわけじゃないもんな。ケーキも相変わらず作ってくれるし。
……なのに、ダイチはそれ以上を望んでくれていない。
俺に触れないのは、ロッシュに気を使ってではなくて、ただ俺に触れたくないだけなのかな。
軽いハグなんて、佐藤とだってやってる。
「はぁー…………」
「そのまじめくん、インポとかじゃねーよな」
打ちひしがれる俺に、ガハハと佐藤が馬鹿笑いをして冗談を飛ばすが、俺は笑えない。ダイチがインポかどうかなんて俺は知らないし、例えインポだったとしても、イチャイチャして体に触れ合ったり、キスくらいはするだろ。
「自分からいっちゃえばいいじゃん」
「あーそれができたら苦労しないよ。うまく誘える気がしない。グイグイいくとさ、なんかエロオヤジっぽくてキモいって引かれそうだし」
「お前なー、それ遠回しに俺のこと言ってるだろ?」
佐藤はキモがられても、それを笑いに変えて次のステップに繋げる力があるからな。
本当営業向きだよ。羨ましいくらいだ。
「しょうがねーな。今度俺に会わせてみろよ。どんな感じか実際見てやるよ」
「佐藤……お前……。けど断固断る」
なんだかいい感じに言ってるけど、どうせただの好奇心だろ。
佐藤に会わせると、失礼なことしそうで絶対に嫌だ。
「お前な~~。俺の友を思う気持ちをいとも簡単に無下にするな。……あ、そうだ。これ。次会ったとき渡そうと思ってたんだ」
佐藤が、皿に残っただし巻きたまごを口に放り込むと、名刺入れから一枚の名刺を取り出して俺に渡した。
「……何? これ。ルナ・プロフィト? 何かのお店?」
「この前、ウチの会社で運営しているWEBマガジンで、『酒と占い』って特集をやったんだよ。ほら、昔ナントカの母とかってのが流行っただろ。今回は現代の大人がハマる占いっていうテーマで記事にしたんだけどよ。俺も営業で取材にもついていったんだけど、この人が前世占いでも有名らしくってな」
「前世……」
「ほら黒木のこと、お前こだわってただろ。まじめくんを黒木だって言い出したりさ。挙げ句ロッシュがって言い出したときは、頭大丈夫かって思ったけど。まあどうせエンタメ占いだろうけど、行ってみろよ。なんかおもしろそうだろ。この名刺くれたやつ、お前と気が合いそうだったぞー」
「へえ」
紙ではなく薄いプラスチックに、”サイ”という占い師の名前と、店の住所がシンプルなフォントでさらりと記載されている。
いかにもな感じがなくて、おしゃれでセンスがいい。
「ここの店、バーと併設だから入りやすいぞ。ほら、こうやってカードをスマホにかざすと、占い師の予約について記載されたページがスマホに表示されるんだ。このページから予約フォームにとぶ。知らないやつは予約できないって仕組みなのもいいだろ」
「あ、本当だ。へえ面白いな」
スマホの背面に名刺をかざすと、すぐにブラウザが立ち上がり、占いの予約についてのページが表示された。
最近はQRコードじゃなく、こういう技術が流行しているのかって、エンジニアとして興味をひかれるところだ。
「まあ、行ってみろよ。ここ恋愛相談もやってくれるらしいぞ。俺じゃ不満みたいだから、聞いてもらえばー?」
どうも佐藤は、本当に俺がスピリチュアルやオカルトに傾倒していると思っているらしい。
俺はオカルト系の話は好きだけどネタとして好きなだけで、占いは信じないし、テレビの占いも観ないほうなんだけど。
「まあ、気が向いたらな」
なんて、このときは興味なさげに、そっけない返事を佐藤にした俺だったんだけど。
数日後、なんと俺はこのルナ・プロフィトのサイという占い師の予約をいれていた。
もし予約が埋まっていたら諦めよう。そう思ったのに、次の休みの日にあっさりと予約が取れてしまったのだ。
いつもなら、こんな占いだとか、人生相談だとかに惹かれる俺じゃないんだけどさ。久々の恋愛にちょっと堪えていたのかも。
それでも予約キャンセルしようかとずっと悩んではいたんだけど、悩んでいるうちに予約の当日になってしまった。
「は? 付き合ってるのに? ……俺がおっさんだから? そういう目じゃ見れないってことか?」
だとしたら、ものすごく傷つくんだけど。キスすらしたいくないって……。ダイチの言ってるお付き合いって、そういう意味のじゃないってことか?
「まあ、ユウジ落ち着け。相手がおっさんだとかいう以前に、憧れと好きを混同している可能性もある。相手に夢中になって告白するところまでは良かったけど、実際のところそれ以上のことは望んでいなかったり」
「え」
そうだとしたらめっちゃキツイんですけど。
「ほかにも、そうだな。好きになって、付き合うまでの期間が一番楽しいってやつもいるよな。OKもらったら、目標達成しちゃって冷めちゃうやつね」
うわ、それもキツイ!
でもダイチの場合、冷めたっていうのとはまた違うような……。俺に対する態度はずっと変わらないし。ただ進展がないだけでさ。よそよそしいわけじゃないもんな。ケーキも相変わらず作ってくれるし。
……なのに、ダイチはそれ以上を望んでくれていない。
俺に触れないのは、ロッシュに気を使ってではなくて、ただ俺に触れたくないだけなのかな。
軽いハグなんて、佐藤とだってやってる。
「はぁー…………」
「そのまじめくん、インポとかじゃねーよな」
打ちひしがれる俺に、ガハハと佐藤が馬鹿笑いをして冗談を飛ばすが、俺は笑えない。ダイチがインポかどうかなんて俺は知らないし、例えインポだったとしても、イチャイチャして体に触れ合ったり、キスくらいはするだろ。
「自分からいっちゃえばいいじゃん」
「あーそれができたら苦労しないよ。うまく誘える気がしない。グイグイいくとさ、なんかエロオヤジっぽくてキモいって引かれそうだし」
「お前なー、それ遠回しに俺のこと言ってるだろ?」
佐藤はキモがられても、それを笑いに変えて次のステップに繋げる力があるからな。
本当営業向きだよ。羨ましいくらいだ。
「しょうがねーな。今度俺に会わせてみろよ。どんな感じか実際見てやるよ」
「佐藤……お前……。けど断固断る」
なんだかいい感じに言ってるけど、どうせただの好奇心だろ。
佐藤に会わせると、失礼なことしそうで絶対に嫌だ。
「お前な~~。俺の友を思う気持ちをいとも簡単に無下にするな。……あ、そうだ。これ。次会ったとき渡そうと思ってたんだ」
佐藤が、皿に残っただし巻きたまごを口に放り込むと、名刺入れから一枚の名刺を取り出して俺に渡した。
「……何? これ。ルナ・プロフィト? 何かのお店?」
「この前、ウチの会社で運営しているWEBマガジンで、『酒と占い』って特集をやったんだよ。ほら、昔ナントカの母とかってのが流行っただろ。今回は現代の大人がハマる占いっていうテーマで記事にしたんだけどよ。俺も営業で取材にもついていったんだけど、この人が前世占いでも有名らしくってな」
「前世……」
「ほら黒木のこと、お前こだわってただろ。まじめくんを黒木だって言い出したりさ。挙げ句ロッシュがって言い出したときは、頭大丈夫かって思ったけど。まあどうせエンタメ占いだろうけど、行ってみろよ。なんかおもしろそうだろ。この名刺くれたやつ、お前と気が合いそうだったぞー」
「へえ」
紙ではなく薄いプラスチックに、”サイ”という占い師の名前と、店の住所がシンプルなフォントでさらりと記載されている。
いかにもな感じがなくて、おしゃれでセンスがいい。
「ここの店、バーと併設だから入りやすいぞ。ほら、こうやってカードをスマホにかざすと、占い師の予約について記載されたページがスマホに表示されるんだ。このページから予約フォームにとぶ。知らないやつは予約できないって仕組みなのもいいだろ」
「あ、本当だ。へえ面白いな」
スマホの背面に名刺をかざすと、すぐにブラウザが立ち上がり、占いの予約についてのページが表示された。
最近はQRコードじゃなく、こういう技術が流行しているのかって、エンジニアとして興味をひかれるところだ。
「まあ、行ってみろよ。ここ恋愛相談もやってくれるらしいぞ。俺じゃ不満みたいだから、聞いてもらえばー?」
どうも佐藤は、本当に俺がスピリチュアルやオカルトに傾倒していると思っているらしい。
俺はオカルト系の話は好きだけどネタとして好きなだけで、占いは信じないし、テレビの占いも観ないほうなんだけど。
「まあ、気が向いたらな」
なんて、このときは興味なさげに、そっけない返事を佐藤にした俺だったんだけど。
数日後、なんと俺はこのルナ・プロフィトのサイという占い師の予約をいれていた。
もし予約が埋まっていたら諦めよう。そう思ったのに、次の休みの日にあっさりと予約が取れてしまったのだ。
いつもなら、こんな占いだとか、人生相談だとかに惹かれる俺じゃないんだけどさ。久々の恋愛にちょっと堪えていたのかも。
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