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4回目のリープ
53.なにがあった?2
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「……なぁ、今日さ、ここ泊まっていい?」
「え」
「今日ウチ帰んの、ちょっとヤだっていうかさー。そういう気になれねーつーか……。明日にはウチ帰るからさ。それとも俺が今日ここに泊まったら、未来に影響するとかってある?」
「いや。お前が男たちに追いかけられなかった時点で、もう前回の流れとは変わってるし。問題ねーとは思うけど……」
「なんだよ。迷惑か?」
「いや、迷惑じゃ……。でもちょっと問題が……」
「問題?」
もちろん断る理由なんかない。
俺としてはあのスナックの二階に帰したくないし、できればずっとそうして欲しいくらいの気持ちだ。
だが問題はそこじゃない。
「はぁ? 布団が一組しかない?」
「ああ。だからどうするかなって」
「ふーん。別に俺、一緒の布団で寝ても構わねーけど」
おい。こっちの鏑木、お前もか。
「は? いやでも狭いし……。それなら敷ふとんを横にして……」
「はぁ? 大丈夫だろ。俺寒いのヤだし。くっついて寝りゃいーじゃん。それとも俺と寝るの嫌なのかよ」
「いや、でも俺が……」
「あ、そかお前俺のこと好きなんだっけ? ダイジョーブ。お前のチンコ勃ってても俺気にしねーし。あ、それより風呂入りてーから、パンツとか着るもん貸して」
「……」
2回目のリープでは、布団を横にしてちょっと距離を空けて寝た。そして3回目では、一緒の布団。でもとくに何かあったわけでもなくて、ただ一緒に寝ただけだった。
「おい、ほれ、木嶋、こっち向けって。俺に抱きついていいんだぜー」
俺と同じシャンプーの匂いをまとった鏑木が、俺のスウェットに俺のパンツを履いて、俺の背中にピッタリとくっついてくる。
風呂から上がってダボダボの俺のスウェットを着た鏑木を見たとき、これだけ身長差があると、スウェットがワンピースになるんだなと感心したのと同時に、あまりの可愛さに衝撃を受けた。
(やべぇ。可愛すぎる。……俺、やっぱり鏑木のこと、好きなんだな)
今の鏑木は前とは違うからと、そのことは考えないようにしていたのに。こんなときに自覚してしまうとは。
「木嶋~布団からはみ出てんじゃねーか。いいからこっち向けって。あとお前が体丸めると、俺も布団からはみ出るんだけどー」
そう言われて仕方なく寝返りを打つと、すぐ目の前に鏑木の顔があった。
ドキッとして思わず体を離そうとすると、「もうそういのいいからさー」と俺の体を掴んで引き戻した。
「いや、近すぎるって」
「ほれ、ちょっとくれーなら抱きしめてもいいんだぜー」
鏑木は俺の腕をとり、自分の体に無理やり巻きつけた。
あらためて感じる鏑木の体は、小さくて細くてとても薄くて、俺の腕の中にすっぽりと収まった。
こうして同じ布団で体を抱きしめていると、なんだかすごく変な気持ちになってくる。かなりマズイ。
「……木嶋、めっちゃ筋肉ついてんな。腕かったいし、太いし、重いしさー。体も弾力あるし、なんかすげー熱気がくるんだけど。もしかして体温高い? 何かスポーツでもやってんの?」
「……体温は気にしたことねー。昔空手やってた」
「ふーん」
体温高いのは、たぶん興奮してるからだ。俺、今、絶対顔が赤いはず。
好きな子と一緒の布団で、体を抱きしめてて、これで興奮しない男はいないだろ。
鼻先に嗅ぎ慣れたシャンプーの匂いのする鏑木の髪の毛があって、これ鏑木がちょっとでも上を向いたら、もうキスできる体勢じゃねえかと思った矢先、本当に鏑木が上を向いて俺を見た。
黒目がちな大きな目が、俺のほうを見つめている。
殴られてまだ少し腫れた頬にそっと手をやると、鏑木の顔がピクンと反応し、反射的に目を閉じた瞬間、俺は吸い寄せられるようにして、鏑木の口にそっとキスをした。
また何か言われるかなと思った。前のときみたいに茶化してくんのかなって。でも意外なことに、唇が離れると、すぐに鏑木はまた顔を下に向けてしまった。
「ごめん、つい」
「……俺さー、さっきから余裕ぶっこいてたけど、実は恋愛の経験ねーんだわ」
「え、マジでか」
「マジー。えっちなことは経験豊富だけどな。今日は泊めてもらうし、キスくれーならいいかなーと思ったけど、相手がマジだと、なんか恥ずかしーな」
前のときの鏑木は、俺を茶化すくらいには余裕があったように見えたけど、まさかあれも照れ隠しだったのだろうか。
もしそうだとしたら、俺は――。
「な、ちょっとの間だけこうしてていい?」
鏑木の頭に顔を埋めるようにして抱きしめると、鏑木が小さく「ん」とだけ言った。
細い小さな体を、抱きしめてその日は眠った。
「え」
「今日ウチ帰んの、ちょっとヤだっていうかさー。そういう気になれねーつーか……。明日にはウチ帰るからさ。それとも俺が今日ここに泊まったら、未来に影響するとかってある?」
「いや。お前が男たちに追いかけられなかった時点で、もう前回の流れとは変わってるし。問題ねーとは思うけど……」
「なんだよ。迷惑か?」
「いや、迷惑じゃ……。でもちょっと問題が……」
「問題?」
もちろん断る理由なんかない。
俺としてはあのスナックの二階に帰したくないし、できればずっとそうして欲しいくらいの気持ちだ。
だが問題はそこじゃない。
「はぁ? 布団が一組しかない?」
「ああ。だからどうするかなって」
「ふーん。別に俺、一緒の布団で寝ても構わねーけど」
おい。こっちの鏑木、お前もか。
「は? いやでも狭いし……。それなら敷ふとんを横にして……」
「はぁ? 大丈夫だろ。俺寒いのヤだし。くっついて寝りゃいーじゃん。それとも俺と寝るの嫌なのかよ」
「いや、でも俺が……」
「あ、そかお前俺のこと好きなんだっけ? ダイジョーブ。お前のチンコ勃ってても俺気にしねーし。あ、それより風呂入りてーから、パンツとか着るもん貸して」
「……」
2回目のリープでは、布団を横にしてちょっと距離を空けて寝た。そして3回目では、一緒の布団。でもとくに何かあったわけでもなくて、ただ一緒に寝ただけだった。
「おい、ほれ、木嶋、こっち向けって。俺に抱きついていいんだぜー」
俺と同じシャンプーの匂いをまとった鏑木が、俺のスウェットに俺のパンツを履いて、俺の背中にピッタリとくっついてくる。
風呂から上がってダボダボの俺のスウェットを着た鏑木を見たとき、これだけ身長差があると、スウェットがワンピースになるんだなと感心したのと同時に、あまりの可愛さに衝撃を受けた。
(やべぇ。可愛すぎる。……俺、やっぱり鏑木のこと、好きなんだな)
今の鏑木は前とは違うからと、そのことは考えないようにしていたのに。こんなときに自覚してしまうとは。
「木嶋~布団からはみ出てんじゃねーか。いいからこっち向けって。あとお前が体丸めると、俺も布団からはみ出るんだけどー」
そう言われて仕方なく寝返りを打つと、すぐ目の前に鏑木の顔があった。
ドキッとして思わず体を離そうとすると、「もうそういのいいからさー」と俺の体を掴んで引き戻した。
「いや、近すぎるって」
「ほれ、ちょっとくれーなら抱きしめてもいいんだぜー」
鏑木は俺の腕をとり、自分の体に無理やり巻きつけた。
あらためて感じる鏑木の体は、小さくて細くてとても薄くて、俺の腕の中にすっぽりと収まった。
こうして同じ布団で体を抱きしめていると、なんだかすごく変な気持ちになってくる。かなりマズイ。
「……木嶋、めっちゃ筋肉ついてんな。腕かったいし、太いし、重いしさー。体も弾力あるし、なんかすげー熱気がくるんだけど。もしかして体温高い? 何かスポーツでもやってんの?」
「……体温は気にしたことねー。昔空手やってた」
「ふーん」
体温高いのは、たぶん興奮してるからだ。俺、今、絶対顔が赤いはず。
好きな子と一緒の布団で、体を抱きしめてて、これで興奮しない男はいないだろ。
鼻先に嗅ぎ慣れたシャンプーの匂いのする鏑木の髪の毛があって、これ鏑木がちょっとでも上を向いたら、もうキスできる体勢じゃねえかと思った矢先、本当に鏑木が上を向いて俺を見た。
黒目がちな大きな目が、俺のほうを見つめている。
殴られてまだ少し腫れた頬にそっと手をやると、鏑木の顔がピクンと反応し、反射的に目を閉じた瞬間、俺は吸い寄せられるようにして、鏑木の口にそっとキスをした。
また何か言われるかなと思った。前のときみたいに茶化してくんのかなって。でも意外なことに、唇が離れると、すぐに鏑木はまた顔を下に向けてしまった。
「ごめん、つい」
「……俺さー、さっきから余裕ぶっこいてたけど、実は恋愛の経験ねーんだわ」
「え、マジでか」
「マジー。えっちなことは経験豊富だけどな。今日は泊めてもらうし、キスくれーならいいかなーと思ったけど、相手がマジだと、なんか恥ずかしーな」
前のときの鏑木は、俺を茶化すくらいには余裕があったように見えたけど、まさかあれも照れ隠しだったのだろうか。
もしそうだとしたら、俺は――。
「な、ちょっとの間だけこうしてていい?」
鏑木の頭に顔を埋めるようにして抱きしめると、鏑木が小さく「ん」とだけ言った。
細い小さな体を、抱きしめてその日は眠った。
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