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4回目のリープ
46.鏑木に話す覚悟2
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鏑木は俺を振り返り、鋭く睨みつけた。
「……てめぇ、なんで俺んち知ってんだよ。まさか俺をストーカーしてんじゃねーだろーな」
「ストーカーなんかしてない。前の時間軸で、お前に連れていってもらった。他にもまだ知っていることがある」
「…………」
鏑木は、なら言ってみろとばかりに、その場で俺を睨みつけながら顎でしゃくった。
「……母親は親父さんの金を持って、男と逃げた。お前は借金だらけになった親父さんのために、……男相手に体を売っている」
「木嶋ぁ!! なんでてめぇが知ってんだよ!!」
鏑木が勢いよく俺に突っ込んで来て、胸元を掴んだ。
「だから、それも全部これまでタイムリープして知ったことだ」
「だからって、なんでてめぇが、俺のこと……」
誰も知らないはずの秘密を知る俺に、怒りに満ちた目を向け、胸ぐらを掴みあげる鏑木を、俺は真剣な眼差しで見つめ返す。
「俺は、……鏑木と親友だった。前のときも、その前のときも。俺はお前を何度も死なせてしまった。だから、今回こそは、俺はお前を死なせたくないんだ。俺を信じてくれ、鏑木。とりあえず、話を聞くだけ聞いてほしい。俺を助けてくれ」
鏑木は無言で、俺をにらみ続ける。
俺は折れる気はない。今回は意地でも鏑木を助ける。それには本人の協力が必要なんだ。だからこそ、ここで根負けする気はない。
しばらく睨み合いが続き、諦めたのか鏑木の目からふと力が抜けた。
そして大きなため息と共に、俺から手を離した。
「……わーったよ。俺のことどこから知ったとか、ちゃんとはっきりさせてーし、話聞いてやんよ」
「鏑木!」
俺が嬉しくて思わず抱きつくと、「だから、そういうのはやめろって!」とボカッと頭を叩かれた。
とりあえずこの日はもう時間も遅いということで、一旦帰ることにした。
俺は鏑木を、あの忌まわしいスナックの二階に帰したくなかったが、今日はまだ10月12日であり、俺にとって今日だったはずの2月26日ではないのだ。
あの悪魔の巣のような場所に、鏑木を帰したくなかった。……でも仕方がない。
明日、放課後俺の家で話をすることを約束させて、鏑木と別れた。
アパートに帰り、部屋の中を見回すと、昨日あれだけ用意した食材や、鏑木に使ってもらおうと用意したタオルや着替えが、すべて跡形もなく消えてなくなっていた。
スマホを見ても、リープ後いつもそうであるように、鏑木の連絡先が全部消えている。
鏑木との連絡用に使っていたメッセージアプリも全部。
(……リープしたんだから、そりゃそうだよな。今日、連絡先聞いとけばよかったな)
無駄だとわかっているのに、メッセージアプリをダウンロードしてみるが、やはり履歴どころか俺のアカウントすら登録されていない、新規の状態に戻っていた。
(あー……こういうの、毎度ながらちょっとキッツいな)
――目をつむるとあの光景が蘇る。
鏑木の死体のあの生々しさ。
血みどろになるまで親父さんを殴り続けた俺の拳。
(本当なら俺は、人殺しになっていたのか)
もうあんな思いは懲り懲りだった。
悪夢を見ていたとしか思えない。
(俺はもしかして、ずっと長い悪夢を見続けているだけなのかもしれない)
そうだったら本当によかったのに。
俺はひどい疲労感に体をよろけさせながら、風呂の掃除をするため、風呂場へ向かった。
「……てめぇ、なんで俺んち知ってんだよ。まさか俺をストーカーしてんじゃねーだろーな」
「ストーカーなんかしてない。前の時間軸で、お前に連れていってもらった。他にもまだ知っていることがある」
「…………」
鏑木は、なら言ってみろとばかりに、その場で俺を睨みつけながら顎でしゃくった。
「……母親は親父さんの金を持って、男と逃げた。お前は借金だらけになった親父さんのために、……男相手に体を売っている」
「木嶋ぁ!! なんでてめぇが知ってんだよ!!」
鏑木が勢いよく俺に突っ込んで来て、胸元を掴んだ。
「だから、それも全部これまでタイムリープして知ったことだ」
「だからって、なんでてめぇが、俺のこと……」
誰も知らないはずの秘密を知る俺に、怒りに満ちた目を向け、胸ぐらを掴みあげる鏑木を、俺は真剣な眼差しで見つめ返す。
「俺は、……鏑木と親友だった。前のときも、その前のときも。俺はお前を何度も死なせてしまった。だから、今回こそは、俺はお前を死なせたくないんだ。俺を信じてくれ、鏑木。とりあえず、話を聞くだけ聞いてほしい。俺を助けてくれ」
鏑木は無言で、俺をにらみ続ける。
俺は折れる気はない。今回は意地でも鏑木を助ける。それには本人の協力が必要なんだ。だからこそ、ここで根負けする気はない。
しばらく睨み合いが続き、諦めたのか鏑木の目からふと力が抜けた。
そして大きなため息と共に、俺から手を離した。
「……わーったよ。俺のことどこから知ったとか、ちゃんとはっきりさせてーし、話聞いてやんよ」
「鏑木!」
俺が嬉しくて思わず抱きつくと、「だから、そういうのはやめろって!」とボカッと頭を叩かれた。
とりあえずこの日はもう時間も遅いということで、一旦帰ることにした。
俺は鏑木を、あの忌まわしいスナックの二階に帰したくなかったが、今日はまだ10月12日であり、俺にとって今日だったはずの2月26日ではないのだ。
あの悪魔の巣のような場所に、鏑木を帰したくなかった。……でも仕方がない。
明日、放課後俺の家で話をすることを約束させて、鏑木と別れた。
アパートに帰り、部屋の中を見回すと、昨日あれだけ用意した食材や、鏑木に使ってもらおうと用意したタオルや着替えが、すべて跡形もなく消えてなくなっていた。
スマホを見ても、リープ後いつもそうであるように、鏑木の連絡先が全部消えている。
鏑木との連絡用に使っていたメッセージアプリも全部。
(……リープしたんだから、そりゃそうだよな。今日、連絡先聞いとけばよかったな)
無駄だとわかっているのに、メッセージアプリをダウンロードしてみるが、やはり履歴どころか俺のアカウントすら登録されていない、新規の状態に戻っていた。
(あー……こういうの、毎度ながらちょっとキッツいな)
――目をつむるとあの光景が蘇る。
鏑木の死体のあの生々しさ。
血みどろになるまで親父さんを殴り続けた俺の拳。
(本当なら俺は、人殺しになっていたのか)
もうあんな思いは懲り懲りだった。
悪夢を見ていたとしか思えない。
(俺はもしかして、ずっと長い悪夢を見続けているだけなのかもしれない)
そうだったら本当によかったのに。
俺はひどい疲労感に体をよろけさせながら、風呂の掃除をするため、風呂場へ向かった。
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