40 / 69
3回目のリープ
40.迷い、そして見つからない打開策1
しおりを挟む
「ああ。君の場合、どちらかといえば年増の女性あたりにウケが良さそうだから、女性専門でもいいね。君は体格もいいし、顔もキリッとしてるから可愛がってもらえるぞ。うまくいけば、将来長く金を支援してくれる太客が出てくるかもしれない」
「……は?」
「それが気に入らないなら、単体ではなく、ハルイチとセットとかもいいかもね。客と三人でヤッたり、ハルイチと君がヤッてるのを見るのもいいね。そういうのが好きな奴らも多いんだよ」
「な……!」
「まあ、君にはできないだろうけど」
田崎が何を考えているのか、俺には読めなかった。
親身になってくれそうかと思えば、いきなり突き放すようなひどいことを言い出す。
「うーん。もし君もハルイチのために金を稼ぎたいなら、仲介を通さず俺と契約してみる? ハルイチほどは出せないけど、その辺の居酒屋でバイトするよりは稼げるよ。木嶋くん」
「……!」
……驚いた。俺の名前だけじゃなく、バイトが居酒屋ということまで知っているのか。
「君は月に何度か、俺が呼んだときに来てくれればいい。まあ、何をやるかって、それは君も分かっているよね。まさかそこまでウブとか言わないだろうな。ハルイチは最初から上手だったけど、君はそうはいかないだろうし、一から俺が仕込まなければならない。俺を喜ばせることができるようになれば、ちょっとずつお手当を上げていってもいいよ」
にっこりと微笑む眼鏡の奥の目は、形だけで笑ってない。
「君の働き次第によっては、借金の利息分くらいにはなるだろうね。俺みたいな親切な奴は他にいないよ。なんだったら、君自身へ少しくらい小遣いをあげてもいいね。どうだい? 心配なら、お試し期間を設けてもいいよ」
「……それが目的だったのか?」
「んー? なんのことだい?」
「俺の話を聞くと言って油断させて、俺にウリをさせようっていう魂胆か」
「まあ、どうとってもらってもいいけど、君くらいの男の子に欲情するおじさんと二人きりになるって、まあそういうことだよね」
こんな胡散臭い男に話を聞いてもらおうだなんて、俺が甘すぎた。
怒りが腹の底から湧いてくる。しかしその反面、もし田崎と契約すれば、もっと何か情報を得られるんじゃないかという、どこか冷静で打算的な考えも頭に浮かんでいた。
「さあ、どうする?」
このままだと、また行き詰まることは分かりきっている。
鏑木のウリのことについては、まだ未成年の俺には、正直荷が重かった。
三月四日を期限に、短期的であれば――。
浅はかにもそう考えたとき、俺のポケットに入れていたスマホから着信音が鳴り響いた。
「え、あ、……鏑木?」
慌ててスマホを取り出し、画面を見ると、鏑木からの着信通知が表示された。
どうしよう。出るか出まいか……スマホを手に持ったまま、チラッと田崎を見た。田崎はそんな俺に、どうぞと手で合図する。俺は、画面に表示された受話器のアイコンをタップした。
「あ、もしもし……? 鏑木?」
なんとなく気まずい感じで電話に出ると、受話スピーカーから鏑木の怒鳴り声が漏れ出した。
『てめー! 今どこにいんだよ!!』
「あ、え? 今?」
『おめーを迎えにバイト先行ったら、出てこねーし、店の人に聞いたら今日は休みだって!? 俺聞いてねーし!』
もうもうそんな時間だったか。
「あ、すまん、ちょっと急用ができて……」
『あ゙? なんだよ急用って。もう終わったのかよ。どこにいんだ? 俺待ってんだけど』
「あ、えっとな……」
田崎のほうを見ると、なんと田崎は腹を抱えて爆笑していた。
どうやら鏑木の怒鳴り声が、全部丸聞こえになっていたらしい。
「くくっ、ハルイチもそんな大声出せるんだな~! いや、仲良いね君たち。もういいよ、帰って」
「……もう帰れる。今駅近くだから。鏑木はまだ居酒屋の前?」
『その辺うろうろしてる』
「わかった。俺もすぐそっち向かうから。激安タナカマートで待っててくれ」
そういうと返事もなく、ブツッと電話が切れた。
ものすごい怒っているが、たぶん激安タナカマートで待っててくれていると思う。
「……じゃ、そういうことなんで、すみません。俺、帰ります。今日はご馳走様です。ありがとうございました」
「まあ、さっきの話だけどね。あまり裏のことについて、探りいれたりしないほうがいいよ。たまたま今回は俺だったから、こうして帰してあげられる。ヤバい奴が相手だったなら、今頃君はどこかのホテルにいるだろうね」
「……ご忠告ありがとうございます」
会釈をして店を出ると、俺は激安タナカマートへ向かって走った。
「……は?」
「それが気に入らないなら、単体ではなく、ハルイチとセットとかもいいかもね。客と三人でヤッたり、ハルイチと君がヤッてるのを見るのもいいね。そういうのが好きな奴らも多いんだよ」
「な……!」
「まあ、君にはできないだろうけど」
田崎が何を考えているのか、俺には読めなかった。
親身になってくれそうかと思えば、いきなり突き放すようなひどいことを言い出す。
「うーん。もし君もハルイチのために金を稼ぎたいなら、仲介を通さず俺と契約してみる? ハルイチほどは出せないけど、その辺の居酒屋でバイトするよりは稼げるよ。木嶋くん」
「……!」
……驚いた。俺の名前だけじゃなく、バイトが居酒屋ということまで知っているのか。
「君は月に何度か、俺が呼んだときに来てくれればいい。まあ、何をやるかって、それは君も分かっているよね。まさかそこまでウブとか言わないだろうな。ハルイチは最初から上手だったけど、君はそうはいかないだろうし、一から俺が仕込まなければならない。俺を喜ばせることができるようになれば、ちょっとずつお手当を上げていってもいいよ」
にっこりと微笑む眼鏡の奥の目は、形だけで笑ってない。
「君の働き次第によっては、借金の利息分くらいにはなるだろうね。俺みたいな親切な奴は他にいないよ。なんだったら、君自身へ少しくらい小遣いをあげてもいいね。どうだい? 心配なら、お試し期間を設けてもいいよ」
「……それが目的だったのか?」
「んー? なんのことだい?」
「俺の話を聞くと言って油断させて、俺にウリをさせようっていう魂胆か」
「まあ、どうとってもらってもいいけど、君くらいの男の子に欲情するおじさんと二人きりになるって、まあそういうことだよね」
こんな胡散臭い男に話を聞いてもらおうだなんて、俺が甘すぎた。
怒りが腹の底から湧いてくる。しかしその反面、もし田崎と契約すれば、もっと何か情報を得られるんじゃないかという、どこか冷静で打算的な考えも頭に浮かんでいた。
「さあ、どうする?」
このままだと、また行き詰まることは分かりきっている。
鏑木のウリのことについては、まだ未成年の俺には、正直荷が重かった。
三月四日を期限に、短期的であれば――。
浅はかにもそう考えたとき、俺のポケットに入れていたスマホから着信音が鳴り響いた。
「え、あ、……鏑木?」
慌ててスマホを取り出し、画面を見ると、鏑木からの着信通知が表示された。
どうしよう。出るか出まいか……スマホを手に持ったまま、チラッと田崎を見た。田崎はそんな俺に、どうぞと手で合図する。俺は、画面に表示された受話器のアイコンをタップした。
「あ、もしもし……? 鏑木?」
なんとなく気まずい感じで電話に出ると、受話スピーカーから鏑木の怒鳴り声が漏れ出した。
『てめー! 今どこにいんだよ!!』
「あ、え? 今?」
『おめーを迎えにバイト先行ったら、出てこねーし、店の人に聞いたら今日は休みだって!? 俺聞いてねーし!』
もうもうそんな時間だったか。
「あ、すまん、ちょっと急用ができて……」
『あ゙? なんだよ急用って。もう終わったのかよ。どこにいんだ? 俺待ってんだけど』
「あ、えっとな……」
田崎のほうを見ると、なんと田崎は腹を抱えて爆笑していた。
どうやら鏑木の怒鳴り声が、全部丸聞こえになっていたらしい。
「くくっ、ハルイチもそんな大声出せるんだな~! いや、仲良いね君たち。もういいよ、帰って」
「……もう帰れる。今駅近くだから。鏑木はまだ居酒屋の前?」
『その辺うろうろしてる』
「わかった。俺もすぐそっち向かうから。激安タナカマートで待っててくれ」
そういうと返事もなく、ブツッと電話が切れた。
ものすごい怒っているが、たぶん激安タナカマートで待っててくれていると思う。
「……じゃ、そういうことなんで、すみません。俺、帰ります。今日はご馳走様です。ありがとうございました」
「まあ、さっきの話だけどね。あまり裏のことについて、探りいれたりしないほうがいいよ。たまたま今回は俺だったから、こうして帰してあげられる。ヤバい奴が相手だったなら、今頃君はどこかのホテルにいるだろうね」
「……ご忠告ありがとうございます」
会釈をして店を出ると、俺は激安タナカマートへ向かって走った。
30
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる