バッドエンド・タイムリープ!

Bee

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3回目のリープ

40.迷い、そして見つからない打開策1

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「ああ。君の場合、どちらかといえば年増の女性あたりにウケが良さそうだから、女性専門でもいいね。君は体格もいいし、顔もキリッとしてるから可愛がってもらえるぞ。うまくいけば、将来長く金を支援してくれる太客が出てくるかもしれない」 
「……は?」 
「それが気に入らないなら、単体ではなく、ハルイチとセットとかもいいかもね。客と三人でヤッたり、ハルイチと君がヤッてるのを見るのもいいね。そういうのが好きな奴らも多いんだよ」 
「な……!」 
「まあ、君にはできないだろうけど」 

 田崎が何を考えているのか、俺には読めなかった。 
 親身になってくれそうかと思えば、いきなり突き放すようなひどいことを言い出す。 

「うーん。もし君もハルイチのために金を稼ぎたいなら、仲介を通さず俺と契約してみる? ハルイチほどは出せないけど、その辺の居酒屋でバイトするよりは稼げるよ。」 
「……!」 

 ……驚いた。俺の名前だけじゃなく、バイトが居酒屋ということまで知っているのか。 

「君は月に何度か、俺が呼んだときに来てくれればいい。まあ、何をやるかって、それは君も分かっているよね。まさかそこまでウブとか言わないだろうな。ハルイチは最初から上手だったけど、君はそうはいかないだろうし、一から俺が仕込まなければならない。俺を喜ばせることができるようになれば、ちょっとずつお手当を上げていってもいいよ」 

 にっこりと微笑む眼鏡の奥の目は、形だけで笑ってない。 

「君の働き次第によっては、借金の利息分くらいにはなるだろうね。俺みたいな親切な奴は他にいないよ。なんだったら、君自身へ少しくらい小遣いをあげてもいいね。どうだい? 心配なら、お試し期間を設けてもいいよ」 
「……それが目的だったのか?」 
「んー? なんのことだい?」 
「俺の話を聞くと言って油断させて、俺にウリをさせようっていう魂胆か」 
「まあ、どうとってもらってもいいけど、君くらいの男の子に欲情するおじさんと二人きりになるって、まあそういうことだよね」 

 こんな胡散臭い男に話を聞いてもらおうだなんて、俺が甘すぎた。 
 怒りが腹の底から湧いてくる。しかしその反面、もし田崎と契約すれば、もっと何か情報を得られるんじゃないかという、どこか冷静で打算的な考えも頭に浮かんでいた。 

「さあ、どうする?」 

 このままだと、また行き詰まることは分かりきっている。 
 鏑木のウリのことについては、まだ未成年の俺には、正直荷が重かった。 

 三月四日を期限に、短期的であれば――。 
 浅はかにもそう考えたとき、俺のポケットに入れていたスマホから着信音が鳴り響いた。 

「え、あ、……鏑木?」 

 慌ててスマホを取り出し、画面を見ると、鏑木からの着信通知が表示された。 
 どうしよう。出るか出まいか……スマホを手に持ったまま、チラッと田崎を見た。田崎はそんな俺に、どうぞと手で合図する。俺は、画面に表示された受話器のアイコンをタップした。 

「あ、もしもし……? 鏑木?」 

 なんとなく気まずい感じで電話に出ると、受話スピーカーから鏑木の怒鳴り声が漏れ出した。 

『てめー! 今どこにいんだよ!!』 
「あ、え? 今?」 
『おめーを迎えにバイト先行ったら、出てこねーし、店の人に聞いたら今日は休みだって!? 俺聞いてねーし!』 

 もうもうそんな時間だったか。 

「あ、すまん、ちょっと急用ができて……」 
『あ゙? なんだよ急用って。もう終わったのかよ。どこにいんだ? 俺待ってんだけど』 
「あ、えっとな……」 

 田崎のほうを見ると、なんと田崎は腹を抱えて爆笑していた。 
 どうやら鏑木の怒鳴り声が、全部丸聞こえになっていたらしい。 

「くくっ、ハルイチもそんな大声出せるんだな~! いや、仲良いね君たち。もういいよ、帰って」 
「……もう帰れる。今駅近くだから。鏑木はまだ居酒屋の前?」 
『その辺うろうろしてる』 
「わかった。俺もすぐそっち向かうから。激安タナカマートで待っててくれ」 

 そういうと返事もなく、ブツッと電話が切れた。 
 ものすごい怒っているが、たぶん激安タナカマートで待っててくれていると思う。 

「……じゃ、そういうことなんで、すみません。俺、帰ります。今日はご馳走様です。ありがとうございました」 
「まあ、さっきの話だけどね。あまり裏のことについて、探りいれたりしないほうがいいよ。たまたま今回は俺だったから、こうして帰してあげられる。ヤバい奴が相手だったなら、今頃君はどこかのホテルにいるだろうね」 
「……ご忠告ありがとうございます」 

 会釈をして店を出ると、俺は激安タナカマートへ向かって走った。 
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