バッドエンド・タイムリープ!

Bee

文字の大きさ
上 下
28 / 69
3回目のリープ

28.絶交1

しおりを挟む
鏑木にこれから教室に戻ると連絡し、鏑木がいるはずの教室棟へ向かうと、教室棟の玄関のところで俺のリュックを片方の肩にかけた鏑木が、ポケットに両手を突っ込んで立っていた。 

「おっせーよ。どこ行ってたんだよー。教室で待ってたら見回りのセンセーにさ、さっさと帰れって追い出しやがってさー」 

 口を尖らせ、ブスくれたように文句を垂れながら、俺に持っていたリュックを差し出す。 
 だが俺から漂うピリついた空気に気がつくと、やや戸惑ったような表情を見せた。 

「……どした? 木嶋。なんかあったのか」 
「いや――」 

 言葉を濁しつつ、持ってきてもらって悪ぃなと、鏑木からリュックを受け取る。 

 いつもと変わらない鏑木。 

 こいつがウリをしているだなんて、俺には信じられない。 
 あの写真だって本物かどうか――。 

(くそっ、松永があんなやつだとは思わなかった) 

『やっと出来上がったから、明日、鏑木に見せようと思ってね』 

 鏑木が松永の絵を破壊した日、松永が絵のことを鏑木に話し、あの写真の存在をほのめかしていたなら? 
 鏑木が怒って当然で、さらに鏑木が松永の絵を壊したことの辻褄があう――。 

「……木嶋? マジでどーした? 顔がめっちゃこえー……」 
「鏑木、お前さ」 
「なに?」 
「その……松永と…………いや、なんでもない」 

 言いかけて言葉が詰まる。 

「はァ? なんだよ。はっきり言えよ。……松永になんか言われたのか」 

 松永と聞いて、鏑木が露骨に顔をしかめた。 

 ――はっきりと聞けばいい。お前、ウリやってんのかって。しかも男相手にって変な噂が流れてるぞって。 

 松永の言っていることが本当かどうか、ここで確認しておかないといけないわけだし、この話が鏑木の死の真相に近づく第一歩になる可能性だってある。 

 ……分かっているのに、俺はどうしても聞けなかった。 

「いや……その、……松永に変なこと言われたりとか、……しつこくつきまとわれていないか?」 
「…………」 
「何度か松永とトラブってるだろ? 何かあったのかなって……」 
「…………」 

 鏑木は何も言わず、俺から目をそらし、どこか睨みつけるような目つきで、虚空を見つめている。さっきまで俺にまとわりついていたピリついた空気が、今度は鏑木から漂っていた。 

 ――なんで何も返事をしてくれないんだよ、鏑木。 

 何もないならいつもみたいに『あるわけねーだろ』って、笑ってくれ。 
 なぁ、鏑木。俺たち親友だろ? ……もし、もし本当に何かあるなら、俺にぶつかってでも打ち明けてほしいんだよ。 

「……鏑木……?」 

 俺が名前を何度も呼び、それでも無言が続いた。 

『ごめん、何でもない』って言えるような空気でもなく、沈黙が俺の心に重くのしかかる。 
 もう松永のことは今でなくていい。この沈黙をどうにかしたかった。 
 俺の頭の中は、どうやってこの場を取り繕うかということでいっぱいになっていた。 

「……木嶋はさ」 

 反射的に鏑木を見る。 
 だが鏑木はそっぽを向いたままで、俺と目を合わせることなく言葉を続けた。 

「……木嶋はさ、なんで俺にそうやって執着してんだよ。松永に何言われたのか知んねーけど、どーでもいいじゃんか、俺のことなんてさー。最近知り合ったばっかなのに、俺のことなんでも知りたがって、ガチのストーカーじゃね?」 

 いつもの冗談めかしたようなものではなく、抑揚なく淡々としていて皮肉げで。まるで俺に幻滅したような、そんな言い方だった。 

「……もう話すことねーし。俺、帰るわ」 
「鏑木……!」 
「これでサヨナラな。仲良しごっこももう終わり。お前しつけーし、もう話しかけてくんなよな」 

 俺の脇をすり抜けて、校門へ向かおうとする鏑木の腕を、俺は咄嗟に掴もうとした。だが鏑木はただ無言で俺の手を払い除け、そのまま何かを言うことなく、行ってしまった。 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

上司と俺のSM関係

雫@3日更新予定あり
BL
タイトルの通りです。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

処理中です...