バッドエンド・タイムリープ!

Bee

文字の大きさ
上 下
23 / 69
2回目のリープ

23.消えた鏑木2

しおりを挟む
(おっかしーな。夜、スナックが開いている時間にもう一回来るか) 

 既読にならないメッセージに、追加でもう一度メッセージを送る。 
 もしかすると気がついていないだけかもしれないし、風邪ぶりかえして寝ている可能性もある。それなら起きたら返信してくるだろう。 

 だが夜のバイトが終わった後、開いたアプリのメッセージは、未読のまま残っていた。 

(鏑木、まだ治ってないのか。大丈夫なのか? まあ、スナックのホステスさんに聞けばわかるだろ) 

 これまで鏑木へのメッセージで未読のままなんてことは、一度もなかった。 
 俺はなんとなく不安になって、手早くリュックを背負うと、夜の街を急いだ。 

 鏑木から聞く限り、スナックはこれまで一度も夜営業を休んだことなどない。しかも今日は土曜の夜だ。絶対にやっているはず。 

 ……それなのに、スナックの営業中を示すドアの明かりは消えたままひっそりとしていて、何度ドアを叩いても、誰一人出てくることがなかった。 

(は……? なんでだ? こんなときに限って休みって……) 

 翌日も、俺は昼のランチバイトの終わりと、夜のバイト終わりにスナックへ行ったが、なぜかこの日もスナックは営業しておらず、鏑木とも連絡が取れないままだった。 
 まだ時間はある。まだ大丈夫だ。明日になったら、きっと鏑木は学校に来る。俺はそう信じて、その日を終えた。 

 ――だが、残り3日となった月曜、鏑木は学校に来なかった。 

 もう期限が迫っているにも関わらず、鏑木の居所は依然として掴めない状況に、俺は不安でいっぱいになっていた。 

 担任に確認するが、鏑木が休むことはよくあることで、しかも先週から体調を崩して休んでいることもあり、何も知らない先生は「お父さんからは、良くなるまで家で安静にしときますって先週連絡があったしな。体調がどうか、あとでお父さんに連絡しておくから」と楽観的だった。 

 この日俺は、学校が終わるとすぐに、スナックへ行った。 
 だが昨日と同じく、スナックのドアは固く閉ざされていた。スナックのドアの前には、新しいおしぼりのカゴが積まれているが、夜のバイトが終わった後もそれが回収された様子はなく、野ざらしとなっていた。 

 突然消えた鏑木。 

 俺の家に泊まりにくると言った、3月3日。鏑木が来ないのを確認すると、俺は学校を早退し、必死になって鏑木を探した。 
 桃の節句だかなんだか知らないが、桃の木らしきピンクの花の造花が至るところに飾り付けられた商店街を走り、路地を抜け、行きそうなところを全部まわった。 

「ハルちゃんかい? ここ最近は見てないな」 

 バーのマスターや激安タナカマートの店員にも、鏑木を見なかったか聞いて回ったが、誰も知らなかった。 

 鏑木のスマホへ何度もメッセージを送ったが、既読にはならない。 
 電話は――呼び出し音が鳴り続けるだけで、繋がらなかった。 

 まさかと思い松永にも聞いてみたが、鏑木とは接触していないと言い、手がかりを全部失った。 

 街中を探して、情報を必死で集め、最近の出来事で頭に引っかかったことは、この間の救急車の音。あれは近くのビルで飛び降りがあり、若い男性が一人死んだのだという。 
 聞いた話では、かなり高いところから落ち、ブロックに打ち付けたせいで頭が派手に割れ、顔はめちゃくちゃになり、身元不明で新聞に載っていたということだった。 

 だがあれは、鏑木と連絡が取れなくなるより前の話だ。 

 鏑木はどこに行ったのか。 
 なぜスナックは急に閉店したのか? 
 親父さんはどこにいったんだ。 

 わからない。何もかもがわからない。 
 鏑木は今どうしているんだろうか。 

 今頃何かに苦しんで、一人で死のうとしているんじゃないだろうか。 
 俺は、なんでこんなにも呑気にしていたのか。 

 気が狂わんばかりの3月3日を終え、とうとうその日を迎えた――。 

 3月4日。 

 この日俺は、一睡もできないまま朝を迎えた。 

 何度も鏑木のスマホに連絡し、既読のつかぬメッセージを大量に残した。 

 学校に行く時間がきても支度をすることすら憂鬱で、いっそのこと休んでしまったらいいのではないのかと、そんな考えが頭をよぎったが、どうせループになるのは決まっている。 

 ――いや、ただ行方不明なだけで、もしかすると今回は机の上には花が置かれていないかもしれない。だからきちんと学校へ行って、この目で確認すべきだ。 

 そんな僅かな希望も、まだ俺の胸にあった。 

 前日から何も喉を通らず、朝メシの代わりに水道の水を口をつけて飲む。3月の冷たい水が、寝不足の頭を少し覚醒させ、俺はなんとか支度を終えると、足取り重く学校へ向かった。 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

旦那様と僕・番外編

三冬月マヨ
BL
『旦那様と僕』の番外編。 基本的にぽかぽか。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

処理中です...