バッドエンド・タイムリープ!

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2回目のリープ

9.鏑木と仲良くなる方法2

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 ——あれから半月。 

 なんとか鏑木と親しくなろうと頑張ってはみたものの、鏑木と親しくなるどころか、俺はことごとく鏑木に振られまくっていた。 
 そもそも鏑木は用心深く、なかなか隙を見せない。 
 学校に来ている日も、休み時間は寝ているし、放課後声をかけようと席を立って振り向くと、もういない。 
 バイトのない日は繁華街をうろついてみるが、やっと見つけたと思ったら鏑木は俺を見るなり走って逃げてしまうし、運良く捕まえることができてもキモい、ウザいの一言で終わり。 

 ……正直いって、鏑木と俺は仲良くなれる気がしない。 

 だいたいヤンキー鏑木と仲良くって、一体何を話せばいいんだ? 
 そもそも俺は友達いないし、人とうまく付き合えるようなスキルなど持ち合わせていない。『友達になればいい』だなんて安易すぎるにも程がある。 

「よう木嶋くん、ハルちゃんには会えたか?」 

 鏑木を探して夜の繁華街を彷徨い歩くと出くわすのが、道でタバコをふかすマスターと常連のおっさんたちだ。 
 かつて俺を阻止したおっさんたちも、こう何度も出くわすと鏑木同様に俺も親しい存在になるのか、最近では俺と鏑木の追っかけごっこを楽しんでいるようだった。 

「ハルちゃん友達がいないからな。木嶋くんが友達になってくれたら、おっちゃんたちも安心だわー」 
「仲良くなれたら一緒に店に来い。俺がうまいオムライス作ってやっからな」 
「よし、それなら俺がジンジャエール奢ったる!」 
「おー言うなぁ。それなら俺はデザートにアイスでも奢るわ」 

 まるで賭け事のように、おっさんたちが口々に〝俺と鏑木が親しくなったとき〟に奢るものについて言い合うのを、「ははは、そんな日がくるといいデスネ」と苦笑いしながら聞いていた。 

 だがこのままでは、すぐに年末だ。年が明けて、またあの三月が訪れてしまう。 
 何もしなければ永遠に繰り返されるだろう秋から春のループ。 

 それだけは絶対阻止したい。 

  

 Q.鏑木と仲良くなるのはどうしたらいいのか。 

 俺は繁華街の飲み屋街にある居酒屋の厨房で皿洗いをしながら、その問についてぼんやりと考えていた。 
 以前……というか本来の時間軸でも居酒屋でバイトをしていたが、あれはアパート近くにある小さな居酒屋で、今度はチェーンのオシャレ居酒屋。 

 鏑木との遭遇頻度を増やすなら、街でバイトした方が都合がいいだろうということで、店長には悪いがあっちは辞めさせてもらって、この店に乗り換えた。 
 あっちだと時間に融通がきいたり、まかないが豪華で、残り物を持たせてくれたりと、一人暮らしの貧乏高校生の身としてはいろいろ都合がよかったんだが、仕方がない。 

「木嶋くん! 今洗ってるやつ終わったら上がっちゃって!」 

 バイトリーダーが、慌ただしくホールから厨房へ顔を覗かせた。 
 狭いキッチンの壁にかけられた時計を見ると、定時の二十時を過ぎていた。 
 この店は高校生バイトは二十時までと決まっている。遅くても二十時半には店を出ないと、店長に叱られてしまう。 

「了解っす」 
「はい、お疲れさん!」 

 洗い物を済ませ、厨房にいたスタッフに「上がりまーす」と声をかけた。 

「お疲れ様~」 
「お疲れ~! あ、帰る時ついでにゴミを出しといてよ」 
「うっす」 

 まとめられていた二つのゴミ袋を、裏の出入り口付近に持って出る。ささっとロッカーで着替え、「お疲れ様です」と形式的に声をかけてタイムカードを押すと、置いていたゴミ袋を持って裏口から外へ出た。 
 店専用の物置型ゴミステーションの扉を開けて、ゴミを放り込んでいると、俺のすぐ背後を人が駆け抜けた。 

「待てーー!! ゴラァ!!」 
「待たんかいクソガキがーー!!」 

 その後を物騒な怒声とともに、数人の男たちが追いかけていく。 

(……んん!?) 

 ものすごいスピードで走り去るあの後ろ姿。 
 飲み屋の赤いネオンに照らされた、黒の上下になびく派手派手しい金髪。 

「か、鏑木!? え? ちょ、あ、」 

 ガゴンと音を立てて急いでゴミステーションの扉を閉めると、走りやすいよう片側にかけていたリュックを背負い直し、慌てて奴らの後を追いかけた。 

「くそっ、鏑木どこ行った!?」 

 すぐに追いかけたはずが、このあたりに疎い俺は速攻で振り切られ、周囲の道をくまなく探すハメになった。 

(この辺路地が多すぎんだよ!!) 

 この辺は丁字路の多い複雑な地形で、しかも似たような店が乱立している。 
 その上、店と店の間の路地は細く薄暗く、全部を見て回るのはかなり骨が折れる。 

(どこだ!?) 

 何筋目かの路地に入り、やっぱりいなくて息急き切って丁字路から出てくると、奥の路地を覗き込むカップルを見つけた。 
 その不安げな様子からこの奥で何かがあると直感した俺は、ネオンの明かりすら届いていない暗い路地に飛び込んだ。 
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