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セイドリック、記憶をなくす5
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「さて、セイドリック。ここは覚えているか?」
汚く狭い、古いアパートの一室。
俺には見覚えがなく首を振った。
最初は連れ込み宿か何かかと思ったが、そうではないらしい。
玄関を開けると室内は暗く、中はよく見えない。備えてあった小さなランプに火を灯すと、そこは古いアパートによくある台所を兼ねた小さな部屋だった。しかし誰かが住んでいるにしては、部屋には物が乱雑に積み上がり、どう見ても物置きにしか見えない。
「あー、そうか。そうだよな。ここは俺が昔住んでた部屋だ。引き払った後、今は知り合いが物置きとして使っている。こっちだ」
小さいランプで足元を照らし、男二人あちこちぶつかりそうになりながら台所を抜け、奥に進むと小さな部屋があった。
そこには備え付けの寝台と小さな家具がいくつか置かれていて、カーテンのない小さな窓からは月の光が差し込んでいた。
手元の小さなランプが殆ど意味をなさないくらい、ここは明るい。
「よいせっと。おい、自分でちゃんと座れよ」
フラフラの俺をコウさんは寝台に乗せると、「ふー」っと声を出しながら俺を抱えていた側の肩をほぐすように回した。
「まったく、相変わらずあんたは重いな」
そう言って月明かりの室内でコウさんは笑った。
なんでこんな所に連れて来られたのか、さっぱり見当もつかぬまま、俺は酔いの冷め切らぬ頭でぼんやりと寝台に腰掛けていた。
「ほら、水だ。酔いを覚ませ」
コウさんは腰に巻き付けていた袋から水筒を取り出し、俺に渡した。ぬるい水が喉を伝い、酔った体に染み渡る。思わずゴクゴクと飲み干した。
「……ふう」
一息ついたところで水筒を返すと、コウさんは少しの間、その水筒をジッと見つめていた。
「……隣いいか」
コウさんの問いかけに、返事をする代わりに無言で少し横に腰をずらした。彼は俺の横に腰を下ろすと、俺と目を合わせないようにするためか、月の映る小さな窓のほうに目をやった。
「……さっき、あんたが定食屋で飲んだくれているのを聞いて、急いでここの鍵を借りて来たんだ。あんたを担いで屋敷に戻るのはちょっと大変だからな。ここのほうが近いし——それに」
コウさんが俺を見た。
「ここはあんたとのことが始まったきっかけになった部屋だ。ここからまたやり直すのもいいかと思ったんだ」
カーテンのない小さな窓から差し込む月の明かりが、コウさんを照らす。
「あの日もセイドリック、あんたは正体をなくすほど酔い潰れていて、仕方なく俺がここに連れ帰ったんだ」
コウさんが俺の目をじっと見つめながら、俺との馴れ初めを語る。
そういえば、俺がスーちゃんにフラれて酔い潰れた日、どうしてコウさんに恋慕するようになったのかを聞き忘れていた。
「あんたは寝ぼけて、俺をスルトさんの代わりに抱こうとしたんだ。まあ、結局あんたひとり、俺の尻で自慰をして終わったんだがな」
……なんだその馴れ初めは。
「そんなことでなんでコウさんと俺が付き合う流れになるんだ」
「翌日起きたら、責任取って結婚すると言いだしたぞ。……まあ、俺の体が相当良かったんだろ」
「なんだそれは。俺は最低なやつだな」
それを聞いてコウさんがハハッと愉快そうに笑った。
いよいよ自分で自分のことが分からなくなった。コウさんの尻で自慰をして、なんでコウさんに惚れるんだ?
コウさんもコウさんだ。そんな意味の分からんことで、よく俺と付き合う気になったな。
まだ酔いの残った頭は、自分のしでかしたことをまったく納得も理解もできないまま、ぐるぐるとハテナばかりが回っている。
「他にもいろいろあったんだよ。——まあ、とにかくだ。偶然にも今はあの時と同じ状況だ。あの日と同じことをやってみる価値はあるだろう?」
コウさんが策士かの如くニヤッと笑った。
「……で、どうすればいいんだ」
「あの日はそうだな。あんたがこの寝台に横になって。……そう、そんな感じだ」
コウさんの指示に従って、寝台に横になる。そして俺の前にコウさんが横たわり、俺に背を向けた。
「あの時はあんたが俺を無理矢理引き倒したんだが、まあ、こんな感じで後ろから俺を抱きしめてだな……」
俺は言われたとおりに背後から腕を回し、体を密着させた。鼻先にコウさんの短くて柔らかい髪が触る。
コウさんの体は思っていたよりも肉厚で、……こう、何というか、抱き心地は悪くない。いや、むしろいい。
「……それで、その次はどうすればいい」
「あの日は、……あんたは俺の尻に、その、アレを押し付けて腰を振っていた」
それを今するのか。
「……いや、俺に欲情していないのに、そこまで再現はしなくていい」
あのコウさんが、俺が欲情していないことで拗ねた!
本当にコウさんは俺のことが好きなのか。
はじめて聞く彼の拗ねて少しだけ低くなった声のトーンに、改めてああコウさんは俺のことが好きなのだなと、そう認識した。
(なんだ、コウさんがかわいくみえるぞ)
酔っているせいなのか、それとも俺の心境の変化なのか、はじめてコウさんをかわいいと思ってしまう自分がいた。
「セ、セイドリック!?」
俺はコウさんの尻に、まだ柔らかい俺のモノを押し当て、少しだけ腰を揺すってみた。瞬間、コウさんの体がビクッと震えるのを感じ、コウさんを抱きしめる腕にも力がこもる。
「あ……、セ、セイドリック! 無理しなくていい」
そのまま腰を擦り付け続けると、柔らかかった俺のモノも少しずつ芯を持ち始める。
ソレが大きく硬くなっていくにつれ、コウさんの背が耐えるように丸くなり、吐息と同時に押し殺すような声が漏れ聞こえ始めた。
(……コウさんも感じてるのか?)
酔って気が大きくなっている俺は、ふとした思いつきで体に巻き付けた手を下に移動させ、コウさんの股間を弄ってみた。
「セ、セイドリック!!」
コウさんは慌てて体を捻り、俺の手から逃れようとしたが、時すでに遅し。俺の手はしっかりとコウさんの硬く大きくなったモノを布越しに捉えていた。
「待てまて! そこまでしなくていい!! あの日あんたはそんなことしなかった! だから手を離せ……!」
「コウさん……あの日もコウさんはここを硬くさせていたのか?」
その問いにコウさんは必死で首を振る。
「いっ、今は……俺はあんたのことが好きなんたから仕方がないだろう!」
「……ぐぅ!」
さすがに今のは、俺の股間にきた。
俺はコウさんの上にのしかかると、片手でコウさんのモノを下衣の上から扱きつつ、尻に俺のモノをゴリゴリと擦り付ける。
「あっ……ちょっ、セイドリック!」
すっかり興奮した俺は、息も荒々しく吐精する勢いで腰を振っていた。
備え付けられた古い寝台はギシギシと激しく軋み、それにつられて横の棚も、ガタガタと物が落ちそうなほど揺れている。
しかし今の俺にはそんなこと、気にする余裕がない。
「う……あ……っ! あっあっ、ちょっと、待て」
ひどく気持ちがいい。
まだ直に触ってもないのに、やけに興奮する。あそこを硬くして俺を好きだと言ったコウさんの色香に当てられたのか。それとも——
「コウさん、コウさん……!」
ふーふーと荒い息を吐きつつ、コウさんの項に顔を押し付けながら、必死で腰を振り、あと少しでイケそうだとラストスパートをかけた瞬間、
「あだっ」
ゴンッと頭に強い衝撃を受けた。
「セ、セイドリック!?」
——俺の意識はそこで途絶えた。
汚く狭い、古いアパートの一室。
俺には見覚えがなく首を振った。
最初は連れ込み宿か何かかと思ったが、そうではないらしい。
玄関を開けると室内は暗く、中はよく見えない。備えてあった小さなランプに火を灯すと、そこは古いアパートによくある台所を兼ねた小さな部屋だった。しかし誰かが住んでいるにしては、部屋には物が乱雑に積み上がり、どう見ても物置きにしか見えない。
「あー、そうか。そうだよな。ここは俺が昔住んでた部屋だ。引き払った後、今は知り合いが物置きとして使っている。こっちだ」
小さいランプで足元を照らし、男二人あちこちぶつかりそうになりながら台所を抜け、奥に進むと小さな部屋があった。
そこには備え付けの寝台と小さな家具がいくつか置かれていて、カーテンのない小さな窓からは月の光が差し込んでいた。
手元の小さなランプが殆ど意味をなさないくらい、ここは明るい。
「よいせっと。おい、自分でちゃんと座れよ」
フラフラの俺をコウさんは寝台に乗せると、「ふー」っと声を出しながら俺を抱えていた側の肩をほぐすように回した。
「まったく、相変わらずあんたは重いな」
そう言って月明かりの室内でコウさんは笑った。
なんでこんな所に連れて来られたのか、さっぱり見当もつかぬまま、俺は酔いの冷め切らぬ頭でぼんやりと寝台に腰掛けていた。
「ほら、水だ。酔いを覚ませ」
コウさんは腰に巻き付けていた袋から水筒を取り出し、俺に渡した。ぬるい水が喉を伝い、酔った体に染み渡る。思わずゴクゴクと飲み干した。
「……ふう」
一息ついたところで水筒を返すと、コウさんは少しの間、その水筒をジッと見つめていた。
「……隣いいか」
コウさんの問いかけに、返事をする代わりに無言で少し横に腰をずらした。彼は俺の横に腰を下ろすと、俺と目を合わせないようにするためか、月の映る小さな窓のほうに目をやった。
「……さっき、あんたが定食屋で飲んだくれているのを聞いて、急いでここの鍵を借りて来たんだ。あんたを担いで屋敷に戻るのはちょっと大変だからな。ここのほうが近いし——それに」
コウさんが俺を見た。
「ここはあんたとのことが始まったきっかけになった部屋だ。ここからまたやり直すのもいいかと思ったんだ」
カーテンのない小さな窓から差し込む月の明かりが、コウさんを照らす。
「あの日もセイドリック、あんたは正体をなくすほど酔い潰れていて、仕方なく俺がここに連れ帰ったんだ」
コウさんが俺の目をじっと見つめながら、俺との馴れ初めを語る。
そういえば、俺がスーちゃんにフラれて酔い潰れた日、どうしてコウさんに恋慕するようになったのかを聞き忘れていた。
「あんたは寝ぼけて、俺をスルトさんの代わりに抱こうとしたんだ。まあ、結局あんたひとり、俺の尻で自慰をして終わったんだがな」
……なんだその馴れ初めは。
「そんなことでなんでコウさんと俺が付き合う流れになるんだ」
「翌日起きたら、責任取って結婚すると言いだしたぞ。……まあ、俺の体が相当良かったんだろ」
「なんだそれは。俺は最低なやつだな」
それを聞いてコウさんがハハッと愉快そうに笑った。
いよいよ自分で自分のことが分からなくなった。コウさんの尻で自慰をして、なんでコウさんに惚れるんだ?
コウさんもコウさんだ。そんな意味の分からんことで、よく俺と付き合う気になったな。
まだ酔いの残った頭は、自分のしでかしたことをまったく納得も理解もできないまま、ぐるぐるとハテナばかりが回っている。
「他にもいろいろあったんだよ。——まあ、とにかくだ。偶然にも今はあの時と同じ状況だ。あの日と同じことをやってみる価値はあるだろう?」
コウさんが策士かの如くニヤッと笑った。
「……で、どうすればいいんだ」
「あの日はそうだな。あんたがこの寝台に横になって。……そう、そんな感じだ」
コウさんの指示に従って、寝台に横になる。そして俺の前にコウさんが横たわり、俺に背を向けた。
「あの時はあんたが俺を無理矢理引き倒したんだが、まあ、こんな感じで後ろから俺を抱きしめてだな……」
俺は言われたとおりに背後から腕を回し、体を密着させた。鼻先にコウさんの短くて柔らかい髪が触る。
コウさんの体は思っていたよりも肉厚で、……こう、何というか、抱き心地は悪くない。いや、むしろいい。
「……それで、その次はどうすればいい」
「あの日は、……あんたは俺の尻に、その、アレを押し付けて腰を振っていた」
それを今するのか。
「……いや、俺に欲情していないのに、そこまで再現はしなくていい」
あのコウさんが、俺が欲情していないことで拗ねた!
本当にコウさんは俺のことが好きなのか。
はじめて聞く彼の拗ねて少しだけ低くなった声のトーンに、改めてああコウさんは俺のことが好きなのだなと、そう認識した。
(なんだ、コウさんがかわいくみえるぞ)
酔っているせいなのか、それとも俺の心境の変化なのか、はじめてコウさんをかわいいと思ってしまう自分がいた。
「セ、セイドリック!?」
俺はコウさんの尻に、まだ柔らかい俺のモノを押し当て、少しだけ腰を揺すってみた。瞬間、コウさんの体がビクッと震えるのを感じ、コウさんを抱きしめる腕にも力がこもる。
「あ……、セ、セイドリック! 無理しなくていい」
そのまま腰を擦り付け続けると、柔らかかった俺のモノも少しずつ芯を持ち始める。
ソレが大きく硬くなっていくにつれ、コウさんの背が耐えるように丸くなり、吐息と同時に押し殺すような声が漏れ聞こえ始めた。
(……コウさんも感じてるのか?)
酔って気が大きくなっている俺は、ふとした思いつきで体に巻き付けた手を下に移動させ、コウさんの股間を弄ってみた。
「セ、セイドリック!!」
コウさんは慌てて体を捻り、俺の手から逃れようとしたが、時すでに遅し。俺の手はしっかりとコウさんの硬く大きくなったモノを布越しに捉えていた。
「待てまて! そこまでしなくていい!! あの日あんたはそんなことしなかった! だから手を離せ……!」
「コウさん……あの日もコウさんはここを硬くさせていたのか?」
その問いにコウさんは必死で首を振る。
「いっ、今は……俺はあんたのことが好きなんたから仕方がないだろう!」
「……ぐぅ!」
さすがに今のは、俺の股間にきた。
俺はコウさんの上にのしかかると、片手でコウさんのモノを下衣の上から扱きつつ、尻に俺のモノをゴリゴリと擦り付ける。
「あっ……ちょっ、セイドリック!」
すっかり興奮した俺は、息も荒々しく吐精する勢いで腰を振っていた。
備え付けられた古い寝台はギシギシと激しく軋み、それにつられて横の棚も、ガタガタと物が落ちそうなほど揺れている。
しかし今の俺にはそんなこと、気にする余裕がない。
「う……あ……っ! あっあっ、ちょっと、待て」
ひどく気持ちがいい。
まだ直に触ってもないのに、やけに興奮する。あそこを硬くして俺を好きだと言ったコウさんの色香に当てられたのか。それとも——
「コウさん、コウさん……!」
ふーふーと荒い息を吐きつつ、コウさんの項に顔を押し付けながら、必死で腰を振り、あと少しでイケそうだとラストスパートをかけた瞬間、
「あだっ」
ゴンッと頭に強い衝撃を受けた。
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