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ノンケは男を好きになれるのか2

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「ほ、本当にいいのか?」
 
「セイドリックさんだって、俺みたいなタイプとはヤッたことないんだろう? その、物足りないと感じるかもしれない」
 
 そんなことはない。最初から俺はコウさんに欲情している。物足りないなどあるはずがない!
 
 しかしまさか、こんな展開がまっているとは。絶縁宣言覚悟で来たというのに……!
 
「ど、どこから始めるんだ?」
 
 コウさんのいうお試しとはどこまでのことを言うのだろうか。
 俺は期待して大丈夫なのだろうか。
 
 あまりのことに心臓が今にも飛び出さんばかりにバクバクと激しい音を立て、俺は思わず胸に手を当てる。
 
 
「まずは、そうだな。口づけからはどうだ」
 
「いいのか」
 
「一度許したしな」
 
 いいのか——————!!
 
 俺は半信半疑のまま、机越しに顔を近づけた。
 コウさんが避ける気配はない。
 
 あの時は俺が怖気付いて、唇に直接口づけすることができなかったが、今日は違う。
 
 心を落ち着かせ、俺はゆっくりと、軽く、口づけた。
 
 ふにっとした感覚に驚き、すぐに顔を離すと、コウさんはニッと笑った。
 
「なんだ、できるじゃないか」
 
 柔らかい。嘘じゃない。
 コウさんは嫌がる気配はない。むしろ余裕そうだ。
 
 そんなコウさんに安堵し、もう一度唇を重ねる。
 
「……んん」
 
 少し激しめに唇を吸い上げては「大丈夫か」と問うと、コウさんが「大丈夫だ」と言う。何度も確かめながら、角度を変えては口づけを深めていくのを繰り返す。
 
「ん……は……」
 
 だがコウさんが薄っすらと口を開け、俺の舌の侵入を許したのをきっかけに、俺は夢中でコウさんの舌を吸い上げ、口内を貪った。
 
 これは本当に夢じゃない。コウさんが俺に唇を許してくれている。
 
 コウさんの口からはあの爽やかな茶の味わいがした。
 
 いつまでも味わっていたくて、何度も何度もくり返した。挙げ句、腕を強めに叩かれ「しつこい」と怒られてしまった。
 
「セイドリックさんの髭は、ちょっと痛い」
 
「俺は体毛がちょっと濃くてな。髭も濃いんだ。すまない。嫌ではなかったか」
 
 コウさんが、涎でベトベトになった口元を拳で拭きながら頷く。
 
「髭は意外と大丈夫だった。だが、頬を擦り寄せられると痛い。ヤスリみたいだな」
 
「髭をきれいに剃れるよう、善処する」
 
「まあ、そこはいい。口づけは問題なかったから、次だ」
 
 次……!
 次とは!?
 ほ、本当にいいのか? 口づけ以上のことも!?
 
 それならばこんな所ではなく、落ち着いてできる部屋に移りたい。
 
「その、続きをするなら、部屋を移ろう。コウさんの部屋を用意してあるから、そこはどうだ」
 
「俺の部屋?」
 
「そうだ。寝泊まりできる部屋を用意すると言っただろう」
 
 俺はガシッとコウさんの手を握った。
 
 これからそれ以上のことをやろうっていうんだ。手を握るくらいどうってことないだろう。コウさんも黙って握られている。
 
 俺は開き直ってその手を引っ張っり、二階に用意したコウさんの部屋に連れて行った。
 
 コウさんの手は細長く、思ったよりも薄い。だが皮膚は厚く硬い。これまでの過酷な労働がその手から感じ取れる。
 
 そういう俺の手も、一般の男性よりぶ厚く、その上ゴツくてマメがたくさんある。
 
 俺はコウさんの男らしい手が大好きだが、柔い女の手しか握ったことがないコウさんはどうだろうか。
 
 ゴツくてデカい俺の手が嫌ではないだろうか。
 
 俺は階段に向かいながら、そんなことばかり考えていたが、それはすぐに杞憂だと分かった。
 
「セイドリックさんの手はデカイな! 思っていた以上にデカい! それにかなりの肉厚だな。俺の手じゃ握りきれない」
 
 コウさんはそう言って声をたてて笑い、俺の手の中で、何度も握ったり開いたりしていた。
 
 子供のようにはしゃぐコウさんに、俺は嬉しくなって、握る手に少しだけ力を込めた。
 
 
 
 
「ほら、ここがコウさんの部屋だ」
 
 扉を開けると、青を基調にしつらえた部屋が広がる。
 
「——いい部屋だな。ここを本当に俺が使っていいのか」
 
 コウさんが呆気に取られたように、室内を見回す。
 
 ここはコウさんのために、コウさんをイメージして整えた部屋だ。コウさん以外に使わせる気は毛頭ない。
 
「コウさんのために、内装を全部やり直したんだ。シンプルなほうが好きだろうから、調度品も変えたんだ。この美しい深い青が、コウさんに似合うと思ってな。この部屋はコウさんのためにしつらえた部屋だから、コウさんの部屋だ」
 
 そういうと、コウさんは頭を抱えて座り込んでしまった。
 
「ど、どうした? 気に入らなかったのか? コウさんの好きなようにやり直しても構わないぞ」
 
「……なんであんたはそうなんだ」
 
「ん?」
 
 ガバッと勢いよく立ち上がったコウさんの顔は、ほんのり赤かった。
 
「ああ、もう、そういうとこだよ。本当にタチが悪いな。もういい、続きだ、脱げ!」
 
 そうヤケクソのように言うと、コウさんはいきなり何の躊躇いもなく、ガバッと上を脱いだ。
 
「は? え……」
 
 いきなり上半身裸になったコウさんに目が釘付けに。凝視したまま俺が固まっていると「さっさっと脱げ」と足で蹴られてしまった。
 
 照れ隠しなのか、はしゃいだ感じが少し楽しい。
 
 言われるがまま上を脱ぎ、コウさんを見るともう下着姿になっていて、際どいその姿に思わず目が釘付けになる。
 
「コ、コウさん、下はいつもそれなのか」
 
 コウさんの下着は布を巻いただけの簡素な褌姿だった。
 
 それはさすがに際どい! 際どすぎる!! ほとんど紐みたいなものじゃないか。
 
「何か変か? 人足はこれが常識なんだが。これで川にも入れるし、ラクなんだ」
 
 ほ、本気なのか? みんな本当にそんな格好なのか? それで川に入るって?
 
 いやいやいや、そんな露出度の高い下着、そんなの履いている奴などいないだろう!?
 売っているのも見た事ないぞ!?
 
「普通は、俺のやつみたいな裾の長い肌着だぞ!」
 
 俺は勢いよく下を脱ぎ、下着姿を堂々と晒した。
 
 今はみな膝くらいまである裾の長い、薄い生地の下着が主流なのである。
 そんな露出の高い下着は、愛好家以外、誰も履いていない!
 
 そう俺は主張したかったのだが、当のコウさんはある一点を凝視していた。
 
「…………もう勃ってるのか」
 
 しまった~!! バレてしまった!!
 
 口づけの段階で、俺のモノは完全に勃起し、薄い肌着を中から思いっきり持ち上げていた。
 
 部屋にやや気まずい雰囲気が漂う。
 
「……すまない。さっきからすでにこの状態だ。……もしかして、引いたか」
 
「あ、いや、まあ男だからな。仕方がない。……ちょっと大きさが気になるくらいで」
 
「そ、それはあとで確認してくれ」
 
 大きさはさておき、もうバレてしまっては仕方がない。今更隠すのもおかしいので、俺は開き直ることにした。
 
 あれだけ口づけした上に、目の前に愛しい人が半裸で立っていて、この状況で勃たないほうがおかしいのだ。
 
「そうしよう。では、体を触って見てもいいか」
 
 俺は頷くと、コウさんが俺の目の前に立った。
 
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