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セイドリックの恋2
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カーテンの隙間から落ちる眩しい光、見知らぬ部屋、そしてガンガンと頭に鳴り響く鐘のごとく痛み……。
「う……いててて」
うずく頭を抱えながら俺は体を起こした。
——最初は娼館か連れ込み宿にでも酔った勢いで来たのかと思った。
他人のにおいのする生活感溢れた部屋。
安物の狭い寝台には、俺の他に、こちらに背を向けて眠る男がひとり……。
「コ、……コウさん…………?」
自分の横で眠る男がコウさんだと気がついた瞬間、俺の頭から眠気はふっ飛び血の気が引いた。
コウさんは下着一枚、上は裸のまま、半裸で俺に寝台を譲るように端っこで背を丸めて寝ていた。
寝台の周りには、丸められ脱ぎ散らかされた衣服。
シーツは一部ガビガビしていて、……そして俺は、俺は下半身丸出しで、吐精したカスまでこびりついていた……。
(ま、まさか俺はやっちまったのか!?)
それはいかにも情事の後と言わんばかりの光景にもかかわらず、何があったのか、俺には全く思い出せない。
一番最後の記憶は、定食屋だ。コウさんの声が聞こえたところまでは覚えている。それから何があったのか……。
(全く記憶がない!!)
なんでこんなことになってしまったのか。俺はコウさんを襲ってしまったのだろうか。……同意……ではないよな。コウさんは異性愛者だ。
となるとやはり俺がコウさんを襲ってしまったとしか思えない。
「……ん…………」
コウさんの体が動き、目覚めの声が聞こえ、俺はビクリとしてコウさんが起きるのを見守った。
彼は、少し伸びをして丸まっていた体を伸ばすと、ゆっくりと体を起こし、俺が起きていることに気がつくと不機嫌そうに振り向いた。
コウさんは俺が固まったまま動けないのを見て、少しため息を吐きながら、寝起きで少しボサついた頭を掻く。
そして何か言うことはないのかとでも言わんばかりに、こちらをジト目で見た。
「……あの、コウさん。き、昨日のことを俺は覚えていないのだが…………」
俺はコウさんの顔色を窺った。
「……何も覚えていないのか」
ジロリと俺を睨む。コウさんの俺を見る目は冷ややかだ。こんなに怒ったコウさんははじめて見る。
「す、すまない……。何があったか教えて貰えないだろうか。もしかして、その……」
「あーー…………。ここは俺の家だ。昨日は定食屋で酔いつぶれていたセイドリックさんを背負ってここまで来た。起こしても起きなかったから仕方なく、だ。介抱して寝台に寝かせた。——セイドリックさんが思っているようなことは何もない。あ、いや、何かはあったが最後まではやっていない、というのが正しい」
「さ、最後まではやっていないが、俺がコウさんを襲ったのは事実ということか」
その問いに、コウさんは鼻梁にシワを作った。
「俺の尻を使って自慰をした挙げ句、俺にぶっかけた」
「…………!!! ぶ、ぶ」
ぶっかけた!!
あろうことかコウさんの尻に股間を押し付けて自慰をして、ぶっかけたのか……!! 俺は!!
「体も弄られて散々触られた」
しかも無理やり触ったのか……!!
「………………も、申し訳ない!!!」
俺はもう頭を寝台にこすりつけ、懸命に謝るしかなかった。
「酔っていたとはいえ、介抱してくれたコウさんには迷惑をかけてしまった!! 本当に申し訳ない!!」
コウさんは黙っていた。土下座をしている俺からはコウさんの顔が見えない。困っているのだろうか、それとも怒っているのだろうか。
「コウさん、本当に申し訳ない!! 俺のしでかしたことに責任を取りたい!! いや責任を取らせてくれ!!」
そうだ、俺はコウさんの心と体に傷をつけてしまったのだ。責任をとらなければならないんだ。
「婚姻するなり責任はとる!!」
「…………は?」
——どうやら俺はコウさんの逆鱗に触れてしまったようだ。
何度も頭をこすりつけて謝り、責任を取る、結婚して償う、今後は俺のすべてを投げ売ってでもコウさんに尽くすと言ったところで、コウさんが「いい加減にしやがれ!!」と激怒し、俺を寝台から引きずり出し、力ずくで外に放り出した。
俺は下半身をしまい忘れていたことに、外に放り出されてから気がついた。服を直しながら扉を叩いたが、近所の迷惑になるからやめろと扉越しに怒鳴られ、俺は渋々コウさんの部屋の前から離れることにした。
「……コウさん…………」
小さな三階建ての安アパート。コウさんの部屋はそこの二階にある。
遠くからじっと窓を見つめたがカーテンが開く気配もなく、俺は仕方なく帰路についた。
どうしよう。どう詫びたら許してくれるか。
あれから俺の頭にはそればかりがあった。
とりあえず定食屋で会えるのを待とう。それしかない。家に行っても、もう会ってはくれないだろう。
俺はどうやったら許して貰えるかばかり考え、責任をとらなければならないと思いこんでいた。
……思い込みの激しい俺は、コウさんの気持ちなんて何一つ考えていなかったんだ。
「う……いててて」
うずく頭を抱えながら俺は体を起こした。
——最初は娼館か連れ込み宿にでも酔った勢いで来たのかと思った。
他人のにおいのする生活感溢れた部屋。
安物の狭い寝台には、俺の他に、こちらに背を向けて眠る男がひとり……。
「コ、……コウさん…………?」
自分の横で眠る男がコウさんだと気がついた瞬間、俺の頭から眠気はふっ飛び血の気が引いた。
コウさんは下着一枚、上は裸のまま、半裸で俺に寝台を譲るように端っこで背を丸めて寝ていた。
寝台の周りには、丸められ脱ぎ散らかされた衣服。
シーツは一部ガビガビしていて、……そして俺は、俺は下半身丸出しで、吐精したカスまでこびりついていた……。
(ま、まさか俺はやっちまったのか!?)
それはいかにも情事の後と言わんばかりの光景にもかかわらず、何があったのか、俺には全く思い出せない。
一番最後の記憶は、定食屋だ。コウさんの声が聞こえたところまでは覚えている。それから何があったのか……。
(全く記憶がない!!)
なんでこんなことになってしまったのか。俺はコウさんを襲ってしまったのだろうか。……同意……ではないよな。コウさんは異性愛者だ。
となるとやはり俺がコウさんを襲ってしまったとしか思えない。
「……ん…………」
コウさんの体が動き、目覚めの声が聞こえ、俺はビクリとしてコウさんが起きるのを見守った。
彼は、少し伸びをして丸まっていた体を伸ばすと、ゆっくりと体を起こし、俺が起きていることに気がつくと不機嫌そうに振り向いた。
コウさんは俺が固まったまま動けないのを見て、少しため息を吐きながら、寝起きで少しボサついた頭を掻く。
そして何か言うことはないのかとでも言わんばかりに、こちらをジト目で見た。
「……あの、コウさん。き、昨日のことを俺は覚えていないのだが…………」
俺はコウさんの顔色を窺った。
「……何も覚えていないのか」
ジロリと俺を睨む。コウさんの俺を見る目は冷ややかだ。こんなに怒ったコウさんははじめて見る。
「す、すまない……。何があったか教えて貰えないだろうか。もしかして、その……」
「あーー…………。ここは俺の家だ。昨日は定食屋で酔いつぶれていたセイドリックさんを背負ってここまで来た。起こしても起きなかったから仕方なく、だ。介抱して寝台に寝かせた。——セイドリックさんが思っているようなことは何もない。あ、いや、何かはあったが最後まではやっていない、というのが正しい」
「さ、最後まではやっていないが、俺がコウさんを襲ったのは事実ということか」
その問いに、コウさんは鼻梁にシワを作った。
「俺の尻を使って自慰をした挙げ句、俺にぶっかけた」
「…………!!! ぶ、ぶ」
ぶっかけた!!
あろうことかコウさんの尻に股間を押し付けて自慰をして、ぶっかけたのか……!! 俺は!!
「体も弄られて散々触られた」
しかも無理やり触ったのか……!!
「………………も、申し訳ない!!!」
俺はもう頭を寝台にこすりつけ、懸命に謝るしかなかった。
「酔っていたとはいえ、介抱してくれたコウさんには迷惑をかけてしまった!! 本当に申し訳ない!!」
コウさんは黙っていた。土下座をしている俺からはコウさんの顔が見えない。困っているのだろうか、それとも怒っているのだろうか。
「コウさん、本当に申し訳ない!! 俺のしでかしたことに責任を取りたい!! いや責任を取らせてくれ!!」
そうだ、俺はコウさんの心と体に傷をつけてしまったのだ。責任をとらなければならないんだ。
「婚姻するなり責任はとる!!」
「…………は?」
——どうやら俺はコウさんの逆鱗に触れてしまったようだ。
何度も頭をこすりつけて謝り、責任を取る、結婚して償う、今後は俺のすべてを投げ売ってでもコウさんに尽くすと言ったところで、コウさんが「いい加減にしやがれ!!」と激怒し、俺を寝台から引きずり出し、力ずくで外に放り出した。
俺は下半身をしまい忘れていたことに、外に放り出されてから気がついた。服を直しながら扉を叩いたが、近所の迷惑になるからやめろと扉越しに怒鳴られ、俺は渋々コウさんの部屋の前から離れることにした。
「……コウさん…………」
小さな三階建ての安アパート。コウさんの部屋はそこの二階にある。
遠くからじっと窓を見つめたがカーテンが開く気配もなく、俺は仕方なく帰路についた。
どうしよう。どう詫びたら許してくれるか。
あれから俺の頭にはそればかりがあった。
とりあえず定食屋で会えるのを待とう。それしかない。家に行っても、もう会ってはくれないだろう。
俺はどうやったら許して貰えるかばかり考え、責任をとらなければならないと思いこんでいた。
……思い込みの激しい俺は、コウさんの気持ちなんて何一つ考えていなかったんだ。
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