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6※ 初夜

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「……ハルカという娘とも口づけをしたのか?」
「……していない。僕のハルカに対する気持ちは、純粋なものだ——……っ! んん……っ」

 そもそも王族は〝婚姻を結ぶまでは純潔であれ〟という慣習があり、結婚するまでは清純でいなければならず、それはローレントも同様で、当然のことながら婚約者のマリアーナともキスのひとつだってない。

 まあマリアーナとは本当にそんな関係でもなかったから、エスコートするとき以外触れることはなかったのだが、事実ローレントにとって、これがはじめてのキスで、はじめてのセックスとなる。

 荒々しく唇を吸われ、抵抗しようと口を開けると、分厚い舌が滑りこんできた。知識はあったが、どうしたらいいかも分からず、ローレントはされるがまま、口内を舌で弄られた。

 口蓋をなぞり、舌をもつれ合わせて激しく吸われ、はしたない淫靡な音を立て、めまいとともに頭がぼんやりとしてくる。
 腰で止まっていた手も、ローレントの丸く形の良い尻を痛いほど揉みしだき、指が後孔をのあたりを何度も撫でた。そして窄みにその太い指がかかると、もったいぶるようにゆっくりとめり込ませた。

「……なんだ、もう後ろは用意万端か? 俺の指がすんなりと入っていくぞ」
「……ちが…………あ……っ」

 こうなることは望んでいなかったが、ラミネットに言われたとおり、念の為あの小壺に入ったオイルを風呂でしっかりと塗り込んでいた。だが、経験のないローレントは、こうすることの意味が、実はよく意味が分かっていなかった。

 今、辺境伯に指を挿れられ、そこで初めてその意味を理解した。

「後ろはほぐれてはいるが、まだこれでは足りないな。俺の指が一本しか入らない。もう少し解してやるから、しばらく我慢しろ」

 これでもかなり頑張って塗り込んできたのに。
 ローレントの指とは比べ物にならないくらい太い辺境伯の指が、奥まで差し込まれ、あまりの異物感に身を捩る。

「おい、力を抜け。力んでいると、痛むぞ。ほら、俺の首にしがみつくといい」
「……ん……~~~~ん——…………」

 辺境伯の首にしがみつき、なんとか悲鳴をあげないよう、必死で耐える。2本目の指が入ったとき、尻が破けるかと思ったが、それも丁寧にほぐされ、今では3本目が挿入されている。
 
 ときおり、中にあるしこりのようなものに指が当たると、反射的に腰が跳ねてしまう。そのとき中を締め付けてしまうらしく、辺境伯が力を緩めろと尻を叩く。わざとではない、とも言えず、「ごめんなさい」を繰り返した。

「……しっかりほぐれたし、もういい頃だろう」
「……んん…………は……、——あっ」

 辺境伯の指がゆっくりと抜かれる。緩んだ孔から、温まって溶けたオイルがたらりと一筋、尻を伝うのを感じた。

「この長椅子で終えてもいいが、せっかくの初夜なのだから、寝室へ移動しよう」

 たったこれだけのことで力が抜けて動けないでいるローレントを、辺境伯は軽々と抱きかかえた。
 そして部屋から続く寝室のドアを開け、体格のいい辺境伯が寝転んでも余裕のある大きなベッドに、ローレントを寝かせた。

「……本当にお前は美しいな。これまでいろいろな女を抱いたが、お前ほど美しい者はいなかった。これが王子だとはな。お前が王女であったら、大勢の男どもを虜にしただろう」

 そう言って、辺境伯は着ていた長いガウンのような上着を脱いだ。
 厚みのある盛り上がった筋肉が、惜しげもなく晒される。
 その体を見て、ローレントは目を見張った。
 逞しさに目を奪われただけではない。なんとその盛り上がった筋肉を、赤い体毛が腕から背中にかけてみっちりと覆っていた。ただ一般的に毛深いという類のものではない。それはまるで獣の毛皮のような密度だ。

「…………え……?」
「ああ、これか。これが獣人の正体だ」

 辺境伯は自身の腕の毛を、ローレントに見せつけるように撫でてみせた。

「獣人辺境伯の噂は本当だ。俺は獣人族の末裔で、この体毛は、いわば先祖還りといったところだ。暗闇に強い金の目も、この人並み外れた体の強さも、すべて先祖からの贈り物だ」
「獣人…………」
「……お前は知らなかったようだが……王は知っているぞ。知っていて、お前を俺に差し出した。獣の妻になれと。お前は俺に穢されに来たのだ。高貴なお前を俺みたいな奴の元に寄越すとは、王の怒りは相当なものらしいな」

 父上の怒り。そうかもしれない。もっともらしいことを言っていたが、父は自分を捨てたのだ。不要になった息子を、自身の視界に入ることのない遠い辺境の地に——

「……可哀想なお前に情けをやろう。今ならまだやめることができる。願いを変えるか。それとも——」
「——いい。継続で。僕は誰がなんと言おうがハルカを……——」
「分かった。——よほど好いているのだな、その娘を」

 辺境伯は、自身の下着をずらし、ペニスをさらけ出した。その大きさは驚くほどで、ローレントのものの倍はあるのではないかという大きさだった。

 見た瞬間、ローレントの口から悲鳴のような声が出そうになったが、すんでのところで飲み込んだ。

「女では無理だったが、男なら全部飲み込めると聞く。お前が受け入れてくれるとは、ありがたい」

 ベッドサイドから小さな小瓶を取り出し、その大きな手に出した。ひどく甘い匂いのする液体で、体の残った酒に反応してか、その匂いを嗅ぐと頭がずんと重くなる。

 辺境伯はそれを自身のペニスに塗ると、ローレントの足を広げるように軽々と持ち上げた。

「ほう、王子サマのアソコはまだおねんね中か。まあ酒が入ると勃たない者もいると聞く。触って勃たせてやってもいいが、先にいかれると困るからな。やめておこう」

 皮肉めいた言葉を発しながら辺境伯は喉の奥で嗤った。そしてその大きく筋の張ったペニスをローレントの後ろにあてがい、先ほど塗ったものをローレントにも塗り広げるように、何度か擦り付けた。

「おっと、そうだった」

 辺境伯は、恐怖で固まったローレントの体をいとも容易くうつ伏せにし、足を広げさせると、尻を叩き、ローレント自身に腰を高く持ち上げさせた。

「初めてのときは、後ろからのほうが挿れやすいと聞いた。——ああ、背後からの眺めもいいな。高貴な者を屈服させているかのようで、支配欲が満たされる」

 かのようではなく、完全に屈服させている。ローレントの頭の中には、今恐怖しかない。ただこの夜を耐えれば、ハルカを助ける道に繋がる。ローレントはシーツを固く握りしめた。

「……殿下、獣人の末裔であるこのわたくしめのペニスは、中に入ると膨らむようにできております。一度入ると最後まで抜けませんのであしからず」
「!!」

 耳元でそう囁かれ、ローレントは絶望的な気分に陥った。そんなローレントを嘲笑うかのように、辺境伯は容赦なくその硬くエラの張った先端を窄みに押し当て、一気に挿入した。

「——ぐ——————~~~~~~~~っ!!」
「……体から力を抜け。せっかく解してやったのに、それじゃ痛いだけだ」

 尻をパシンと叩かれ、ローレントは何度も深呼吸をし、懸命に体から力を抜く。
 なんという異物感か。中に押し入られる感覚も不快だが、なにより内蔵を押し上げられる圧迫感が酷い。
 口から内臓という内臓が全部出てしまいそうだ。

「——ああ、いいぞ。その調子だ。俺が達するまでしっかり耐えろ」
「あっ——……く…………ぅ……————~~~~~」

 セックスというものは、ひどく気持ちのよいものだと聞いていた。ラミネットも、女性と致すときは、優しく殿下がリードをし、愛を伝え心を通わすことで、互いが絶頂に至り子を結ぶと、そう言っていた。
 だが今のこの状況は一方的なものでしかなく、愛などひとかけらもない。

 ——しかしこの状況を招いたのは、自分自身であり、この痛みや苦しみが刑罰のひとつであるならば、それは受け入れるしかない。そしてこれがハルカ救出に繋がるのであれば。

 辺境伯のものが中で大きく膨らみ、圧迫感を増していく。何度も何度も貫かれ、ローレントの頭の中は苦しさに耐えるだけでいっぱいで、今自分が何を口走っているのかさえ分からない。

 首筋に鋭い痛みを感じたのを最後に、ローレントの意識はそこで途絶えた——
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