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番外編
番外編 皇子の夜3※
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アンバーがこの皇子宮に引き取られたとき、母親とはそこで別れたのが最後だった。
幼きアンバーは一度も会ったことのない父どころか、産んでくれた母のことも、その小さな頭の中に留めておくことはできなかった。
そして皇子宮の者らも、母のこととなると皆口をつぐみ、父や母について、実際サーシャに聞かされるまでは何ひとつ知らされることはなかった。
母も父もおらず、その高貴な立場ゆえ幼い皇子の遊び相手となる者などもこの皇子宮にはいない。
アンバーはひとり、大人たちの中で孤独に生きていた。
誰かに愛されたこともなく、ゆえに誰かを愛することもない。
年頃になり若い娘や男たちに色目を向けられることはあっても、本気で付き合うようなこともなく、欲の発散の相手としか見たことはなかった。
例えそれがどんなに魅力的な相手であっても。誰かを愛するという感情が自身には欠落しているのだと、そう思っていた。
——だからこそノーマは特別なのだ。
もし運命があるならば、きっとこれは運命で、鳥のように番というものであるならば、きっとそうなのだろう。
いつまでも手元に置いておきたいし、側で見守ってやりたい。
どこかへ行きたいというのであれば共に行き、同じ景色を眺めていたい。
もしこの地に彼を永遠に留めておくことができるのならば、自分は王となりて王道楽土の治世を誓おう。
「アンバー様?」
急に黙ってしまったアンバーに、ノーマは抱きしめたまま何事かとアンバーの名を呼んだ。
「……ノーマ」
その声に反応し我にかえると、すぐにアンバーはノーマを抱き返した。
優しく頬に口づけると、安堵したのかノーマはくすぐったそうにし愛らしく笑い、そして唇が重なる頃には、その口からは熱い吐息が漏れていた。
愛撫を再開し、抽挿が激しくなると、息を荒らげ、何度もアンバーの名を呼び、その激しさに耐えきれず嬌声をあげた。
「あ! や、アンバーさ、ま、あ、あああああ!」
ノーマが抵抗しないことをいいことに、アンバーは逃さぬようノーマの腰を掴み、周囲の花が跳ねて舞い散るほど腰を打ち付けた。
ノーマがあれほど怖がっていた最奥も、無理やりこじ開け、そこを穿つたびに先端が奥にぐぽっと嵌まり込んだ。
もうノーマの口からは悲鳴のような喘ぎ声しか出ていない。
ノーマの陰茎からは、もう何度となく白濁が溢れだし、ノーマの腹をししどに濡らした。
「ノーマ、愛している」
最後にそう呟き、最奥にぐぼっと突きこむと、ノーマの中に勢いよく熱い種を注ぎこんだ。そしてほとんど意識のないノーマにむしゃぶりつくようにして口づけた。
あれから何度体を重ねたのだろう。
熱い睦言を耳に囁き、口づけを交わすと、お互いの体を貪りあい、腰を揺らし果てて、またそれを繰り返し……。
途中からはもう媚薬の効果など消え失せていたにもかかわらず、ノーマは喘ぎ、声をあげてアンバーを求め、そしてアンバーもこれまでの優しく慰めるだけの交わりではなく、欲望のまま激しくノーマを貪った。
もう互いを遠くに感じることもなく、これでやっとひとつになれたと、アンバーは昨日までとは違う強い結びつきを感じていた。
神官という地位を得たノーマを貶す者は、もうここには誰もいやしない。自分からノーマを引き離すことなど、もう絶対にできやしないのだ。
————アンバーは腕の中でスヤスヤと眠るノーマを見た。
ノーマは睦言で、アンバーの目を覗き込み「アンバー様の星を独り占めできるなんて」とうっとりと眺めていたのを思い出した。
正直これまで目の中の星など消えてなくなればいいとさえ思っていた。
しかしノーマはこの星を美しいと、俺によく似合うと言う。俺が持つからこそ美しいのだと。
この星があったからこそ、ノーマに会えたのだと、そう思うとこの星も悪くない。
もう時期夜が明ける。
そろそろノーマは朝の祈りのために、起きなくてはいけない時間だ。
できれば今日くらいはここでずっと睦み合いたいが、こればかりは神官の職務なので仕方がない。それにそんなことは真面目なノーマが許さないだろう。
————もうしばらくすれば侍従が呼びに来る。
名残惜しいが、夜ノーマがまたここに戻ってくるのだと思えば、一日それを楽しみに過ごすことができるだろう。
アンバーは顔にかかる銀の髪を頭の上に払うと、露わになったノーマの目元をそっと撫でた。
目は固く閉じたまま、眉間にシワを寄せるのを見て、アンバーはくすりと笑う。
あともう少し。
もう少しだけこうしていたい。
だがそんなアンバーの願いなど、知ってか知らでか
コンコンと、新しい一日の始まりを告げるノックの音が響いた————。
------------------------
このお話で最後です。
書こうと思っていた部分全てを書くことができました。
しおりやお気に入りなど、皆様ありがとうございました。
幼きアンバーは一度も会ったことのない父どころか、産んでくれた母のことも、その小さな頭の中に留めておくことはできなかった。
そして皇子宮の者らも、母のこととなると皆口をつぐみ、父や母について、実際サーシャに聞かされるまでは何ひとつ知らされることはなかった。
母も父もおらず、その高貴な立場ゆえ幼い皇子の遊び相手となる者などもこの皇子宮にはいない。
アンバーはひとり、大人たちの中で孤独に生きていた。
誰かに愛されたこともなく、ゆえに誰かを愛することもない。
年頃になり若い娘や男たちに色目を向けられることはあっても、本気で付き合うようなこともなく、欲の発散の相手としか見たことはなかった。
例えそれがどんなに魅力的な相手であっても。誰かを愛するという感情が自身には欠落しているのだと、そう思っていた。
——だからこそノーマは特別なのだ。
もし運命があるならば、きっとこれは運命で、鳥のように番というものであるならば、きっとそうなのだろう。
いつまでも手元に置いておきたいし、側で見守ってやりたい。
どこかへ行きたいというのであれば共に行き、同じ景色を眺めていたい。
もしこの地に彼を永遠に留めておくことができるのならば、自分は王となりて王道楽土の治世を誓おう。
「アンバー様?」
急に黙ってしまったアンバーに、ノーマは抱きしめたまま何事かとアンバーの名を呼んだ。
「……ノーマ」
その声に反応し我にかえると、すぐにアンバーはノーマを抱き返した。
優しく頬に口づけると、安堵したのかノーマはくすぐったそうにし愛らしく笑い、そして唇が重なる頃には、その口からは熱い吐息が漏れていた。
愛撫を再開し、抽挿が激しくなると、息を荒らげ、何度もアンバーの名を呼び、その激しさに耐えきれず嬌声をあげた。
「あ! や、アンバーさ、ま、あ、あああああ!」
ノーマが抵抗しないことをいいことに、アンバーは逃さぬようノーマの腰を掴み、周囲の花が跳ねて舞い散るほど腰を打ち付けた。
ノーマがあれほど怖がっていた最奥も、無理やりこじ開け、そこを穿つたびに先端が奥にぐぽっと嵌まり込んだ。
もうノーマの口からは悲鳴のような喘ぎ声しか出ていない。
ノーマの陰茎からは、もう何度となく白濁が溢れだし、ノーマの腹をししどに濡らした。
「ノーマ、愛している」
最後にそう呟き、最奥にぐぼっと突きこむと、ノーマの中に勢いよく熱い種を注ぎこんだ。そしてほとんど意識のないノーマにむしゃぶりつくようにして口づけた。
あれから何度体を重ねたのだろう。
熱い睦言を耳に囁き、口づけを交わすと、お互いの体を貪りあい、腰を揺らし果てて、またそれを繰り返し……。
途中からはもう媚薬の効果など消え失せていたにもかかわらず、ノーマは喘ぎ、声をあげてアンバーを求め、そしてアンバーもこれまでの優しく慰めるだけの交わりではなく、欲望のまま激しくノーマを貪った。
もう互いを遠くに感じることもなく、これでやっとひとつになれたと、アンバーは昨日までとは違う強い結びつきを感じていた。
神官という地位を得たノーマを貶す者は、もうここには誰もいやしない。自分からノーマを引き離すことなど、もう絶対にできやしないのだ。
————アンバーは腕の中でスヤスヤと眠るノーマを見た。
ノーマは睦言で、アンバーの目を覗き込み「アンバー様の星を独り占めできるなんて」とうっとりと眺めていたのを思い出した。
正直これまで目の中の星など消えてなくなればいいとさえ思っていた。
しかしノーマはこの星を美しいと、俺によく似合うと言う。俺が持つからこそ美しいのだと。
この星があったからこそ、ノーマに会えたのだと、そう思うとこの星も悪くない。
もう時期夜が明ける。
そろそろノーマは朝の祈りのために、起きなくてはいけない時間だ。
できれば今日くらいはここでずっと睦み合いたいが、こればかりは神官の職務なので仕方がない。それにそんなことは真面目なノーマが許さないだろう。
————もうしばらくすれば侍従が呼びに来る。
名残惜しいが、夜ノーマがまたここに戻ってくるのだと思えば、一日それを楽しみに過ごすことができるだろう。
アンバーは顔にかかる銀の髪を頭の上に払うと、露わになったノーマの目元をそっと撫でた。
目は固く閉じたまま、眉間にシワを寄せるのを見て、アンバーはくすりと笑う。
あともう少し。
もう少しだけこうしていたい。
だがそんなアンバーの願いなど、知ってか知らでか
コンコンと、新しい一日の始まりを告げるノックの音が響いた————。
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このお話で最後です。
書こうと思っていた部分全てを書くことができました。
しおりやお気に入りなど、皆様ありがとうございました。
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※現在、コウとセイドリックの話『失恋した神兵はノンケに恋をする』を新作として公開しています。閑話コウの受難の続きでセイドリック視点で始まります。コウの受難の続きが気になっていた方がいればぜひ。
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素敵なお話ありがとうございました
鹿の子様
ありがとうございます!
ノーマが前向きになってくれたことで、気がかりだったアンバーとノーマの関係も、やっと収まりをつけることができました。
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最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
番外編ありがとうございます
ノーマにまた会えて嬉しいです
二人がだんだん深く心を交ざる様がとても嬉しいです
お引っ越しして幸せになる未来が近いのね
なんだか初初しく、焦れ焦れになりましたが、楽しく読ませて頂きました😘
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鹿の子様ありがとうございます!
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一気に読んでしまいました😃
面白かったです
二組ともうまく収まりほっとしました
途中、かわいそうで泣き泣き読みましたけど
どうか、甘々の番外編をお願いいたします😃
ありがとうございます!
一気読みしていただいたなんて、とても嬉しいです。
ノーマの心を素直にさせることがなかなかできなくて、最後まで展開に悩みましたが、なんとかこのように落ち着きました。
番外編もいくつかお話を考えておりますので、どうぞよろしくお願い致します!