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番外編
番外編 スルトの迷惑な客人9※
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翌朝、スルトはゴトゴトという階下の騒がしい物音で目が覚めた。何か大きなものをこの邸宅から運び出す、そんな音だ。
「うー………ん」
なんの音か確認しなきゃと思ってはいるのに、今日はなかなか頭が覚醒しない。
それになんとなく寝覚めもよくないのは、この趣味の悪い派手な寝具のせいだろうか。
(いや、違うな。寝不足だからか……)
なんとか起きようと、ごそごそと布団の中でもがき、枕に頭を押し付けて顔をこすりつけた。
結局あれから、サーシャには口で弄ばれ、体中口づけの痕だらけ。
おかげで猛り狂ったようなサーシャの逸物を鎮めるため、一晩かけてスルトも口で慰めることになったのだ。おかげであごが非常にだるい。
寝台にサーシャのぬくもりが残っていないところを見ると、ろくに寝もせずスルトを愛でるだけ愛でて仕事にいってしまったようだ。
(サーシャはもう仕事か……。ほんと元気だよね)
けだるい体を起こして、よろよろと寝台から立ち上がる。
窓から外を見下ろせば、階下ではプリースカが持ってきた荷物の運び出しが行われていた。
(しまったな。ここも片付けるんだよね、きっと)
慌ててはだけた夜着の前をかきあわせ、そろっと扉を開けると、スルト付きの侍従がスルトの服を一式持って立っていた。
「ごめんなさい。俺、寝すぎたよね。この部屋も片付けるんだよね」
「スルト様、慌てなくて問題ございませんよ」
スルトが寝室から顔を出すと、侍従が笑顔で服を持って入ってきた。
この寝室の寝具類については、プリースカ曰くもう見たくもないとのことだったので、廃棄するのだという。
まあ初夜用に誂えた寝具で愛人が寝たのだから、棄てて当たり前だ。
侍従は、スルトが寝ていた寝台のシーツを、すぐに捨てられるようになのか、見たくもないと言わんばかりにささっと丸めるようにして畳むと、隅の方に寄せた。
そして、スルトに用意していた服を広げ、着せ始める。
「プリースカ様はいつここから?」
「はい、あの、こちらの部屋から飛び出してきてすぐに……」
「え、本当に?!」
真夜中だったというのに、なんとあのあとすぐに、プリースカはこの邸宅から去っていたというのだ。
「下の客間に行ったのかと……。あちゃー……やっちゃったなあ。女性を夜中に追い出すなんて……」
「何を言いますか! 勝手に押しかけてこられたのはあちらでしょう! それに勝手に出ていかれたのもあちらです! 我々はお止めいたしました!」
ふんっと鼻息荒く、侍従が昨晩あったことをスルトに話した。
サーシャとイチャイチャしている間、いろいろ大変だったようだ。
「それにしてもスルト様、さすがでございます。昨晩は確かに余裕のあるご様子ではございましたが、もしかしてご無理をなさっているのではと、心配しておりました。しかしあんなことがあったというのに、朝は旦那様も上機嫌でいらっしゃいましたし、お二人の仲は睦まじいまま。みなこのまま仲違いされるのではとヒヤヒヤしておりましたが、杞憂でございました!」
昨晩、プリースカとの閨にスルトを呼んだサーシャに怒り心頭だった侍従も、さすがスルト様だと今日は満面の笑みだ。
「この旦那様の邸宅に不釣り合いな寝具はすぐに捨てて、旦那様がスルト様のためにご用意した寝具にお戻ししますね!」
「ありがとう。昨晩は、ここの寝具があんまりにもサーシャに似合わなすぎて、真剣な場面なのに笑ってしまいそうになっちゃったよ」
「良い家柄の令嬢なのに、趣味が悪いったらないです! よくこんなものに旦那様を寝かせようだなんて!」
「はは」
スルトへの着替えを終えると、忌々しそうに丸めた寝具を両手に抱え、プリプリしながら侍従は出ていった。
こうしてプリースカが去ったあともプリースカの家から抗議文が届くなど、それなりにこの婚約者騒動は尾を引いた。
まあ大事な娘が愛人に大恥をかかされたのだ——それも初夜で。そりゃあ抗議もするだろう。
だがそれもほどなくすると、抗議文にあった慰謝料だのなんだのというそういう話も浮上することなく、なぜかぷっつりと音沙汰がなくなってしまった。
しかしその後他の令嬢が婚約者として割り当てられることもなく、サーシャの婚約の話など何もなかったかのように、スルトとサーシャの生活は元に戻ったのだった。
そして街に広がったスルトの噂についてだが————
これもまた不思議なことに、サーシャの婚約話が消えるのと同時に、まるで煙のようにきれいさっぱり消えてしまったのだ。
当初、上流階級の間でまるでいかがわしい下品な醜聞のように流れていた噂だったが、下の層に流れ広がるにつれ、貴族たちの低俗で平民をバカにする悪趣味な噂だと嫌悪されるようになり、次第に誰も噂を口にしなくなっていった。
「噂を消すなんて、サーシャさんは何をどうやったんだ? いや、こんなに早く噂が消えるなんて、俺は信じられん」
なんとか噂を消そうと奔走していたコウも困惑するほどだ。
そりゃそうだろう、プリースカのことがあってから、ほんのわずかな期間でで噂が消えたのだから。
コウが考えたようにサーシャが何か裏で手を回したのかどうかの真偽は不明だが、噂が消えた理由として、サハル=ディファへの町民らの信頼の高さだけではなく、スルト自身の北通りでの頑張りが、みんなの同情心をかき立てたということも大きく作用した。
そしてスルトには内緒で、噂の出所を突き止めようと影で躍起になっていたレラだが、噂も消え、これ以上サーシャの家にいる理由もなくなったということで、サリトールに戻ることになった。
「兄さん、世話になったね。迷惑をかけてごめん」
「レラこそ、ほんとに、もう! 勝手に出てきてはダメだよ。女将さんたちが心配しているんだから」
結局、レラが何しにきたのかスルトは聞くことができなかったが、出立の日、レラが晴れ晴れとした顔だったので、もうそれについては何も聞くことはなかった。
ここに来たときのレラは、小さな手荷物ひとつでヨレヨレの姿だった。だが帰りはサーシャが旅賃を奮発し、短期間でサリトールに戻れるよう馬車を手配して、大量の土産まで用意したもんだから、何もしていないのに帰りはまるで、貴族の巡行か英雄の凱旋のようになってしまった。
「荷物があるんだから、寄り道せずに帰ること。女将さんと旦那さんには、元気でやってるか心配しないでって伝えて」
「わかったよ。店は僕が頑張るからさ、もしこっちにくることがあったら寄ってよね」
絶対だよと小さくつぶやくと、レラはスルトに触れるだけの口付けをし、ぎゅっと抱きしめた。
「兄さん、愛しているよ。今までありがとう。元気で!」
「レラ………。レラにもいい旦那がつくことを祈っておくよ。元気で」
そう言うとレラは少し寂しそうに笑った。
そしてもう一度しっかり抱擁をかわすと、レラは大荷物を抱えて馬車に乗っていってしまった。
「あーもう、何しにきたんだろうね。レラのやつ」
スルトは遠ざかる馬車を見つめつつ、去っていく弟分への寂しさを誤魔化すように悪態をついて笑った。
「……スルト様、さきほどの抱擁は旦那様には言わないほうがよろしいかと」
見送りをするスルトの背後に控えていた家来が、こほんと咳払いをしてスルトにこっそりと忠告した。
「え? そう? サーシャ気にするかな。大丈夫でしょ」
「………意外と気にされますので」
「そう?」
「はい」
△△△
「あっ、あっ……! や、ちょっと、サーシャ…………!」
「なんだ」
「あっ……っまだ、俺、イッてるから……!」
指で中のコリッとしたしこりの部分をぐりぐりと嬲られ、イッたままびくびくと痙攣しているにもかかわらず、サーシャが自身の猛り狂ったように張り詰めたモノをねじ込む。
「ひっ……!!」
うねるように絡みつく肉壁の中を、力尽くでその大きく開いたその先端をズブズブと押し進めると、スルトの背が大きく仰け反った。
侵入してくる陰茎を押しとどめるようにきゅーっと中が締まり、これ以上は入らぬと諦めたサーシャがふーっと大きく息を整えると、繋がったままスルトを背後から抱きしめるようにして、美しいブルーの刺繍がほどこされたシーツの上に寝そべった。
「……ねえ、サーシャ」
「なんだ」
スルトは背後のサーシャを振り返った。
「噂を消すのにどんな手を使ったの」
「さあな」
それはほんの少しの好奇心からの問いかけだったが、サーシャはそれには応えず、いつも通りしらを切った。
しれっとした何でもない表情。だがその心のうちには、噂の種をばら撒いた男の顔がチラついていた。
『スルトを解放してやってくれませんかねえ』
あの行商の男は、このサハル=ディファ・シュタウを前にしても、動じることなく、なんだか嫌な笑みを浮かべる男だった。
捕まえて吐かせてみれば、プリースカの家の者をそそのかし、スルトをこの家から追い出すつもりで、噂を流したのだという。
高級で珍しいものを貴族の家に売り歩き、家々でスルトの噂を吹聴して回っていたのだ。
なぜそんなことをするのかと、いったい何が目的なのか、金か? そう詰め寄ると、「スルトは俺のほうが馴染みだったんだ。金で買ったお前には似合わない」
隙をみて、攫って逃げるつもりだとぬかした。
——行商の男といい、レラという男娼といい、スルトにはしつこい男がまとわりつく。
レラはともかく、あの行商の男だけは、もう二度とこの地に来ることなど叶わぬよう、手を回した。
……おそらく今頃は、野犬の餌にでもなっているだろう。
「スルト」
「ん?」
上から覆いかぶさるようにして口づけを交わす。
「スルトよ、我から逃げたくなったら逃げてもかまわんぞ」
「へ? なにそれ」
一瞬ぽかんと目を丸くしたスルトが、ぷっと笑い出す。
「そんなことあるわけないよ」
「……いずれそう思う日がくる」
「こないよ」
「分からぬぞ」
「こない」
笑うのをやめたスルトが、真剣な顔でサーシャの顔を見つめる。
「こないよ、サーシャ。俺はサーシャの側にいる」
サーシャは無言のまま、噛みつくようにスルトの唇に吸い付くと、背後から一気に腰を突き上げた。
「あっ! あっ! やっ! ああああ!!」
「スルト……!」
体を折り重ねるようにして、ぴったりと肌をあわせる。そしてスルトの片足を担ぎあげ、サーシャは深く、より深く繋がるために腰を激しく打ち付ける。
「だ、大丈夫……あ! あん! サーシャ……はぁ……っ、もっと、もっと奥にきて!」
「スルト……スルト!」
——この夜、これまでにないほどひどく激しく求められたスルトは、翌朝もう立つことができないほどクタクタになっていた。
体中は痛いし、とくに腰。
幸いなことに尻の穴は無事だったが、いまだにまだ、あのサーシャの極太の逸物が入ったままのような感覚が抜けない。
(うう、レラのこと言わなきゃ良かったな)
家来からは、ほら言わんこっちゃないという顔で介助をされながら、一日を過ごすはめになったスルトであった。
「うー………ん」
なんの音か確認しなきゃと思ってはいるのに、今日はなかなか頭が覚醒しない。
それになんとなく寝覚めもよくないのは、この趣味の悪い派手な寝具のせいだろうか。
(いや、違うな。寝不足だからか……)
なんとか起きようと、ごそごそと布団の中でもがき、枕に頭を押し付けて顔をこすりつけた。
結局あれから、サーシャには口で弄ばれ、体中口づけの痕だらけ。
おかげで猛り狂ったようなサーシャの逸物を鎮めるため、一晩かけてスルトも口で慰めることになったのだ。おかげであごが非常にだるい。
寝台にサーシャのぬくもりが残っていないところを見ると、ろくに寝もせずスルトを愛でるだけ愛でて仕事にいってしまったようだ。
(サーシャはもう仕事か……。ほんと元気だよね)
けだるい体を起こして、よろよろと寝台から立ち上がる。
窓から外を見下ろせば、階下ではプリースカが持ってきた荷物の運び出しが行われていた。
(しまったな。ここも片付けるんだよね、きっと)
慌ててはだけた夜着の前をかきあわせ、そろっと扉を開けると、スルト付きの侍従がスルトの服を一式持って立っていた。
「ごめんなさい。俺、寝すぎたよね。この部屋も片付けるんだよね」
「スルト様、慌てなくて問題ございませんよ」
スルトが寝室から顔を出すと、侍従が笑顔で服を持って入ってきた。
この寝室の寝具類については、プリースカ曰くもう見たくもないとのことだったので、廃棄するのだという。
まあ初夜用に誂えた寝具で愛人が寝たのだから、棄てて当たり前だ。
侍従は、スルトが寝ていた寝台のシーツを、すぐに捨てられるようになのか、見たくもないと言わんばかりにささっと丸めるようにして畳むと、隅の方に寄せた。
そして、スルトに用意していた服を広げ、着せ始める。
「プリースカ様はいつここから?」
「はい、あの、こちらの部屋から飛び出してきてすぐに……」
「え、本当に?!」
真夜中だったというのに、なんとあのあとすぐに、プリースカはこの邸宅から去っていたというのだ。
「下の客間に行ったのかと……。あちゃー……やっちゃったなあ。女性を夜中に追い出すなんて……」
「何を言いますか! 勝手に押しかけてこられたのはあちらでしょう! それに勝手に出ていかれたのもあちらです! 我々はお止めいたしました!」
ふんっと鼻息荒く、侍従が昨晩あったことをスルトに話した。
サーシャとイチャイチャしている間、いろいろ大変だったようだ。
「それにしてもスルト様、さすがでございます。昨晩は確かに余裕のあるご様子ではございましたが、もしかしてご無理をなさっているのではと、心配しておりました。しかしあんなことがあったというのに、朝は旦那様も上機嫌でいらっしゃいましたし、お二人の仲は睦まじいまま。みなこのまま仲違いされるのではとヒヤヒヤしておりましたが、杞憂でございました!」
昨晩、プリースカとの閨にスルトを呼んだサーシャに怒り心頭だった侍従も、さすがスルト様だと今日は満面の笑みだ。
「この旦那様の邸宅に不釣り合いな寝具はすぐに捨てて、旦那様がスルト様のためにご用意した寝具にお戻ししますね!」
「ありがとう。昨晩は、ここの寝具があんまりにもサーシャに似合わなすぎて、真剣な場面なのに笑ってしまいそうになっちゃったよ」
「良い家柄の令嬢なのに、趣味が悪いったらないです! よくこんなものに旦那様を寝かせようだなんて!」
「はは」
スルトへの着替えを終えると、忌々しそうに丸めた寝具を両手に抱え、プリプリしながら侍従は出ていった。
こうしてプリースカが去ったあともプリースカの家から抗議文が届くなど、それなりにこの婚約者騒動は尾を引いた。
まあ大事な娘が愛人に大恥をかかされたのだ——それも初夜で。そりゃあ抗議もするだろう。
だがそれもほどなくすると、抗議文にあった慰謝料だのなんだのというそういう話も浮上することなく、なぜかぷっつりと音沙汰がなくなってしまった。
しかしその後他の令嬢が婚約者として割り当てられることもなく、サーシャの婚約の話など何もなかったかのように、スルトとサーシャの生活は元に戻ったのだった。
そして街に広がったスルトの噂についてだが————
これもまた不思議なことに、サーシャの婚約話が消えるのと同時に、まるで煙のようにきれいさっぱり消えてしまったのだ。
当初、上流階級の間でまるでいかがわしい下品な醜聞のように流れていた噂だったが、下の層に流れ広がるにつれ、貴族たちの低俗で平民をバカにする悪趣味な噂だと嫌悪されるようになり、次第に誰も噂を口にしなくなっていった。
「噂を消すなんて、サーシャさんは何をどうやったんだ? いや、こんなに早く噂が消えるなんて、俺は信じられん」
なんとか噂を消そうと奔走していたコウも困惑するほどだ。
そりゃそうだろう、プリースカのことがあってから、ほんのわずかな期間でで噂が消えたのだから。
コウが考えたようにサーシャが何か裏で手を回したのかどうかの真偽は不明だが、噂が消えた理由として、サハル=ディファへの町民らの信頼の高さだけではなく、スルト自身の北通りでの頑張りが、みんなの同情心をかき立てたということも大きく作用した。
そしてスルトには内緒で、噂の出所を突き止めようと影で躍起になっていたレラだが、噂も消え、これ以上サーシャの家にいる理由もなくなったということで、サリトールに戻ることになった。
「兄さん、世話になったね。迷惑をかけてごめん」
「レラこそ、ほんとに、もう! 勝手に出てきてはダメだよ。女将さんたちが心配しているんだから」
結局、レラが何しにきたのかスルトは聞くことができなかったが、出立の日、レラが晴れ晴れとした顔だったので、もうそれについては何も聞くことはなかった。
ここに来たときのレラは、小さな手荷物ひとつでヨレヨレの姿だった。だが帰りはサーシャが旅賃を奮発し、短期間でサリトールに戻れるよう馬車を手配して、大量の土産まで用意したもんだから、何もしていないのに帰りはまるで、貴族の巡行か英雄の凱旋のようになってしまった。
「荷物があるんだから、寄り道せずに帰ること。女将さんと旦那さんには、元気でやってるか心配しないでって伝えて」
「わかったよ。店は僕が頑張るからさ、もしこっちにくることがあったら寄ってよね」
絶対だよと小さくつぶやくと、レラはスルトに触れるだけの口付けをし、ぎゅっと抱きしめた。
「兄さん、愛しているよ。今までありがとう。元気で!」
「レラ………。レラにもいい旦那がつくことを祈っておくよ。元気で」
そう言うとレラは少し寂しそうに笑った。
そしてもう一度しっかり抱擁をかわすと、レラは大荷物を抱えて馬車に乗っていってしまった。
「あーもう、何しにきたんだろうね。レラのやつ」
スルトは遠ざかる馬車を見つめつつ、去っていく弟分への寂しさを誤魔化すように悪態をついて笑った。
「……スルト様、さきほどの抱擁は旦那様には言わないほうがよろしいかと」
見送りをするスルトの背後に控えていた家来が、こほんと咳払いをしてスルトにこっそりと忠告した。
「え? そう? サーシャ気にするかな。大丈夫でしょ」
「………意外と気にされますので」
「そう?」
「はい」
△△△
「あっ、あっ……! や、ちょっと、サーシャ…………!」
「なんだ」
「あっ……っまだ、俺、イッてるから……!」
指で中のコリッとしたしこりの部分をぐりぐりと嬲られ、イッたままびくびくと痙攣しているにもかかわらず、サーシャが自身の猛り狂ったように張り詰めたモノをねじ込む。
「ひっ……!!」
うねるように絡みつく肉壁の中を、力尽くでその大きく開いたその先端をズブズブと押し進めると、スルトの背が大きく仰け反った。
侵入してくる陰茎を押しとどめるようにきゅーっと中が締まり、これ以上は入らぬと諦めたサーシャがふーっと大きく息を整えると、繋がったままスルトを背後から抱きしめるようにして、美しいブルーの刺繍がほどこされたシーツの上に寝そべった。
「……ねえ、サーシャ」
「なんだ」
スルトは背後のサーシャを振り返った。
「噂を消すのにどんな手を使ったの」
「さあな」
それはほんの少しの好奇心からの問いかけだったが、サーシャはそれには応えず、いつも通りしらを切った。
しれっとした何でもない表情。だがその心のうちには、噂の種をばら撒いた男の顔がチラついていた。
『スルトを解放してやってくれませんかねえ』
あの行商の男は、このサハル=ディファ・シュタウを前にしても、動じることなく、なんだか嫌な笑みを浮かべる男だった。
捕まえて吐かせてみれば、プリースカの家の者をそそのかし、スルトをこの家から追い出すつもりで、噂を流したのだという。
高級で珍しいものを貴族の家に売り歩き、家々でスルトの噂を吹聴して回っていたのだ。
なぜそんなことをするのかと、いったい何が目的なのか、金か? そう詰め寄ると、「スルトは俺のほうが馴染みだったんだ。金で買ったお前には似合わない」
隙をみて、攫って逃げるつもりだとぬかした。
——行商の男といい、レラという男娼といい、スルトにはしつこい男がまとわりつく。
レラはともかく、あの行商の男だけは、もう二度とこの地に来ることなど叶わぬよう、手を回した。
……おそらく今頃は、野犬の餌にでもなっているだろう。
「スルト」
「ん?」
上から覆いかぶさるようにして口づけを交わす。
「スルトよ、我から逃げたくなったら逃げてもかまわんぞ」
「へ? なにそれ」
一瞬ぽかんと目を丸くしたスルトが、ぷっと笑い出す。
「そんなことあるわけないよ」
「……いずれそう思う日がくる」
「こないよ」
「分からぬぞ」
「こない」
笑うのをやめたスルトが、真剣な顔でサーシャの顔を見つめる。
「こないよ、サーシャ。俺はサーシャの側にいる」
サーシャは無言のまま、噛みつくようにスルトの唇に吸い付くと、背後から一気に腰を突き上げた。
「あっ! あっ! やっ! ああああ!!」
「スルト……!」
体を折り重ねるようにして、ぴったりと肌をあわせる。そしてスルトの片足を担ぎあげ、サーシャは深く、より深く繋がるために腰を激しく打ち付ける。
「だ、大丈夫……あ! あん! サーシャ……はぁ……っ、もっと、もっと奥にきて!」
「スルト……スルト!」
——この夜、これまでにないほどひどく激しく求められたスルトは、翌朝もう立つことができないほどクタクタになっていた。
体中は痛いし、とくに腰。
幸いなことに尻の穴は無事だったが、いまだにまだ、あのサーシャの極太の逸物が入ったままのような感覚が抜けない。
(うう、レラのこと言わなきゃ良かったな)
家来からは、ほら言わんこっちゃないという顔で介助をされながら、一日を過ごすはめになったスルトであった。
5
※現在、コウとセイドリックの話『失恋した神兵はノンケに恋をする』を新作として公開しています。閑話コウの受難の続きでセイドリック視点で始まります。コウの受難の続きが気になっていた方がいればぜひ。
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