神官の特別な奉仕

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番外編

番外編 スルトの迷惑な客人7

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※性的表現があります。

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翌朝、いつも静かな邸宅内が朝からバタバタと騒がしく、その物音で目が覚めるとスルトはひとりで寝台の上にいた。

「スルト様、起きられましたか」

 スルトが起きだした気配を感じ取ったのか、隣室に控えていた侍従がすぐに顔をだした。

「……サーシャは?」

「旦那様は本日はもう仕事へ向かわれました」

「そう。……下は騒がしいね。俺は下には行かない方がいい?」

「……そうですね。不自由にさせてしまい申し訳ありません。プリースカ様がちょっと……」

 全部言わなくても察しがつく。振り回されている使用人らがかわいそうだが、ここは仕方がない。

「そういえば、レラは?」

「レラ様は昨晩から客間にいらっしゃったのですが、プリースカ様の激しいご様子に怯えていらして、本日も早くから外出されました」

「そっか」

 サーシャが寝室に戻れるようになるまで、きっと客間のある1階は大騒ぎだったのだろう。レラもとんだとばっちりだ。



 その日はなるべくプリースカやプリースカの連れてきた使用人らと顔を合わせぬよう、ずっとスルトは私室にいた。それなのに、自分の使う部屋の検分をしに、なんとプリースカが自らやってきたのだ。

「あら、ここも狭いわね。ちょっと、ここよりマシな部屋はどこ? お兄様はどちらのお部屋を使われているのかしら」

「プリースカ様、こちらはいけません」

 どんどん近づいてくるプリースカの声に、スルトはマズい!と身を隠そうとしたがもう遅かった。

「あら、ここはまた扉の趣が違うわね。こっちは主寝室かしら? ここが一番いい部屋?」

 ガチャリと扉が開き、ご機嫌なプリースカと慌てふためくスルトの目がばっちり合った。

「…………あら。ちょっとペットが入り込んでいるわ。家来、追い出して」

「プリースカ様! こちらはスルト様と旦那様のお部屋です! 追い出せなど……!」

スルトは抗議する家来を、冷静に手で制した。

「いいよ、俺が出て行くから。大丈夫。その方の言う通りにして差し上げて」

 スルトは周辺にあった私物をさっと手に取ると、部屋から出るために、扉の前にいるプリースカの脇をすり抜けた。
 プリースカは、スルトがこの部屋を出ていくのを目で追うこともせず、「今日はこちらでお兄様と過ごすのね!」とこの部屋でサーシャと過ごすことを想像し、その大きな瞳を輝かせた。

 そしてスルトは、お兄様が戻るまでに寝具を私好みのものに変えて頂戴と、家来にあれやこれやと注文をつけているのを背中越しに聞きながら、早く遠ざかりたいとこの部屋から去っていった。




 そしてその夜。

 スルトがいた部屋はプリースカのものになり、スルトは他の部屋に移った。
 サーシャは仕事から戻るなり、プリースカの部屋の隣にある私室へ入っていき、初夜の準備に入る。

 ——スルトはというと、侍従らが新しく整えた2階の一番奥の部屋に入り、食事もひとりで済ませた。

 意外なことにこんな状況でも、当のスルトはあっけらかんとし、とくに拗ねたり不満を漏らすようなことはしない。普段通り食事を平らげ、暇な時間は本を読んだり、余裕さえ感じる。
 しかし侍従らはそんなスルトがひどく不憫で、無理をしているのではないかと心配をしていた。



 ——夜はふけ、プリースカとサーシャの初夜もそろそろかという頃、スルトにお呼びがかかった。

「……スルト様、いかがなさいますか。初夜にスルト様を呼びつけるなど、あんまりです」

 旦那様には呆れました! と侍従が怒りに肩を震わせた。しかし当スルトといえば、まったくもって動じておらず、はいはいと快諾し、侍従を困惑させた。

「俺なら大丈夫。……あ、そうだ、俺がここに来た時に着させてくれた夜着があったよね。せっかくだからあれを着てもいいかな」

「は、はい! 今すぐお持ちします!」

 それは衣装係がサーシャとの初夜用にスルトのために拵えた夜着だった。
 スルトはそれを身に纏い、スルトは寝室へ向かった。




「スルトです。入ります」

 今日の朝まで自分のものだった部屋にノックをして入ると、薄暗い部屋で壁に背を預け悠々と寝台に横たわるサーシャと、怒りに体を震わせ立ち尽くすプリースカの姿が見えた。

 プリースカの初夜の衣装はその魅惑的な体を強調するかのように扇情的なもので、その辺の男であればコロリと参ってしまっただろう。しかし見たところサーシャに興奮した様子は見られない。

 それどころか、本来甘い空気に満ちるはずの初夜の部屋に、それとは真逆の冷たい空気が流れているのを、スルトは肌で感じていた。



「旦那様、お呼びだそうで」

 そう頭を下げるとプリースカが美しい金の髪を振り乱し、興奮したように声を荒げた。

「お兄様! なぜこの男を呼びましたの!? 今日は私との初夜ですのよ!」

「プリースカ、お前では勃たぬ。無事初夜を迎えたいのだろう? 我はスルトでないと勃たぬ」

「なっ!? 侮辱ではありませんこと!! 私でもお兄様を満足させられます!!」

「だが無理であっただろうが。スルト、こちらへ」

「……失礼します」

 やけどでもしそうなほどピリピリとした視線を感じつつ、スルトはサーシャの元へ進んだ。

 近くで見ると寝台の様子は朝とはガラリと変わり、寝具がプリースカの好みなのだろう、妖艶ではあるがひどく毒々しく派手な色のレースの寝具に変えられていて、あげくそれがふてぶてしい態度のサーシャにまったく似合っておらず、不謹慎ながら少し笑ってしまった。

「スルト、来たな」

「はい、お望みどおり」

 二人は顔を合わせると、サーシャは目を細め、スルトはにっこりと笑った。

「え、と、旦那様、勃たせればよろしいので?」

「そうだ」

「やめて! お兄様に触らないで!!」

 プリースカが狂ったように叫ぶが、スルトはお構いなしだ。

 スルトはプリースカを無視し、寝台の上にそろっと上がると、サーシャの開いた足の間に座った。

 そしてサーシャの夜着に手をかけ、スルスルと慣れた手つきで紐を解き、下衣を寛がせる。

 よく見るとこの夜着、スルトとの初夜で着たものだ。そう、申し合わせたわけではないのに、今二人は揃いで作られたものを身につけていることになる。

(サーシャったら)

 ちょっとまた笑いが込み上げてくるが、ぐっと堪え、真面目な顔で、サーシャの下衣からまだくったりとした逸物を取り出した。

(こんなに萎えてるのははじめてだな。サーシャのもこんなに柔らかくなるんだ)

 普段もうほぼ勃ち上がりかけたものしか見ないので、スルトにとってはかなり新鮮だ。



「旦那様、では失礼します」

 寝台のそばの台に置いてあった瓶を手に取ると、蓋を取り、中の香油を手に垂らす。香油が瓶からとろっと流れ出ると、柑橘に少し刺激のある香りが足されたような、独特の香りがふわりと部屋に立ち込める。

「やめて!!」

 プリースカが叫ぶが、スルトはしれっとサーシャの逸物にも香油を垂らす。そして手でやわやわと揉み込むと、刺激を与えるように竿を扱いていく。

 これだけでは不十分だろうと、自分の夜着の前をはだけさせ、彼好みの下着を身につけた自身の股間の膨らみを、わざといやらしく見えるよう、サーシャに見せつけた。それだけで、くったりと柔らかかった逸物が芯を持ち、グッと勃ち上がる。

「だいぶ勃ち上がってきましたね。もうよろしいですか?」

 サーシャが熱っぽい視線をスルトに投げかけながらも、「まだだ」と少しかすれた声で指示すると「承知しました。旦那様」とスルトはにっこりと笑った。
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※現在、コウとセイドリックの話『失恋した神兵はノンケに恋をする』を新作として公開しています。閑話コウの受難の続きでセイドリック視点で始まります。コウの受難の続きが気になっていた方がいればぜひ。
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