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スーシリアム神皇国
46 収まるべきところ
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この日ダイジュから伝えられた通りの時間、戸惑いつつもノーマはこの古ぼけた礼拝堂までやってきた。
本当ならば見習いのノーマが夜の外出などしてはならないのだが、ダイジュがうまく理由をつけて外に送り出してくれた。
門限は日付けが変わるまで。
文字通りそれ以降は門を閉じてしまうので部屋に戻れなくなる。朝部屋にいないとなると大騒ぎになってしまうので、たとえ話がこじれたとしても、時間がきたら諦めて戻らなくてはならない。
ノーマはローブのフードを深々と被り、神殿の裏の道を月明かりを頼りに歩いた。
用事を言いつけられない限り神殿から外に出ることがないノーマは、神殿の裏にこのような古い礼拝堂があるのを知らなかった。
ダイジュいわく、今の神殿が出来る前に祈りの場として使われていた所だという。
質素な造りで一見物置のようにも見えるが、扉には神のレリーフが掲げられ、ここが祈りの場であることを示していた。
扉を確認すると、ドアノブに錠前でしっかり鍵がかけてある。ノーマはダイジュから渡された鍵をローブのポケットから取り出した。
サビの浮いた古い仕様の鍵を錠前に差し込み、言われた通りに少し力を入れてガシャンと回すと、思いのほか簡単に錠前が外れた。
重みのある錠前を手に持ったまま扉を押すと、ギィーーッと低い音を立てて開き、少しカビ臭いにおいが鼻をかすめた。
窓に薄いカーテンがかかり、少しだけ月の明かりが差し込んではいる。だが人が過ごすには少し暗すぎる。近場だし月の明るい夜だから、足元を照らすランプは不要だと思っていたが、やはり持ってくるんだったと後悔した。
薄暗い中目を凝らして見ると、室内はきれいに片付けられ何もない。神像どころか椅子なども撤去され、ただの板張りの床が広がっているのみ。
誰かに見られることも考えカーテンは開けずに、暗い中床に蹲るように座り込むと、アンバーを待った。
朝から緊張して何も手がつかず、約束の時間より早目に来てしまったのもあり、ここで待つ時間がひどく長く感じる。
サリトールのときはいつもアンバーが待ってくれていた。だが今日は逆で、ノーマが待つ番だ。
緊張しすぎて指の先が冷たくなってきた。待つのってこんなに辛いんだなと、そわそわして落ち着かない心を持て余す。
彼が来たらなんて言おう。ダイジュ監督官からはどう聞いているんだろう。それよりも本当に来てくれるのだろうか?
いろいろなことが悶々と頭に浮かび、泣き出したくなってくる。
いっそのことここから逃げ出そうか。
そう弱気な考えが脳裏をかすめたとき、礼拝堂の扉がギィーーッと音を立てて開いた。
「…………ノーマ? いるのか」
その声に、心臓が大きく跳ねた。
扉の前に立つ人の声はアンバーの声だが、月明かりで逆光になり顔は見えない。ノーマのことも、扉で月光が遮られ、影になってしまっているので見えてはいないだろう。
「ア、アンバー様……私はこちらに」
こちらに気づいていないアンバーのために、ノーマはのそのそと立ち上がり、彼の前に出た。
「ノーマか?」
月明かりに顔を差し出すと、アンバーの顔も見えるようになった。
月明かりの中の彼は、髪を無造作にまとめた皇子らしからぬ簡素な格好で、ひどく懐かしく、まるでここがサリトールだと錯覚してしまいそうになる。
ばたんと音がなり、ビクッと体が反応する。開け放していた扉が閉まり、あたりはまた暗闇に包まれる。
「ノーマ、とりあえず座ろう」
緊張して冷たくなった手を温かい大きな手が掴み、壁まで誘導してくれるが、壁に背を預けて並んで座るとすぐに手が離れていってしまった。
「灯りを」
シュボッという音とカチャカチャとランプの蓋を開閉する音がし、アンバーが持っていたランプに火を灯す。
ぼんやりとした明かりが足元を照らし、なんとかお互いの顔が分かる程度には明るくなった。
「……ノーマ。その、謁見のことはすまなかった。申請がこちらまで来ておらず、そのせいで長く待たせてしまったと聞いた。ダイジュ監督官には感謝をせねばならぬな」
ランプの赤みを帯びた明かりに照らされ、アンバーの顔には影が落ちる。周りが静かなせいか、心なし声も密やかで、ノーマの心も落ち着いてきた。
「……………………」
しばしお互い無言の時間が流れる。
ノーマはゆらゆらと揺れるランプの明かりをじっと見つめているうちに、自然と言葉がこぼれた。
「……アンバー様、俺、アンバー様のことを考えると、なんだか不安定なんだ。この気持ちが何なのかずっとよく分からなくて……」
「…………そうか」
たどたどしく話すノーマに、アンバーが静かに相槌をうつ。
「……たぶんこれが好きっていうことなんだと思う。でも、アンバー様が俺のことをどう思っているのか分からなくて……」
「————ノーマ。こちらに」
どう言って良いか分からず声を詰まらせたノーマに、アンバーは悩むようにしばし間を空け、ノーマの腰を抱き引き寄せると、かいた胡座の上に座らせた。
「……ノーマよ。俺からすれば分からぬのはお前のほうだ」
アンバーが眉間にシワを寄せ、苦しげにノーマの顔を覗き込む。
「いつも俺を袖にしていたのは、ノーマ、お前のほうでなないか」
「袖にする……?」
アンバー様を袖にした?
袖にするとはどういうことだろうか。そんなことをした覚えは一度もない。ノーマには言われたことがどういう意味か分からない。
アンバーの声は先程と同じく密やかだが、言葉尻はまるで叱られているようで、覗き込まれた視線が痛い。
「そうだ。サリトールにいたとき、お前は俺に言い寄られていると自覚はあっただろう?」
確かにサリトールにいた時は、言い寄られているという自覚はあった。たがそれは体目当てだと思っていたからで……。
「……アンバー様は、俺の体目当てで……欲の発散をしたいのだとばかり……」
「好きな相手と体を重ねたいと思うことはいけないことか」
「好きな……」
好きな相手。アンバー様の?
まさか自分が? 一瞬頭の中が真っ白になる。
「お前が俺に気がないことを承知で、ここまで連れてきた。本当は宮の部屋に囲って閉じ込めるつもりだった。それなのにお前は神殿に行くと言い、俺から離れてしまった」
アンバーの顔が近づく。
耳元で「ダイジュとは本当に何もないのか」と掠れた声で囁かれ、その内容とは裏腹にノーマの体にゾクリと甘い痺れが走った。
「ダ、……ダイジュ監督官とは師弟の間柄のようなものです。彼は治癒力の研究をしていて、それで俺の力の訓練に力を貸してくださっているだけで……」
「俺にはつれないお前が、ダイジュのことでは怒り、俺は嫉妬に狂うかと思った。だからお前が唯一俺に甘えた証しである杏の実を、また俺の手から食べたいと思ってほしいと願い贈った」
贈られた杏の実に秘められた想いを知り、自分の考えがなんと浅はかで子供じみていたのかと恥ずかしくなる。
「杏で俺を思い出してはくれたか?」
彼の口が耳に近い。発せられる言葉に交じる吐息が耳をくすぐり、それを振り払うように目をつむり勢い良く首を縦に振った。
ふふっという笑いともため息ともつかぬ息が耳にかかり、アンバーは愛おしげにノーマの体を抱きしめた。
「……俺を好きだと、もう一度言ってくれ」
鼻先が触れるほど近くで、アンバーがノーマに言葉をねだる。
「……俺は、アンバー様が、好き、だ」
至近距離で覗き込まれ、唇がわななき声が震える。
「俺もだ。……愛している。ノーマ」
アンバーが震える唇に深く口づけた。
暗く静かな礼拝堂にかすかな湿った水音が響く。
「うん…あ……ふぅ………………」
アンバーにまるで逃さぬといわんばかりにがっしりとうなじを掴まれ、強引なほど容赦なく口内を嬲られて、ノーマの口からは飲み込めなかった唾液が糸を引いてたらりと落ちる。
尻の下ではゴリゴリと昂ぶるモノがノーマを突き上げるが、服越しなのでお互いひどくもどかしく、ノーマも腰を左右に揺らし刺激を求めた。
「……さすがにここではできんな」
アンバーが熱い吐息を漏らしながら、残念そうに呟く。
床は埃だらけで、水場もなし。汚してしまっても後始末がすぐにはできないので、さすがに今ここで、というのは無理だろう。
それにもうすぐノーマの門限が近づく。
「ノーマとなかなか事に及べぬのはもう運命か」
アンバーは大げさにため息をつく。
サリトールでのことも含め、ノーマがアンバーと最後までしたのは実は数えるほどしかない。
アンバーの立派な逸物が怖くて、なかなかうんと言えなかったのもあるが、ノーマ自身アンバーからの誘いに気づいてなかったということもある。これが袖にしたと言うことであれば、そうかもしれない。
「ノーマ、神殿から出て皇子宮で暮らさないか」
アンバーが愛おしそうにノーマの髪を指で梳きながら問いかける。
「……私が神殿以外で暮らすことはできるのですか?」
そんなことは可能なのか。でも神殿長は神殿から出るなと仰られていた。
それにほとんどの神官は、神殿の寄宿舎で共同生活を送っている。
「神殿から皇子宮は近い。通いでも構わんはずだ。条件としては、見習いからは昇格せねばならんと思うが。ダイジュに協力してもらおう」
もうこんな思いはしたくない。そうできるのであれば、願ってもないことだ。
「……ではより一層俺も頑張らないといけませんね」
そう言ってもう一度口づけをねだると、柔らかく唇を食むような口づけが落ちてくる。
そろそろ門限だ。鐘塔から日付けが変わる合図の鐘が鳴る頃だ。
名残惜しそうに最後は長く唇を吸うと、ゆっくりと離した。
ーーーーーー
次回で完結となります。
2話同時投稿させていただきますので、よろしくお願い致します。
本当ならば見習いのノーマが夜の外出などしてはならないのだが、ダイジュがうまく理由をつけて外に送り出してくれた。
門限は日付けが変わるまで。
文字通りそれ以降は門を閉じてしまうので部屋に戻れなくなる。朝部屋にいないとなると大騒ぎになってしまうので、たとえ話がこじれたとしても、時間がきたら諦めて戻らなくてはならない。
ノーマはローブのフードを深々と被り、神殿の裏の道を月明かりを頼りに歩いた。
用事を言いつけられない限り神殿から外に出ることがないノーマは、神殿の裏にこのような古い礼拝堂があるのを知らなかった。
ダイジュいわく、今の神殿が出来る前に祈りの場として使われていた所だという。
質素な造りで一見物置のようにも見えるが、扉には神のレリーフが掲げられ、ここが祈りの場であることを示していた。
扉を確認すると、ドアノブに錠前でしっかり鍵がかけてある。ノーマはダイジュから渡された鍵をローブのポケットから取り出した。
サビの浮いた古い仕様の鍵を錠前に差し込み、言われた通りに少し力を入れてガシャンと回すと、思いのほか簡単に錠前が外れた。
重みのある錠前を手に持ったまま扉を押すと、ギィーーッと低い音を立てて開き、少しカビ臭いにおいが鼻をかすめた。
窓に薄いカーテンがかかり、少しだけ月の明かりが差し込んではいる。だが人が過ごすには少し暗すぎる。近場だし月の明るい夜だから、足元を照らすランプは不要だと思っていたが、やはり持ってくるんだったと後悔した。
薄暗い中目を凝らして見ると、室内はきれいに片付けられ何もない。神像どころか椅子なども撤去され、ただの板張りの床が広がっているのみ。
誰かに見られることも考えカーテンは開けずに、暗い中床に蹲るように座り込むと、アンバーを待った。
朝から緊張して何も手がつかず、約束の時間より早目に来てしまったのもあり、ここで待つ時間がひどく長く感じる。
サリトールのときはいつもアンバーが待ってくれていた。だが今日は逆で、ノーマが待つ番だ。
緊張しすぎて指の先が冷たくなってきた。待つのってこんなに辛いんだなと、そわそわして落ち着かない心を持て余す。
彼が来たらなんて言おう。ダイジュ監督官からはどう聞いているんだろう。それよりも本当に来てくれるのだろうか?
いろいろなことが悶々と頭に浮かび、泣き出したくなってくる。
いっそのことここから逃げ出そうか。
そう弱気な考えが脳裏をかすめたとき、礼拝堂の扉がギィーーッと音を立てて開いた。
「…………ノーマ? いるのか」
その声に、心臓が大きく跳ねた。
扉の前に立つ人の声はアンバーの声だが、月明かりで逆光になり顔は見えない。ノーマのことも、扉で月光が遮られ、影になってしまっているので見えてはいないだろう。
「ア、アンバー様……私はこちらに」
こちらに気づいていないアンバーのために、ノーマはのそのそと立ち上がり、彼の前に出た。
「ノーマか?」
月明かりに顔を差し出すと、アンバーの顔も見えるようになった。
月明かりの中の彼は、髪を無造作にまとめた皇子らしからぬ簡素な格好で、ひどく懐かしく、まるでここがサリトールだと錯覚してしまいそうになる。
ばたんと音がなり、ビクッと体が反応する。開け放していた扉が閉まり、あたりはまた暗闇に包まれる。
「ノーマ、とりあえず座ろう」
緊張して冷たくなった手を温かい大きな手が掴み、壁まで誘導してくれるが、壁に背を預けて並んで座るとすぐに手が離れていってしまった。
「灯りを」
シュボッという音とカチャカチャとランプの蓋を開閉する音がし、アンバーが持っていたランプに火を灯す。
ぼんやりとした明かりが足元を照らし、なんとかお互いの顔が分かる程度には明るくなった。
「……ノーマ。その、謁見のことはすまなかった。申請がこちらまで来ておらず、そのせいで長く待たせてしまったと聞いた。ダイジュ監督官には感謝をせねばならぬな」
ランプの赤みを帯びた明かりに照らされ、アンバーの顔には影が落ちる。周りが静かなせいか、心なし声も密やかで、ノーマの心も落ち着いてきた。
「……………………」
しばしお互い無言の時間が流れる。
ノーマはゆらゆらと揺れるランプの明かりをじっと見つめているうちに、自然と言葉がこぼれた。
「……アンバー様、俺、アンバー様のことを考えると、なんだか不安定なんだ。この気持ちが何なのかずっとよく分からなくて……」
「…………そうか」
たどたどしく話すノーマに、アンバーが静かに相槌をうつ。
「……たぶんこれが好きっていうことなんだと思う。でも、アンバー様が俺のことをどう思っているのか分からなくて……」
「————ノーマ。こちらに」
どう言って良いか分からず声を詰まらせたノーマに、アンバーは悩むようにしばし間を空け、ノーマの腰を抱き引き寄せると、かいた胡座の上に座らせた。
「……ノーマよ。俺からすれば分からぬのはお前のほうだ」
アンバーが眉間にシワを寄せ、苦しげにノーマの顔を覗き込む。
「いつも俺を袖にしていたのは、ノーマ、お前のほうでなないか」
「袖にする……?」
アンバー様を袖にした?
袖にするとはどういうことだろうか。そんなことをした覚えは一度もない。ノーマには言われたことがどういう意味か分からない。
アンバーの声は先程と同じく密やかだが、言葉尻はまるで叱られているようで、覗き込まれた視線が痛い。
「そうだ。サリトールにいたとき、お前は俺に言い寄られていると自覚はあっただろう?」
確かにサリトールにいた時は、言い寄られているという自覚はあった。たがそれは体目当てだと思っていたからで……。
「……アンバー様は、俺の体目当てで……欲の発散をしたいのだとばかり……」
「好きな相手と体を重ねたいと思うことはいけないことか」
「好きな……」
好きな相手。アンバー様の?
まさか自分が? 一瞬頭の中が真っ白になる。
「お前が俺に気がないことを承知で、ここまで連れてきた。本当は宮の部屋に囲って閉じ込めるつもりだった。それなのにお前は神殿に行くと言い、俺から離れてしまった」
アンバーの顔が近づく。
耳元で「ダイジュとは本当に何もないのか」と掠れた声で囁かれ、その内容とは裏腹にノーマの体にゾクリと甘い痺れが走った。
「ダ、……ダイジュ監督官とは師弟の間柄のようなものです。彼は治癒力の研究をしていて、それで俺の力の訓練に力を貸してくださっているだけで……」
「俺にはつれないお前が、ダイジュのことでは怒り、俺は嫉妬に狂うかと思った。だからお前が唯一俺に甘えた証しである杏の実を、また俺の手から食べたいと思ってほしいと願い贈った」
贈られた杏の実に秘められた想いを知り、自分の考えがなんと浅はかで子供じみていたのかと恥ずかしくなる。
「杏で俺を思い出してはくれたか?」
彼の口が耳に近い。発せられる言葉に交じる吐息が耳をくすぐり、それを振り払うように目をつむり勢い良く首を縦に振った。
ふふっという笑いともため息ともつかぬ息が耳にかかり、アンバーは愛おしげにノーマの体を抱きしめた。
「……俺を好きだと、もう一度言ってくれ」
鼻先が触れるほど近くで、アンバーがノーマに言葉をねだる。
「……俺は、アンバー様が、好き、だ」
至近距離で覗き込まれ、唇がわななき声が震える。
「俺もだ。……愛している。ノーマ」
アンバーが震える唇に深く口づけた。
暗く静かな礼拝堂にかすかな湿った水音が響く。
「うん…あ……ふぅ………………」
アンバーにまるで逃さぬといわんばかりにがっしりとうなじを掴まれ、強引なほど容赦なく口内を嬲られて、ノーマの口からは飲み込めなかった唾液が糸を引いてたらりと落ちる。
尻の下ではゴリゴリと昂ぶるモノがノーマを突き上げるが、服越しなのでお互いひどくもどかしく、ノーマも腰を左右に揺らし刺激を求めた。
「……さすがにここではできんな」
アンバーが熱い吐息を漏らしながら、残念そうに呟く。
床は埃だらけで、水場もなし。汚してしまっても後始末がすぐにはできないので、さすがに今ここで、というのは無理だろう。
それにもうすぐノーマの門限が近づく。
「ノーマとなかなか事に及べぬのはもう運命か」
アンバーは大げさにため息をつく。
サリトールでのことも含め、ノーマがアンバーと最後までしたのは実は数えるほどしかない。
アンバーの立派な逸物が怖くて、なかなかうんと言えなかったのもあるが、ノーマ自身アンバーからの誘いに気づいてなかったということもある。これが袖にしたと言うことであれば、そうかもしれない。
「ノーマ、神殿から出て皇子宮で暮らさないか」
アンバーが愛おしそうにノーマの髪を指で梳きながら問いかける。
「……私が神殿以外で暮らすことはできるのですか?」
そんなことは可能なのか。でも神殿長は神殿から出るなと仰られていた。
それにほとんどの神官は、神殿の寄宿舎で共同生活を送っている。
「神殿から皇子宮は近い。通いでも構わんはずだ。条件としては、見習いからは昇格せねばならんと思うが。ダイジュに協力してもらおう」
もうこんな思いはしたくない。そうできるのであれば、願ってもないことだ。
「……ではより一層俺も頑張らないといけませんね」
そう言ってもう一度口づけをねだると、柔らかく唇を食むような口づけが落ちてくる。
そろそろ門限だ。鐘塔から日付けが変わる合図の鐘が鳴る頃だ。
名残惜しそうに最後は長く唇を吸うと、ゆっくりと離した。
ーーーーーー
次回で完結となります。
2話同時投稿させていただきますので、よろしくお願い致します。
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