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閑話 ポーターの話
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三人が旅に出た話です。人足で雇ったポーター目線です。
※軽く性的な表現があります。
あの三人が俺の村に人足を求めて来たのは、ついこの間のことだ。
俺の村は人足仕事の請負を生業にしているもんだから、わりといろんな国の人が訪れる。だから人種が違っていたりとか、変わった身なりの人が来るとか、そういうのは慣れっこなんだが、今回の三人は毛色が違っていた。
この方たちは、依頼主である主人とその従者として訪ねて来られたんだが、その風体といい、三人が醸し出す雰囲気と言い、よくある家来と主という関係ではないように俺には見えた。
依頼主はアンバー様と仰られる方で、褐色の肌に黒い髪、体は大きく逞しく、若いのに貫禄というか威厳のある方だ。でも穏やかそうで依頼主としては、信頼できそうだというのが俺から見た印象だ。
そして従者が二人。
一人はノーマさんと言う若い男性。
とても涼しげで静かな方で、変わった髪の色をしている。あまり笑ったりとか表情が変わることはなく、俺としてはきれいな方なのにもったいないなと思ってしまう。
だが人足仕事ベテランの俺から見て、この方はただの従者という感じではない。うーん、何というか色気があるというか、なんというか……。もしかしてそっちの系の担当なのかもしれない。
そしてもう一人は、サーシャさんと言って、これまたなんだか不思議な人だ。
飄々としているようで、豪快。アンバー様と同じご出身なのか、褐色の肌に赤い髪。体つきも偉く立派で兵士のようだ。きっと護衛を兼ねてるのだろうと俺は推測する。
行き先は、スーシリアム神皇国。
この大陸一番の大国なのだが、実は俺は初めて行く。
わりと長く人足仕事を請け負ってはいるが、ここからは結構距離もあるので徒歩で行く人などはおらず、今回は非常に珍しい依頼だった。
もう少し行けば寄り合いの馬車が出ているし、荷物が多ければ運送を頼めばいい。それに馬車にも乗れないような貧乏人が、金のかかるあのような大国に行く用事などない。
その点を踏まえても、金があるのに馬車を使わず俺みたいな人足を雇って徒行するアンバー様はやはり変わっておられると思う。
ただ今回は、スーシリアム神皇国には直行する訳ではなく、いろいろ寄り道をしつつのんびり向かうということで、それに予定を合わせられる者をというご希望だった。
仕事は他の街で人足を雇えそうなら、交代で途中まででも良いし、最後までついて来て貰えば帰りの旅賃も出すとの太っ腹な契約内容だったので、独身で暇な俺が一番に手を挙げた。
スーシリアム神皇国には一度行ってみたかったし、観光して帰りの旅費が出るなんて夢みたいな仕事だからな。
かくして、今回の人足仕事は俺がポーターとしてお供することになったのだ。
出発時、やけに軽装だったので何を運べば良いかサーシャさんに聞くと、実は荷物が別のところにあるからそれを拾ってから行くと言う。
聞くとどうやら盗賊に襲われて荷を隠してきたというのだ。
そういえばここ何年かこの山周辺で山賊やら盗賊やらが出るという話を聞いたことがある。それに襲われて廃村になったとかそういう話も聞いた。
だから盗賊に襲われても無事だったと聞いて俺はビックリしたが、逆に言えば護衛要らずで安全だということだ。
アンバー様もあの体格だ。きっと お強いのだろう。
……ノーマさんは、うん、守られる側だな。
そうしてサーシャさんが最初は先導し、荷を探しだして、俺がその荷物を運ぶ。
そこからしばらくは山の中を進むのだが、そこで意外だったのが、ノーマさんだ。
華奢で手足は棒のように細いのに、彼はどうやら俺と同じ山の民だったそうで、山道を難なくぴょんぴょんと歩き回る。
その姿はまるで野うさぎのようで、可愛らしく微笑ましい。
にこにこして眺めているとたまにサーシャさんがこちらをじっと見ている。
目が合うとニヤリと笑うので、なんだか心の奥を見透かされているようで、正直対応に困る。
しかしながらお三方はとても仲が良く、喧嘩もされないし、うまくまとまったパーティだなと感じる。
俺も居心地がいいし、とても良い仕事だ。
いや、仕事というよりこのお三方に付いて旅をさせて貰っているような感覚だ。
普通なら飯など別々なのだが、いつも俺を数に入れてくれている。勿論火の番などもしなくてはならないが、疎外感を感じることもなく、本当に旅の仲間になったようで、道中がすごく楽しい。
だが稀に困ることもある。
それは、やはりノーマさんとアンバー様だ。
急にスイッチ入ったみたいにイチャイチャが発動される。
普段そういう雰囲気を出さないから余計慌てるんだよなあ。
この前なんか暑い日に、汗を流そうとノーマさんが水に入るため上着を脱いだのだが、気がついたらお二人で水に入られて、なんだか見てはいけない雰囲気になり、俺は木陰で身を隠す羽目になった。
まあ恋人同士で旅をされてる人なんかの人足もやるので、こういうことは慣れてはいるが、なんというか、そういうのとは何だか違うというか、
背徳的な雰囲気がするというか……。
まあ詮索してはいけない。
……そういう時、やはりサーシャさんがこちらを見ている。サーシャさんはなんだかこう、目敏い。
いや、俺は盗み見などしていない!断じてしていないぞ!
この方々は野営も慣れたもので、俺はとくになにもせずに済んだ。こういうのも珍しい。大概は慣れてなおらず、俺が代行することが多い。それを踏まえての人足仕事だ。
夜はアンバー様はノーマさんと、そして俺はサーシャさんとで交代で見張りにつく。
サーシャさんは当番の時、いつも火でお湯を沸かし、お茶をいれてくれる。普段はとっつきにくく無愛想だが、こういう時気を利かせてくれるとてもいい方だ。
しかし実は意地悪な方でもある。
一度おやつにと持っていらした携帯食をくれたことがあったのだが、ひどく苦くておえっとなった。一人で苦い苦いとえずいていると、珍しく爆笑されていた。
たぶん反応が見たくてくれたんだと思う。まあそういう方なんだな。
△△△
山を無事抜け、俺達はある街に向かっていた。
そこにはアンバー様がご用事があるとのことで、しばらく滞在することになり、久々に宿に泊まり自由時間を過ごせることに俺は浮足立っていた。
それまで野営で歩き通しだったので、宿に泊まれるのは本当にありがたい。それにアンバー様がとってくれる部屋はわりといい部屋なんだよな。
初めて行く街だし、旨いものがあるといいな。それに久々に娼館にでも行って、欲求不満も解消したい!
一人テンション高くウッキウキしていたのだが、実はこの後、大変な災難が俺を待ち受けていた。
久々の街に向け、俺の足取りは疲れて重いが心は軽やかに、木々に埋もれた道をひたすら歩いていた。
もうすぐしたら整備された街道に出る。そしたらこんな足場の悪い林道ともおさらばだ。そう思っていた時、急に木の上から俺の上にドサッと何かが落ちてきた。
「?!
なんだ?」
俺は慌てて項あたりに落ちてきたものを追い払おうとした。荷物を前後に抱えていたため、うまく動けない。重さから結構大きいぞと思い、これはまずいと持っていた水筒で叩いて払おうとしたら、サーシャさんに止められた。
「今叩くと噛み付くぞ。じっとしておけ!」
俺の体がびくりと硬直し、振り上げた腕を止める。
一体何がひっついているのかと思い、肩をちらと見ると凶悪そうなどでかい虫がすぐ首元にいるのが目に入った。
「ひっ」
反射的に体を捻ってしまった。その瞬間首に何か強い力で挟まれたような痛みが走った。
「ほら! 言わぬことではないか!」
サーシャさんがすごい勢いでその虫を掴み放り投げてくれたが、もう遅い。
首の違和感に手を当て、俺は蹲った。
今のは何の虫だ? 俺としたことが、上から落ちてきて動揺してしまった。
村でならいつもうまく対処していたのに。かなりまずい。首が焼けるように痛い。
「ノーマ殿!毒虫だ!毒虫にやられた」
サーシャさんが何かの液体を俺の首にぶっかけた。首にかけた液体が服を濡らす。臭いからして、殺菌成分のある薬草の汁か……?
すぐにノーマさんらしき人が来たっぽいが、きっと俺はもうダメだ。首が熱を持ったように熱いのに、体はすごく冷えてきたし、手足が震える。
息苦しくなるほど心臓がどくどくと激しく脈打ち、あっという間に俺は意識を手放した。
————気が付くと俺は宿らしきところいた。
ぼんやりとした意識だが、ここが室内だというくらいは分かった。ということは宿だろうなという感覚だ。
しかし何だかやけに下半身が気持ちがいい。
俺ってばなんかエロい夢でも見ていたのか? 夢精でもするのか無意識に腰が動いてた。
ん?夢精?
ハッと目を覚ますとサーシャさんのムスっとしてはいるが端正な顔がすぐ上にあった。俺を抱えているというのはすぐに分かったが、————なぜか彼は俺の陰茎に手を添え、上下に扱いている。
「んなっ!?」
「お、気がつきましたな。ノーマ殿が治癒の加減を間違えましてな。気づかれぬうちに抜いておこうかと思ったのですが、ちと予定が狂いましたな」
何を言ってんだこの人は!?
俺が混乱している間に、サーシャさんの手が激しくなり、状況を理解する間もなく、なすがまま俺は精を吐き出してしまった。
意味がわからん。
しかも急激に眠気が襲ってきた。体が脱力したからか?起きたら説明してもらうぞ !?
強い眠気には逆らえず、俺の意識は落ちた。
△△△
次に目が覚めた時には、普通に俺は寝台で寝ていた。
首には包帯が巻かれ、衣服に乱れはないことに、俺は安心しほっと息をついた。
夢だったのかな。
なんであんな夢を見たんだ?
しばらくぼーっとしていると、ノーマさんが入ってきて首の様子を診ていたが、サーシャさんが夢で言っていたような治癒云々の話はしてこなかった。
サーシャさんもあんなことがあった割に平然としているし、やっぱり夢だったのかもしれない。
まあそうだよなぁ。
俺ずっと溜まってたから変な夢をみたんだろうな。きっと。今日街についたら娼館に行こうと思ってたくらいだし。
……タマが軽いのもきっと気のせいだ。気のせい。
アンバー様が傷が良くなったら、遊びにでも使えと小遣いをくれた。待遇が良すぎて怖いが、ありがたく頂戴することにした。
変な人たちの仕事を引き受けちまったなぁと、俺は頂いた金を見つめながら、改めてそう思った。
※軽く性的な表現があります。
あの三人が俺の村に人足を求めて来たのは、ついこの間のことだ。
俺の村は人足仕事の請負を生業にしているもんだから、わりといろんな国の人が訪れる。だから人種が違っていたりとか、変わった身なりの人が来るとか、そういうのは慣れっこなんだが、今回の三人は毛色が違っていた。
この方たちは、依頼主である主人とその従者として訪ねて来られたんだが、その風体といい、三人が醸し出す雰囲気と言い、よくある家来と主という関係ではないように俺には見えた。
依頼主はアンバー様と仰られる方で、褐色の肌に黒い髪、体は大きく逞しく、若いのに貫禄というか威厳のある方だ。でも穏やかそうで依頼主としては、信頼できそうだというのが俺から見た印象だ。
そして従者が二人。
一人はノーマさんと言う若い男性。
とても涼しげで静かな方で、変わった髪の色をしている。あまり笑ったりとか表情が変わることはなく、俺としてはきれいな方なのにもったいないなと思ってしまう。
だが人足仕事ベテランの俺から見て、この方はただの従者という感じではない。うーん、何というか色気があるというか、なんというか……。もしかしてそっちの系の担当なのかもしれない。
そしてもう一人は、サーシャさんと言って、これまたなんだか不思議な人だ。
飄々としているようで、豪快。アンバー様と同じご出身なのか、褐色の肌に赤い髪。体つきも偉く立派で兵士のようだ。きっと護衛を兼ねてるのだろうと俺は推測する。
行き先は、スーシリアム神皇国。
この大陸一番の大国なのだが、実は俺は初めて行く。
わりと長く人足仕事を請け負ってはいるが、ここからは結構距離もあるので徒歩で行く人などはおらず、今回は非常に珍しい依頼だった。
もう少し行けば寄り合いの馬車が出ているし、荷物が多ければ運送を頼めばいい。それに馬車にも乗れないような貧乏人が、金のかかるあのような大国に行く用事などない。
その点を踏まえても、金があるのに馬車を使わず俺みたいな人足を雇って徒行するアンバー様はやはり変わっておられると思う。
ただ今回は、スーシリアム神皇国には直行する訳ではなく、いろいろ寄り道をしつつのんびり向かうということで、それに予定を合わせられる者をというご希望だった。
仕事は他の街で人足を雇えそうなら、交代で途中まででも良いし、最後までついて来て貰えば帰りの旅賃も出すとの太っ腹な契約内容だったので、独身で暇な俺が一番に手を挙げた。
スーシリアム神皇国には一度行ってみたかったし、観光して帰りの旅費が出るなんて夢みたいな仕事だからな。
かくして、今回の人足仕事は俺がポーターとしてお供することになったのだ。
出発時、やけに軽装だったので何を運べば良いかサーシャさんに聞くと、実は荷物が別のところにあるからそれを拾ってから行くと言う。
聞くとどうやら盗賊に襲われて荷を隠してきたというのだ。
そういえばここ何年かこの山周辺で山賊やら盗賊やらが出るという話を聞いたことがある。それに襲われて廃村になったとかそういう話も聞いた。
だから盗賊に襲われても無事だったと聞いて俺はビックリしたが、逆に言えば護衛要らずで安全だということだ。
アンバー様もあの体格だ。きっと お強いのだろう。
……ノーマさんは、うん、守られる側だな。
そうしてサーシャさんが最初は先導し、荷を探しだして、俺がその荷物を運ぶ。
そこからしばらくは山の中を進むのだが、そこで意外だったのが、ノーマさんだ。
華奢で手足は棒のように細いのに、彼はどうやら俺と同じ山の民だったそうで、山道を難なくぴょんぴょんと歩き回る。
その姿はまるで野うさぎのようで、可愛らしく微笑ましい。
にこにこして眺めているとたまにサーシャさんがこちらをじっと見ている。
目が合うとニヤリと笑うので、なんだか心の奥を見透かされているようで、正直対応に困る。
しかしながらお三方はとても仲が良く、喧嘩もされないし、うまくまとまったパーティだなと感じる。
俺も居心地がいいし、とても良い仕事だ。
いや、仕事というよりこのお三方に付いて旅をさせて貰っているような感覚だ。
普通なら飯など別々なのだが、いつも俺を数に入れてくれている。勿論火の番などもしなくてはならないが、疎外感を感じることもなく、本当に旅の仲間になったようで、道中がすごく楽しい。
だが稀に困ることもある。
それは、やはりノーマさんとアンバー様だ。
急にスイッチ入ったみたいにイチャイチャが発動される。
普段そういう雰囲気を出さないから余計慌てるんだよなあ。
この前なんか暑い日に、汗を流そうとノーマさんが水に入るため上着を脱いだのだが、気がついたらお二人で水に入られて、なんだか見てはいけない雰囲気になり、俺は木陰で身を隠す羽目になった。
まあ恋人同士で旅をされてる人なんかの人足もやるので、こういうことは慣れてはいるが、なんというか、そういうのとは何だか違うというか、
背徳的な雰囲気がするというか……。
まあ詮索してはいけない。
……そういう時、やはりサーシャさんがこちらを見ている。サーシャさんはなんだかこう、目敏い。
いや、俺は盗み見などしていない!断じてしていないぞ!
この方々は野営も慣れたもので、俺はとくになにもせずに済んだ。こういうのも珍しい。大概は慣れてなおらず、俺が代行することが多い。それを踏まえての人足仕事だ。
夜はアンバー様はノーマさんと、そして俺はサーシャさんとで交代で見張りにつく。
サーシャさんは当番の時、いつも火でお湯を沸かし、お茶をいれてくれる。普段はとっつきにくく無愛想だが、こういう時気を利かせてくれるとてもいい方だ。
しかし実は意地悪な方でもある。
一度おやつにと持っていらした携帯食をくれたことがあったのだが、ひどく苦くておえっとなった。一人で苦い苦いとえずいていると、珍しく爆笑されていた。
たぶん反応が見たくてくれたんだと思う。まあそういう方なんだな。
△△△
山を無事抜け、俺達はある街に向かっていた。
そこにはアンバー様がご用事があるとのことで、しばらく滞在することになり、久々に宿に泊まり自由時間を過ごせることに俺は浮足立っていた。
それまで野営で歩き通しだったので、宿に泊まれるのは本当にありがたい。それにアンバー様がとってくれる部屋はわりといい部屋なんだよな。
初めて行く街だし、旨いものがあるといいな。それに久々に娼館にでも行って、欲求不満も解消したい!
一人テンション高くウッキウキしていたのだが、実はこの後、大変な災難が俺を待ち受けていた。
久々の街に向け、俺の足取りは疲れて重いが心は軽やかに、木々に埋もれた道をひたすら歩いていた。
もうすぐしたら整備された街道に出る。そしたらこんな足場の悪い林道ともおさらばだ。そう思っていた時、急に木の上から俺の上にドサッと何かが落ちてきた。
「?!
なんだ?」
俺は慌てて項あたりに落ちてきたものを追い払おうとした。荷物を前後に抱えていたため、うまく動けない。重さから結構大きいぞと思い、これはまずいと持っていた水筒で叩いて払おうとしたら、サーシャさんに止められた。
「今叩くと噛み付くぞ。じっとしておけ!」
俺の体がびくりと硬直し、振り上げた腕を止める。
一体何がひっついているのかと思い、肩をちらと見ると凶悪そうなどでかい虫がすぐ首元にいるのが目に入った。
「ひっ」
反射的に体を捻ってしまった。その瞬間首に何か強い力で挟まれたような痛みが走った。
「ほら! 言わぬことではないか!」
サーシャさんがすごい勢いでその虫を掴み放り投げてくれたが、もう遅い。
首の違和感に手を当て、俺は蹲った。
今のは何の虫だ? 俺としたことが、上から落ちてきて動揺してしまった。
村でならいつもうまく対処していたのに。かなりまずい。首が焼けるように痛い。
「ノーマ殿!毒虫だ!毒虫にやられた」
サーシャさんが何かの液体を俺の首にぶっかけた。首にかけた液体が服を濡らす。臭いからして、殺菌成分のある薬草の汁か……?
すぐにノーマさんらしき人が来たっぽいが、きっと俺はもうダメだ。首が熱を持ったように熱いのに、体はすごく冷えてきたし、手足が震える。
息苦しくなるほど心臓がどくどくと激しく脈打ち、あっという間に俺は意識を手放した。
————気が付くと俺は宿らしきところいた。
ぼんやりとした意識だが、ここが室内だというくらいは分かった。ということは宿だろうなという感覚だ。
しかし何だかやけに下半身が気持ちがいい。
俺ってばなんかエロい夢でも見ていたのか? 夢精でもするのか無意識に腰が動いてた。
ん?夢精?
ハッと目を覚ますとサーシャさんのムスっとしてはいるが端正な顔がすぐ上にあった。俺を抱えているというのはすぐに分かったが、————なぜか彼は俺の陰茎に手を添え、上下に扱いている。
「んなっ!?」
「お、気がつきましたな。ノーマ殿が治癒の加減を間違えましてな。気づかれぬうちに抜いておこうかと思ったのですが、ちと予定が狂いましたな」
何を言ってんだこの人は!?
俺が混乱している間に、サーシャさんの手が激しくなり、状況を理解する間もなく、なすがまま俺は精を吐き出してしまった。
意味がわからん。
しかも急激に眠気が襲ってきた。体が脱力したからか?起きたら説明してもらうぞ !?
強い眠気には逆らえず、俺の意識は落ちた。
△△△
次に目が覚めた時には、普通に俺は寝台で寝ていた。
首には包帯が巻かれ、衣服に乱れはないことに、俺は安心しほっと息をついた。
夢だったのかな。
なんであんな夢を見たんだ?
しばらくぼーっとしていると、ノーマさんが入ってきて首の様子を診ていたが、サーシャさんが夢で言っていたような治癒云々の話はしてこなかった。
サーシャさんもあんなことがあった割に平然としているし、やっぱり夢だったのかもしれない。
まあそうだよなぁ。
俺ずっと溜まってたから変な夢をみたんだろうな。きっと。今日街についたら娼館に行こうと思ってたくらいだし。
……タマが軽いのもきっと気のせいだ。気のせい。
アンバー様が傷が良くなったら、遊びにでも使えと小遣いをくれた。待遇が良すぎて怖いが、ありがたく頂戴することにした。
変な人たちの仕事を引き受けちまったなぁと、俺は頂いた金を見つめながら、改めてそう思った。
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※現在、コウとセイドリックの話『失恋した神兵はノンケに恋をする』を新作として公開しています。閑話コウの受難の続きでセイドリック視点で始まります。コウの受難の続きが気になっていた方がいればぜひ。
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