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6 部屋への移動方法のヒント

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「サントス、階段使わずに2階に行くにはどうしたらいいと思う?」


 いきなりそんなことを聞かれて、サントスは眉を寄せ、「はぁ?」と聞き返した。


「なんだそれは。なぞなぞか?」
「いやー魔導士の家なんだけどさ、2階はあるのに階段がないんだよ」
「魔導士の家? なんだそれは」
「なにかいい方法ないかな」
「階段を使わずにねぇ」


 魔導士の家に再び訪れた日の夜、食堂で夕食を食べながら、階段を使わずに2階に上がる方法についてサントスに聞いてみた。

 サントスはサラダを皿の端へ追いやりながら、ブライズからの妙な質問に眉根を寄せた。

 しかしサントスも変な顔で悩むだけで、その口は皿の中央にあるスパイスの効いた肉の塊を口に運ぶほうに集中している。

 そんな彼に呆れつつも騎士団に魔術に明るいやつなんていないからなぁと諦めていると、急にサントスが思い出したように言った。


「そういや魔術師独特の移動法といえば、転移魔法があるが」
「転移魔法!」


 ああああそれがあったか!


 なるほど、転移魔法があれば仕掛けなど不要じゃないか! しかも迷宮を解除するまでもなくバドのいる部屋まで行くことができる。


「で? 転移魔法ってどうやって使うんだ? サントスはしっているのか」


 ブライズは食いついたが、逆にサントスがそれに若干引き気味で答える。


「……知るわけないだろう。俺は魔術師じゃないぞ」


 そりゃそうだ。


「まあ術式が分かって、魔力が使えりゃなんとかなるんじゃないか」
「じゅつしき」


 そういえばあの家には大量の術式を書いた紙があった。もしかしてあの中に転移魔法の術式があったのかもしれない。

 とりあえず自分でそれが使えるかどうかはおいといて、まずは確認したい!


 あああああああ!!!


 い、今すぐ行きたい! でももう夜は遅い。今からの外出は無理だ。


 ブライズはがっくりと頭を垂れた。


 仕方がない。来週の休みにもう一度チャレンジしよう。はやる気持ちを抑え、心の中でそう誓った。





 その日の寝る前、前にサントスが教えてくれた塔の窓が見える場所へ行ってみた。

 本当にそこからなら、窓にほんのりと明かりがついていることが分かる。

 たまに明かりが途切れるときがあるので、そういうときはバドが窓の近くを歩いているんだろうなと思いながら、遠くに見える窓を夜風に吹かれながらのんびりと眺める。


 こちらから合図を送りたいけど、あっちからじゃ見えないだろうなあ。

 バドは今日何をしていたんだろう。

 ……次の休みには塔の窓をのぞきに行ってみるか。バドに忘れられても嫌だし。



 明日も早い、そろそろ寝ないと。


 ブライズは名残惜しかったが、自室に戻って寝ることにした。





 その夜、ブライズは夢をみていた。


 ブライズは眠りについたときと同じ、仰向けで寝転がっている。しかしどうにも体が疼き、無意識にゆるゆると腰を上下させていることに気がついた。

 何が起こっているのかは、まるで意識が霧に包まれているようではっきりしないが、何か温かく滑ったものがまとわりつき、あそこを扱いているような、そんな抗うことなどできない気持ち良さ。

 それはときおりうねうねと動き、じゅっと吸い上げられる。自分の手だけでは味わえない快感に翻弄されていく。

 自分自身これが夢なのか現実なのかは分からないくらい、ブライズはただただその快楽に集中し腰を上下させる。


 なんなんだこれは。
 夢なのにこんなにあそこが気持ち良いのははじめてだ。
 頭の中はもう射精することしか頭にない。
 ああ、もう、これは、たえられない!
 早く、はやくこのまま出したい!



 ブライズは吐精する感覚で目が覚めた。

 窓の外は薄暗く、夜明け近くであることが分かった。

 しかし眠っていたはずなのに、なぜかひどく疲れている。


「……う、ぅお」


 なんだかズボンが冷たくて手をやると、下着どころかズボンまでが自分の吐き出したものでぐちょぐちょに濡れていた。下着をめくると、ねっとりとした白濁が糸を引き、それが尿を漏らしたわけではないことを物語る。


「……マジかー。ガキでもないのにこの量の夢精って恥ずかしくないか」


 夢の内容はほとんど覚えていない。

 ただひたすら気持ちが良かったことだけだ。


「夢精…………夢魔?」


 夢魔が来ると男は夢精するという。
 まさか、バドが来ていたのか!?

 ブライズはガバッと起き上がりあたりを見回したが、そうだ夢の中にしか来られないんだったと思い返して、バタンとベッドに倒れた。

 夢の中で自分を吐精させた犯人がバドかどうかは分からない。

 ああでもバドだといいなぁとブライズは思った。脱力しひどく疲れてはいるが、これは心地よいほうの疲れだ。


「ああ~! バドだったなら顔が見たかった!!」


 迷宮の謎の解明にはまだしばらくかかりそうだし、またバドが夢に来てくれないかなとブライズは祈った。

 そしてこのびしょびしょに汚れた下着を誰にも気づかれないうちに洗いに行かねばと、ちょっとニヤつきながらゆっくり起き上がった。
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