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7 しょうじょとしょくしゅ
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遮るものがなく、太陽が直接照りつける中、
少女は、頭を悩ませていた。
「さてやるとは言ってみたものの、何から手をつけたらいいか全くわかんないね!」
「勢いよく言うことじゃないですよ...。」
詳しく言うと
一人の少女は、手の付け所に悩んでいたが。
もう一人の少女は、この人の対応にも困っていた。
「とりあえず、材料ですか...、材料がどれだけあるか確認しましょう」
「そいそい」
この人と言われた少女はそれを知るまでもなく、遠くから素直に一本ずつ数えている。
竹 1メートル×25本
木(濡れている)×15本
木(乾いている)×3本
「乾いた木が少ないようですが...」
「常に火を燃やしてるからね。火の勢いが強くないとはいえ、フル稼働だよ。」
キラは納得した顔で、屋根の上で干している濡れた木を見つめた。
視線を戻すと、少女が火について説明している。
「火は一度絶やすと、残り少ないライターを使うか、火起こしに成功するまでの数日、刺身とサラダだけになるよ。」
それは嫌だ、と露骨にいやがる顔をして。
キラは思ったことを正直に言ってみる。
「ライターあったんですか。どうやって火起こしてるのか謎でしたよ。」
それは驚き、からの質問だった。
本ぐらいしか、文化的な暮らしがみえないこの空間に、ライターという言葉が出てくるのは意外だった。
ちなみに、キラは漫画の世界でしか、見たことがなかった。
「普段は使わないけどね。非常事態とかは使うよ。」
「普段はこうやって、時間かけて火をつけてるよ。」
少女は、小さい手でライターの着火部分を取り出す。
そのままキラに見せるように、額の上でカチッ、とならした。
「サバイバル能力、高いですね。」
そんな話をしているうちに、ひとつの大木がながれてきた。
それを早速見つけた、さばいばる少女は指を指しながらいった。
「ほら、流れてきた。...でもあれは遠いからわざわざ取りにいかないかな。」
キラは首をかしげていた。
「あれ?取らないんですか?」
大木までの距離はそこそこあったが行けない距離ではなかった。
「ん?何が?」
少女も首をかしげた。
「いや、あの、...うねうねあるじゃないですか。あれでとれないのかな、と。」
キラが思い出すのは、手に持っていたナイフを、一瞬で、弾いたあの触手だ。
できればあまり思い出したくない話だった。
「あぁ、あれ海水に弱いんだよね」
思い出したかのように少女が呟く。
「たこなのに、ですか...?」
「たこなのに、だよ...!」
昨日読んだ書物の中の、海賊なのに泳げなくなったあの人たちと、同じなんだろうな。と、キラは勝手に頭の中で納得した。
「コレ、いまいち私も知らないからなんともいえん。」
「そうなんですか。」
「教えられることだけでも教えてください。今後仕事で分担するとき、分けやすくなるので。」
キラは少女をこき使う気満々だった。
「なるほど
「コホン...!」
「えーと、まず、あの触手、自由に操れます。」
「はいはい」
少女は触手の代わりに。指をワシャワシャと動かした。
少女は説明を続ける。
「海水を吸うとぐったりするのと、あと力が強いです。握力もあって、乾いた大木ぐらいなら、軽々かな。それと...」
「すみません、ちょっといいですか?...その。言いづらいんですけど...。」
「?」
キラは自分の口で聞いておきたいことがあった。
「...あの触手、ちょっと、ぬめっというか、べとっというか、とろっというか、」
あまり誉めてるとはいえない言葉が並ぶ。
「粘液で濡れてましたよね。」
たしかに、あの触手、濡れていた。
なんなら、ナイフをはじいた後、糸を引いてたかもしれない。
「...あれは、飲むとえっちぃな気分になる、特別な...
笑顔で苛立ちを表現する人を初めて見た。
「ごめん冗談です。」
「...よろしい。」
鋭い視線を感じた少女には、危機回避能力がついていた。
少女はちゃんと謝れる、偉い子だった。
「ちょっとピリッと痺れるけど、人体にそれほどの影響はないよ」
「なるほど...。」
キラは少女の言った言葉を何度も繰り返していた。
ただ その額にはあせが浮かんでいた。
「...苦手?」
一瞬、なんのことかわからなくて、止まった後ハッとして答えた。
「...ほんの少し...。」
触手のことらしかった。
震えながら上目遣いで少女をみるその姿は、見た目と、髪型と、胸以外は、どこにでもいる少女だった。
いや、追記するならば、どこにでもいない美少女だったかもしれない。
「非常時は使うからね。」
そんな震えるキラにかけた少女の言葉には、彼女なりの気遣いが感じられた。
「普通は」使わないということだった。
「そんときは、好き嫌い言わず食べてね。」
「!?」
...キラの予想を遥かに越えていた。
笑顔で、自分から生えてるモノを、食え、という少女など一歩間違えなくてもアウトだった。
「ん?言ってなかったっけ。これ切っても再生するんよ。」
そういうことではない、とキラは全力で思ったことだろう。
「非常時...だからといって、食べますか?普通。」
「だから非常時のみの食事なのだよ。」
「...、味は。」
「たこ!」
「...。」
自分より、いくつも年齢が高い問題児を持ったせいで頭が痛くなりそうだった。
「とりあえず、」
「おねえさんは、釣りに行っててください」
「もしかして私、お邪魔虫?」
潤った状態で、わざとらしくこちらを見るその目に、少しイラつきを覚えながら。
「面倒な人ですね...!この仕事は、私一人でできるので。」
「今夜の晩御飯が、同居人のからだの一部、だなんて私は嫌ですよ!」
ギリギリの生活を続けている今、明日が「非常時」になる可能性というのもあり得ない話ではなかった。
実際、釣りというものは、キラという人間に向いてないことが、昨日、証明されていた。
効率的にも少女が釣り担当であった。
「わかったよ」
スッキリした顔で、釣りの準備を始めた少女をみると、キラも自分の準備を始めた。
少女は、頭を悩ませていた。
「さてやるとは言ってみたものの、何から手をつけたらいいか全くわかんないね!」
「勢いよく言うことじゃないですよ...。」
詳しく言うと
一人の少女は、手の付け所に悩んでいたが。
もう一人の少女は、この人の対応にも困っていた。
「とりあえず、材料ですか...、材料がどれだけあるか確認しましょう」
「そいそい」
この人と言われた少女はそれを知るまでもなく、遠くから素直に一本ずつ数えている。
竹 1メートル×25本
木(濡れている)×15本
木(乾いている)×3本
「乾いた木が少ないようですが...」
「常に火を燃やしてるからね。火の勢いが強くないとはいえ、フル稼働だよ。」
キラは納得した顔で、屋根の上で干している濡れた木を見つめた。
視線を戻すと、少女が火について説明している。
「火は一度絶やすと、残り少ないライターを使うか、火起こしに成功するまでの数日、刺身とサラダだけになるよ。」
それは嫌だ、と露骨にいやがる顔をして。
キラは思ったことを正直に言ってみる。
「ライターあったんですか。どうやって火起こしてるのか謎でしたよ。」
それは驚き、からの質問だった。
本ぐらいしか、文化的な暮らしがみえないこの空間に、ライターという言葉が出てくるのは意外だった。
ちなみに、キラは漫画の世界でしか、見たことがなかった。
「普段は使わないけどね。非常事態とかは使うよ。」
「普段はこうやって、時間かけて火をつけてるよ。」
少女は、小さい手でライターの着火部分を取り出す。
そのままキラに見せるように、額の上でカチッ、とならした。
「サバイバル能力、高いですね。」
そんな話をしているうちに、ひとつの大木がながれてきた。
それを早速見つけた、さばいばる少女は指を指しながらいった。
「ほら、流れてきた。...でもあれは遠いからわざわざ取りにいかないかな。」
キラは首をかしげていた。
「あれ?取らないんですか?」
大木までの距離はそこそこあったが行けない距離ではなかった。
「ん?何が?」
少女も首をかしげた。
「いや、あの、...うねうねあるじゃないですか。あれでとれないのかな、と。」
キラが思い出すのは、手に持っていたナイフを、一瞬で、弾いたあの触手だ。
できればあまり思い出したくない話だった。
「あぁ、あれ海水に弱いんだよね」
思い出したかのように少女が呟く。
「たこなのに、ですか...?」
「たこなのに、だよ...!」
昨日読んだ書物の中の、海賊なのに泳げなくなったあの人たちと、同じなんだろうな。と、キラは勝手に頭の中で納得した。
「コレ、いまいち私も知らないからなんともいえん。」
「そうなんですか。」
「教えられることだけでも教えてください。今後仕事で分担するとき、分けやすくなるので。」
キラは少女をこき使う気満々だった。
「なるほど
「コホン...!」
「えーと、まず、あの触手、自由に操れます。」
「はいはい」
少女は触手の代わりに。指をワシャワシャと動かした。
少女は説明を続ける。
「海水を吸うとぐったりするのと、あと力が強いです。握力もあって、乾いた大木ぐらいなら、軽々かな。それと...」
「すみません、ちょっといいですか?...その。言いづらいんですけど...。」
「?」
キラは自分の口で聞いておきたいことがあった。
「...あの触手、ちょっと、ぬめっというか、べとっというか、とろっというか、」
あまり誉めてるとはいえない言葉が並ぶ。
「粘液で濡れてましたよね。」
たしかに、あの触手、濡れていた。
なんなら、ナイフをはじいた後、糸を引いてたかもしれない。
「...あれは、飲むとえっちぃな気分になる、特別な...
笑顔で苛立ちを表現する人を初めて見た。
「ごめん冗談です。」
「...よろしい。」
鋭い視線を感じた少女には、危機回避能力がついていた。
少女はちゃんと謝れる、偉い子だった。
「ちょっとピリッと痺れるけど、人体にそれほどの影響はないよ」
「なるほど...。」
キラは少女の言った言葉を何度も繰り返していた。
ただ その額にはあせが浮かんでいた。
「...苦手?」
一瞬、なんのことかわからなくて、止まった後ハッとして答えた。
「...ほんの少し...。」
触手のことらしかった。
震えながら上目遣いで少女をみるその姿は、見た目と、髪型と、胸以外は、どこにでもいる少女だった。
いや、追記するならば、どこにでもいない美少女だったかもしれない。
「非常時は使うからね。」
そんな震えるキラにかけた少女の言葉には、彼女なりの気遣いが感じられた。
「普通は」使わないということだった。
「そんときは、好き嫌い言わず食べてね。」
「!?」
...キラの予想を遥かに越えていた。
笑顔で、自分から生えてるモノを、食え、という少女など一歩間違えなくてもアウトだった。
「ん?言ってなかったっけ。これ切っても再生するんよ。」
そういうことではない、とキラは全力で思ったことだろう。
「非常時...だからといって、食べますか?普通。」
「だから非常時のみの食事なのだよ。」
「...、味は。」
「たこ!」
「...。」
自分より、いくつも年齢が高い問題児を持ったせいで頭が痛くなりそうだった。
「とりあえず、」
「おねえさんは、釣りに行っててください」
「もしかして私、お邪魔虫?」
潤った状態で、わざとらしくこちらを見るその目に、少しイラつきを覚えながら。
「面倒な人ですね...!この仕事は、私一人でできるので。」
「今夜の晩御飯が、同居人のからだの一部、だなんて私は嫌ですよ!」
ギリギリの生活を続けている今、明日が「非常時」になる可能性というのもあり得ない話ではなかった。
実際、釣りというものは、キラという人間に向いてないことが、昨日、証明されていた。
効率的にも少女が釣り担当であった。
「わかったよ」
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